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📡 Signal|無期限先物を生んだ BitMEX、11年で取引停止
無期限先物を生んだ BitMEX が 9月23日 04:00 UTC に取引を停止した。出金だけが開いたまま残り、未出金の残高には増額予告つきの口座手数料がかかる。閉鎖の11日前には Celsius の破産財団が、2021年に CFTC が制裁金を命じたのと同じ法人群を提訴している。
BitMEX が 9月23日 04:00 UTC に取引を停止した。2014年に開業し、無期限先物 (パーペチュアル) という商品を市場に送り出した取引所が、その商品が暗号資産デリバティブの標準になった時期に自ら店を閉じた。
運営する HDR Global Trading は 7月23日の告知で、閉鎖は「事業と暗号資産業界全般の戦略的見直しを経て取締役会が決定した」ものだと説明し、法的・規制上の問題が原因ではないとも述べる。取引と入金は止まり、出金の窓口だけが開いている。畳み方には設計があり、法人としての BitMEX には畳んだ後も残る係争がある。
最後の一か月は、新しい建玉を作らせない設計だった
告知から停止までは段階を踏んでいる。7月23日の時点で新規口座登録を即時停止。8月26日 04:00 UTC には、建てられる持ち高の上限を決めるリスクリミットを絞り、利用者は建玉を減らす方向にしか動かせなくなった。そこから9月23日までの約4週間、BitMEX 側が既存の建玉を順次強制決済し、9月23日 04:00 UTC に残っていた建玉をすべて閉じて取引所としての機能を止めた。
出金は続く。ただし無期限ではない。本人確認 (KYC) を済ませたまま資産を引き出していない口座には、年1%を月次で課す口座手数料がかかる。残高がその額に満たない口座は USD 50 相当が課され、告知は「この手数料は今後増額する」と明記している。放置された残高は時間とともに目減りしていく。
BitMEX は告知のなかで、11年超の運営でハッキングによる資金喪失がゼロだったことに触れ、保有資産の裏づけを公開する Proof of Reserves ページを案内している。畳み方そのものは、秩序立った清算の手順として組まれている。
発明は残り、発明した場が消えた
BitMEX が XBTUSD を出したのは 2016年5月13日だった。期限日を持つ従来の先物と違い、買い方と売り方が定期的に払い合うファンディングレートという FX 由来の仕組みで価格を現物に繋ぎ止め、満期を持たない。最大100倍のレバレッジと組み合わせることで、24時間動く市場に合う建て方が成立した。
設計は他の取引所に広くコピーされ、いまは中央集権型の取引所にもオンチェーンの取引所にも載っている。9月24日 0時45分 (JST) 時点で、オンチェーンの Hyperliquid が234銘柄で抱える無期限先物の建玉は約129億ドル。Binance の BTCUSDT 一銘柄だけでも約85億ドルある。BitMEX 自身は XBTUSD の5周年に書いたブログで、この1銘柄の累計取引高が同取引所だけで3兆ドルを超えたとしていた。
BitMEX が閉じた後も、BitMEX が作った建て方で取引される額は今日も動いている。商品の寿命と、最初にそれを出した場の寿命は別だった。
「規制とは無関係」と言える範囲
会社の説明どおり、今回の閉鎖に新しい規制上の処分は伴っていない。ただし過去の処分と進行中の訴訟は、閉鎖とは別の時間軸で残っている。
2021年8月10日、CFTC は HDR Global Trading、100x Holding、ABS Global Trading、Shine Effort、HDR Global Services (Bermuda) の5社に対し、1億ドルの民事制裁金を命じる同意命令を出した。指定契約市場 (DCM) やスワップ執行ファシリティ (SEF) の承認を受けずにデリバティブ取引の場を運営し、先物取次業者 (FCM) の登録も持たず、顧客確認とマネーロンダリング防止の体制を欠いていた、という認定で、対象期間は2014年11月から2020年10月1日までとされた。
そして閉鎖の11日前、9月12日に Celsius の破産財団が、ニューヨーク南部地区破産裁判所に訴えを起こした。原告代理は Blockchain Recovery Investment Consortium (BRIC)。被告は HDR Global Trading、ABS Global Trading、Shine Effort、100x Holdings、HDR Global Services の5社で、2021年の CFTC 同意命令が名指した法人群とほぼ重なる。
主張は、2020年3月の急落局面で BitMEX が不当に清算・押収したとされる資産の返還だ。3月12日に Celsius から 1,325.84 BTC、翌13日に投資ファンド JST から 5,034.33 BTC、合わせて 6,360.16 BTC。約4億9000万ドル相当にあたる。訴えは、清算の引き金となる価格を BitMEX 側が握っていたこと、清算の売り注文が次善の売り気配より24%以上低い価格に置かれたことを指摘し、詐欺と市場操作を構成すると主張している。返還に加えて法定損害賠償・懲罰的賠償・3倍賠償と、清算によって得られたとする利益の吐き出しを求めている。
取引所の機能が止まっても、法人は残る。訴えられているのは閉じた取引所そのものではなく、それを所有していた会社群だ。
ここからの分岐
本線は、出金が粛々と進み、BitMEX が訴訟対応だけを抱えた清算法人として残る展開だ。取引の場としては終わっているので、市場側に波及する材料は乏しい。
risk 側は、未出金残高に置かれている。年1%または USD 50 相当という現在の水準は、告知が自ら「今後増額する」と書いている暫定値だ。連絡の取れない口座や、鍵を失った口座の資産が手数料で削られていく構図は、閉鎖した取引所が残高をどう扱うべきかという論点として立ち上がりうる。次の水準と適用時期は、閉鎖告知が載ったのと同じ BitMEX ブログに出る。
alt 側は、Celsius の訴えが本格的な審理に入らずに終わる筋だ。被告5社は2021年に、事実の認否を明示しないまま金銭で決着した経験を持つ。同じ法人群が同じ形で終えるなら、6,360.16 BTC の帰属は法廷では確定しない。分岐の最初の分かれ目は、ニューヨーク南部地区破産裁判所の事件記録に出る被告5社の応答 (答弁か、却下申立てか) と、最初の審理日程になる。
ことば
- 無期限先物 (パーペチュアル) — 満期を持たない先物。買い方と売り方が定期的に払い合う「ファンディングレート」で価格を現物に近づける。BitMEX が2016年に XBTUSD として実装し、他の取引所が設計を引き継いだ。
- 強制決済 — 取引所が利用者の建玉を一方的に閉じること。通常は証拠金が足りなくなった時の措置だが、今回は閉鎖に向けて市場を秩序立てて畳むための手順として使われた。
- 同意命令 — 制裁の内容に当事者が争わず合意し、当局や裁判所が命令として確定させる決着の形。事実の認否を明示しないまま終わることが多い。
🔗 一次ソース
- BitMEX 公式告知「BitMEX Exchange to Sunset on 23 September at 04:00 UTC」bitmex.com
- BitMEX ブログ「Five Years Ago, the Perpetual Swap Was Born. Everything Changed.」bitmex.com
- CFTC プレスリリース 8412-21 (2021年8月10日)cftc.gov
- CoinDesk「BitMEX Shuts Down Trading After 11 Years, Leaves Withdrawals Open」(9月23日)coindesk.com
Cointelegraph「Celsius Estate Sues BitMEX Over 6,360 BTC Liquidations」Cointelegraph- Hyperliquid 公開マーケットデータapp.hyperliquid.xyz
- Binance USDⓈ-M 先物 BTCUSDTbinance.com
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