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📡 Signal|KelpDAO、検証者 1 つの構成を勧めたとして LayerZero を提訴
KelpDAO 運営の Evercrest Technologies が LayerZero と共同創業者をカナダの裁判所に提訴。4 月の 2 億 9,200 万ドル流出をめぐり、1-of-1 の検証者設定を勧められたと主張している。
流動性ステーキングの KelpDAO を運営する Evercrest Technologies が、クロスチェーン通信基盤の LayerZero Labs と共同創業者の Bryan Pellegrino 氏を、カナダ・ブリティッシュコロンビア州最高裁に提訴した。9 月 25 日に報じられたこの民事訴状の中心は、4 月に 2 億 9,200 万ドル相当の rsETH (KelpDAO が発行するリステーキングのトークン) が流出したブリッジの設定を、LayerZero 側が確認したうえで勧めていた、という主張にある。
コードに欠陥はなかった。監査で見つかるような脆弱性はなく、契約はすべて設計どおりに動いた。問題は、その設計を成り立たせている検証者の設定をどう選ぶかであり、その選択について誰がどこまで責任を負うかだ。DeFi の事故の責任が、コードの外側にある助言と推奨へ向かった事例になる。
出発していない船の到着通知
流出は 4 月 18 日 17 時 35 分 (UTC) 前後に起きた。攻撃者は、KelpDAO が Unichain (Uniswap が手がけるレイヤー 2) 側に置いた契約から送られたと称する LayerZero のメッセージを組み立て、イーサリアム側の OFTAdapter に対して 116,500 rsETH を指定アドレスへ解放するよう指示した。
このメッセージに対応する送金取引は、Unichain 上に存在しない。丸ごとチェーンの外で作られたものだった。LayerZero のオンチェーン契約は送信元チェーンの状態を自力で確認できず、検証者の署名を根拠に受け入れる。そしてこのブリッジの検証者設定は、必須の検証ネットワーク (DVN) が 1 つ、任意の検証ネットワークがゼロだった。1 つ落ちれば、任意のメッセージが通る。
OFTAdapter は設計どおりに動き、エスクローから 116,500 rsETH を解放した。46 分後、KelpDAO の緊急マルチシグが停止をかけ、二通目の偽メッセージはそこで止まっている。LayerZero の公表した説明によれば、検証者がチェーンの状態を問い合わせていた 2 つの RPC ノード (ブロックチェーンへの接続口となるサーバー) のソフトウェアが悪意あるものに差し替えられ、差し替えられなかったノードは DDoS で落とされて、通信が汚染された経路へ寄せられた。
2024 年 2 月と 3 月のやりとり
訴状の主張はここから始まる。Evercrest は、2024 年 2 月 2 日の書面でのやりとりで、LayerZero が既定の DVN 設定に「問題はない」と伝えたとする。さらに同年 3 月 21 日には、別のブリッジと同じ 1-of-1 の設定を使うよう LayerZero から指示されたとしている。
加えて Evercrest は、LayerZero が自社の検証基盤について冗長性と監視があるかのように説明していたこと、そして同じ基盤を使う USDT0 には設定上のリスクを警告しながら、KelpDAO には警告しなかったことを主張している。訴因は不実表示による過失、過失、そして名誉毀損の 3 つだ。
名誉毀損が入っているのは、流出後の数か月に起きたことによる。Evercrest は「責任を取るのではなく、この数か月、LayerZero と Pellegrino 氏は自分たちの失敗について我々を公に非難してきた」と述べている。請求には、補償的損害賠償に加えて加重的・懲罰的損害賠償が含まれ、流出後に生じた 6 億 5,000 万ドル超の利用者による引き出しにも触れている。
Pellegrino 氏は「この請求は引き続き根拠がない」と応じ、バンクーバーで争うと述べた。LayerZero 側は、問題の設定が自社の推奨する複数 DVN 構成と「真っ向から矛盾する」との立場をとっている。いずれの主張も法廷での検証を経ていない。
設定が契約より先に効く
ブリッジの安全性は、どのコードを使うかより、そのコードをどう設定するかで決まる局面が増えている。今回のケースでは、必須 DVN を 1 から 2 以上へ増やすという一行分の設定差が、2 億 9,200 万ドルの差になった。同じ契約、同じ監査結果、違う設定。
そしてその設定を選ぶとき、多くのプロトコルは基盤側の既定値と担当者の助言に従う。既定値は技術的な推奨であると同時に、事実上の標準として振る舞う。今回の訴訟が問うているのは、その助言に法的な重みがあるのか、それとも利用者の自己責任として片づくのか、という点だ。答えがどちらであれ、クロスチェーン基盤を採用する側の意思決定は変わる。
次の材料は、LayerZero 側がブリティッシュコロンビア州最高裁に提出する答弁書 (response to civil claim) で出る。Pellegrino 氏がバンクーバーで争うと明言した以上、答弁は出てくる。そこで同社が、2024 年 2 月と 3 月のやりとりの存在自体を争うのか、やりとりは認めたうえで助言の性格を争うのかが分かれる。前者なら事実認定の勝負になり、後者なら「基盤提供者の推奨はどこまで責任を伴うか」という、この業界がまだ答えを持たない問いが正面から審理されることになる。
ことば
- DVN (分散検証ネットワーク) — LayerZero で、送信元チェーンで起きたことを確認して署名する検証者の集まり。何組の署名を必須とするかはブリッジごとに設定でき、1 組だけに設定すると、その 1 組の乗っ取りで任意のメッセージが通る。
- OFT / OFTAdapter — LayerZero 上でトークンをチェーン間に広げるための仕組み。OFTAdapter は既存トークンをエスクローに預け、他チェーンからの到着メッセージに応じて解放する役割を持つ。
- 民事訴状 (notice of civil claim) — ブリティッシュコロンビア州の民事訴訟で、原告が最初に裁判所へ提出する書面。主張する事実と訴因、求める救済を並べるもので、この時点で内容が裁判所に認められたわけではない。
🔗 一次ソース
- The Block: KelpDAO が LayerZero を提訴、1-of-1 DVN 設定を勧めたと主張 (2026-09-25)theblock.co
- CoinDesk: KelpDAO が LayerZero と CEO を提訴 (2026-09-25)coindesk.com
crypto.news: KelpDAO が 2 億 9,200 万ドルの rsETH 流出で LayerZero を提訴crypto.news
Blockaid: 単一 DVN の侵害がどう 2 億 9,200 万ドルを流出させたか (技術分析・設定値と時刻を含む)Blockaid
OpenZeppelin: バグはゼロ、失われたのは 2 億 9,200 万ドル — rsETH ブリッジ流出の教訓openzeppelin.com