SNAPSHOT 07:58 JST
/

Signal

Trump が「巻き戻しにくい」暗号資産市場ルールを明言 — CLARITY Act は技術論から政治フェーズへ

Trump 大統領が、暗号資産の「市場ルール」をめぐる発信を再び前面に出した。

Truth Social で、Gensler 前 SEC 委員長時代の「反暗号資産派」が米国の暗号資産産業を国外へ追いやったと批判し、Trump 政権は「反対派に巻き戻されない、将来にも耐える暗号資産市場構造」を法律に明文化すると述べた。Eleanor Terrett はこの投稿について、Trump 氏が暗号資産の市場構造に公に踏み込んだのは 3 月以来だと整理している。

これは単なる「暗号資産に好意的な発言」ではない。CLARITY Act はここ数週間、開発者保護、SEC と CFTC の管轄分担、上院銀行委員会と農業委員会の法案調整、本会議で必要な 60 票ラインという実務論点で動いてきた。今回の Trump 発言は、その技術的・手続き的な議論に、大統領の政治的な重みが乗ったことを示すシグナルである。

■ 「巻き戻しにくい」の意味 — 次政権でも揺れにくい制度化

注目すべき言葉は、Trump 氏が使った「future-proof(将来にも耐える)」という表現である。ここでは、将来の政権や規制当局でも簡単には巻き戻せない、という意味合いで使われている。

これまでの暗号資産政策は、政権交代と規制当局トップの交代で方向が大きく揺れてきた。Gensler SEC の「明確なルールを作る前に取り締まりで線を引く」姿勢から、Trump 政権下の SEC / CFTC 再設計へ。市場参加者から見れば、最大のリスクは「何が合法か分からない」ことだけでなく、「今は許されていても、次の当局で突然違法扱いされる」ことだった。

Trump 氏の発言は、この揺れを行政の判断ではなく、議会を通した法律で固定する方向を示している。つまり、単に暗号資産に理解のある規制当局トップを置くのではなく、議会が市場構造法案を通し、分類、監督、開示、仲介、開発者責任の境界を法律に書き込むということだ。

この意味で、CLARITY Act の焦点は「暗号資産を認めるか」ではなく、「米国市場の中に、どのルールで組み込むか」へ移っている。

■ Lummis 発信との接続 — 開発者保護が政治的争点になった

同じ 24 時間で、Cynthia Lummis 上院議員は、CLARITY Act が通らなければ、米国のソフトウェア開発者が「コードを公開しただけで再び訴追対象になり得る」と警告した。さらに、Trump 政権が業界を受け入れる政策を進めてきたとして、超党派の CLARITY Act を大統領の机に届けるべきだと発信している。

ここでつながるのは、Trump の「巻き戻しにくい制度化」と、Lummis の「開発者保護」である。

前者は政治的な上位フレーム、後者は法案本文に落ちる実務論点だ。分散型金融、ウォレット、ゼロ知識証明、オープンソース、ノード運用ソフト、プロトコル接続部分のどこまでを金融仲介者として扱うのか。開発者が、利用者の行為についてどこまで責任を負うのか。ここが曖昧なままだと、米国に開発者を残すことは難しい。

CLARITY Act は、トークンを証券か商品かに分類する法案であると同時に、「誰が合法的に開発できるか」を決める法案になってきた。

■ 市場はまだ成立を織り込み切っていない

Polymarket では、Digital Asset Market Clarity Act が 2026 年に署名される確率が 56% と表示されている。これは、政治的な勢いは強まっているが、成立を市場が完全には織り込んでいないことを示す。

理由は明確である。上院銀行委員会は 5/12 に市場構造法案の文面を公表し、5/14 に超党派のデジタル資産法案を前進させた。しかし、上院本会議、農業委員会側との整理、修正案、民主党票、消費者保護、マネーロンダリング対策、倫理規定の文言はまだ残っている。

したがって、今回の Signal で避けるべき読みは「Trump が言ったから成立する」という断定である。正しくは、CLARITY Act の立法戦はまだ残っている。ただし、Trump 氏が市場構造を自分の政権の成果として明確に引き取ったことで、法案は「業界要望」から「政権の金融市場設計」へ一段上がった。

■ SITION 視座 — Crypto Capital of the World は、制度設計の勝負になる

Trump 政権は、米国を「世界の暗号資産の中心地」にするという言葉を繰り返している。しかし、その実体は価格を押し上げる掛け声ではなく、市場インフラの再設計である。

暗号資産を金融の外側に置くのか。SEC の取り締まり判断に委ねるのか。CFTC 管轄の「デジタル商品市場」として扱うのか。開発者を金融仲介者扱いするのか。ステーブルコイン、予測市場、現実資産のトークン化、トークン化された投資信託を、どの市場ルールに接続するのか。

「将来にも耐える」という表現は、この問いを次政権に巻き戻されない形で制度化する、という政治的宣言に近い。

先行指標として重要なのは、CLARITY Act の通過確率そのものよりも、政権、議会、規制当局、市場が同じ方向へ物語を揃え始めたことだ。次に見るべきは、上院本会議の日程、銀行委員会と農業委員会の法案調整、開発者保護の条文、SEC / CFTC の共同発信、そして Polymarket / Kalshi の確率の動きである。

透明性メモ:

本稿は Trump Truth Social 投稿、Eleanor Terrett の X 報道、Sen. Lummis の同日発信、Senate Banking / Crapo 公式リリース、および Polymarket の観測値をもとにした政策分析である。CLARITY Act の成立を断定するものではない。本稿は市場構造・規制動向の解説であり、暗号資産や関連サービスの売買・利用推奨ではない。

一次ソース / 確認ソース:

📌 関連記事:

🌐 https://sition.jp

——SITION Group · @SITIONjp