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撃墜と報復の夜、市場は「限定衝突」に賭けたまま動かない

IranがホルムズでApacheを撃墜し、米軍が報復攻撃を始めた。停戦覚書を待つプロセスの真ん中で起きた軍事衝突だ。だが市場の反応は奇妙に静かで、恐怖指数だけが上がり、原油は動かない。この非対称が、いまの市場の読みを正確に映している。

■ 何が起きたか

6月9日、米陸軍のApacheヘリがホルムズ海峡上空の哨戒中に撃墜された。米当局者はIranのShahed型ドローンによるものとの見方を示すが、意図的な攻撃か偶発かは確定していない。乗員2名は米海軍の無人艇が約2時間で救助した——無人艇による戦闘救助は史上初だ。CENTCOMは米東部時間午後5時、日本時間10日朝6時から「自衛のための対Iran攻撃」を開始したと発表し、トランプ大統領は「米国は対応しなければならない」と明言した。4月のIslamabad交渉決裂、海上封鎖、5月下旬の覚書接近という停戦プロセスは、署名前に最大の試練を迎えている。

■ 市場への転写は「半分」だけ

VIXは19.9へ5%上昇し「極度の恐怖」圏に接近、暗号資産はBTC -2%台と続落した。ところが、エスカレーションなら真っ先に跳ねるはずの原油が動いていない。WTIはむしろ89ドル台へ2%超軟化した。地政学ショックの片側(リスク資産の警戒)だけが価格に転写され、もう片側(供給リスクのプレミアム)が乗っていない。市場は「これは限定的な応酬で、停戦プロセスは死なない」に賭けたままだ。

■ 賭けが外れる瞬間はどこか

分水嶺は原油とタンカー保険料にある。Iranが再反撃するか、ホルムズの通航に実害が出た瞬間、「限定衝突」の賭けは一斉に解消される。原油が動けばインフレ経由で金利観測が書き換わり、来週6月16-17日のFOMC・日銀会合の織り込みまで連鎖する。逆に48時間応酬が拡大しなければ、今回の撃墜は「交渉を加速させた事件」として記録される可能性すらある。見るべきは爆発の映像ではなく、原油と保険料の板だ。

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