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SNAPSHOT 2026-10-12 07:30 JST

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📡 Signal|BlackRock、AI の計算資源を担保や先物になりうる資産と位置づけ

BlackRock が白書「The Machine-Native Economy」を公開した。計算資源を担保に差し入れ、取引所で先物として売買しうる資産として扱う一文が、この文書でいちばん遠くまで届いている。

LiveMakers Editorial Desk

📡 Signal|BlackRock、AI の計算資源を担保や先物になりうる資産と位置づけ

BlackRock が、AI の普及をデジタル資産の需要源として読み解く白書「The Machine-Native Economy」を公開した。執筆は同社のデジタル資産調査責任者 Will Su ら4人で、内容は9月22日に各社が報じた。

主張は三つある。大規模言語モデルとブロックチェーンが同じトークン化の手順を踏むこと、AI エージェント同士の取引には機械向けの決済網が要ること、そして計算資源そのものがデジタル資産の新しい市場になることだ。

運用資産で世界最大の会社が、計算能力を「担保に差し入れられる」契約として文書に書いた。その一文が、この白書でいちばん遠くまで届いている。

トークン化という言葉が、二度使われている

白書はまず、AI とデジタル資産が同じ土台から出てきたと置く。AI は機械が扱える知能であり、デジタル資産は機械が扱える貨幣である、という対応づけだ。

構造の説明は具体的である。大規模言語モデルでは、トークナイザーが文章を単語や部分語に割り、数値の識別子に写し、埋め込み層がそれをベクトルに変える。ブロックチェーンでは、現金・ファンドの持ち分・証券といった権利を、分散台帳上の標準化されたトークンとして表す。同社は「機能は異なるが、どちらの工程も現実の入力を機械がそのまま使える形式に翻訳している」と書く。

この節には、あまり見かけない語が混じっている。マネーロンダリング対策 (AML) と本人確認 (KYC) に加えて、KYA — know-your-agent が並んでいる。相手が信頼できる機械の代理人かを確かめる手続きを、人向けの確認と同じ列に置いている。これらの確認は鎖の外側で行い、検証結果だけを鎖の上に渡して取引の適格性を判定する、という整理になっている。

決済規格の一覧に、誰が並んでいるか

白書は、人の指示を受けて複数の手順を自分で組み立てて実行する AI をエージェントと呼び、その取引に既存の決済網が合わない理由を四つ挙げる。口座開設と認証に人の関与が要ること、加盟店手数料が少額取引を成り立たなくすること、決済の確定に時間がかかること、機械が出す取引量に対して規模の限界があること。

そのうえで、いま並んでいる規格を名前で挙げている。土台にあたるのは Anthropic が2024年11月に出した MCP と、Google が2025年4月に出した A2A である。前者は AI が外部のデータや業務手順にアクセスする方法を、後者はエージェント同士が連携する方法を標準化する。

決済側はさらに数が多い。Coinbase の x402 は HTTP の 402「支払いが必要」という応答コードを使い、機械が起こす支払いをその場で処理する。Tempo と Stripe の MPP は API などの資源への支払いを扱い、Stripe と OpenAI の ACP は売り手が既存の決済基盤を保ったまま機械との取引を通す。Google の AP2 は利用者の承認を暗号技術で証拠として残し、Visa の TAP は加盟店が信頼できるエージェントを検証して支払い情報を安全に受け取る仕組みだという。

x402 については、24時間動く検証可能な決済によって資源の提供者が抱える相手方リスクを下げ、支払いの確認と同時にデータや役務を渡せるようになると書く。手数料・ステーキング・ガス代の負担設計によって、どのネットワークがその価値を受け取るかは変わるとも付けている。

カード網と同じ桁に並んだが、同じものを数えていない

数字の節は、ステーブルコインから始まる。流通時価総額は2026年9月時点で3000億ドルを超え、トークン化された実物資産のなかで最大の分類になっている。調整後の取引額は2025年に11兆ドルを超え、白書はこれを「Visa と Mastercard の年間決済額と同じ広い帯」に入ると書く。

ただし、同じ図の注記が比較の限界を明示している。Visa の数字は決済と現金引き出しを含む総額で、会計年度は2025年9月30日まで。Mastercard とステーブルコインは暦年で、Mastercard は総ドル額。ステーブルコイン側の調整後取引額は、アドレスのラベルと経験的なフィルターを使って、内部振替・取引所内の移動・ボット・高頻度の活動を除いた値である。図の注記は「これらの指標は直接比較できない」と書いている。

規模の差はもっと大きい方向にもある。2025年に ACH で移された金額は93兆ドルで、ステーブルコインはその手前にいる。ただし2020年から2025年までの年平均成長率は、ステーブルコインが80%、ACH が約8.5%である。米国の GENIUS 法、EU の MiCA、香港の免許制度、シンガポールの枠組みといった規制の整備が普及を支える、というのが白書の見立てである。

計算資源を担保に差し入れるという一文

投資家の目は、AI 基盤を建てる設備投資に集まってきた。ゴールドマン・サックスの推計で、2025年から2030年までの累計は5兆ドルを超える。白書は、同じ重みで運転費を見るべきだと書く。

運転費の相当な部分は、設置済みの機器と電力へのアクセスを売る「AI クラウドの計算市場」を通る。市場規模の代理として、Amazon Web Services、Microsoft の Intelligent Cloud、Google Cloud の合計収益は2030年に約1.1兆ドル、2025年からの年平均成長率は29%と見込まれている。Bloomberg が集計した売り手側アナリストの推計で、2026年8月31日時点のものだ。

需要の中身も変わる。実用が広がるにつれて推論が2030年に最大の AI 用途になるとし、McKinsey の推計を引いている。世界のデータセンター電力需要のうち、AI 推論の占める比率は2025年の25%から2030年に43%へ上がる。学習は28%のままである。推論の利用者は企業から個人まで広く、学習の参加者より数が多く散らばっている。

ここで、いちばん遠くまで踏み込んだ一文が置かれる。標準化された計算契約は「計算能力とその利用権に対する請求権を作り出し、それを表示し、譲渡し、担保に差し入れ、プログラム可能な基盤の上で決済できるようにする」。価格発見と価格変動の回避のために、取引所で売買される計算能力の先物のような標準商品が出てくるとも見込む。

早い兆しとして挙がっているのは、Stripe が2026年8月に合意した OpenRouter の買収である。OpenRouter は80社を超える提供者の400以上のモデルに、作業内容と費用対効果で処理を振り分ける。決済・ステーブルコイン・エージェント取引を横断する会社がこれを買ったことを、白書は計算資源の調達と使用量課金とプログラム決済が近づく兆候として読んでいる。

白書が自分で並べた三つの留保

第一に、エージェントによる決済は今なお初期段階である。「エージェントの決済活動は現時点では萌芽的である」と書き、構造の適合性ゆえに観察に値する領域だ、という書き方にとどめている。

第二に、AI が貨幣をどう選ぶかの根拠が弱い。日常の支払いにステーブルコイン、長期の価値保存にビットコインを選ぶ傾向が出たという Bitcoin Policy Institute の調査を引くが、同時にこれは「観察されたエージェントの行動ではなく、模擬された応答」だと明記している。

第三に、計算契約の設計と市場構造の課題が残っている。チップの世代で処理能力が違うこと、地域で電気代が大きく異なること、現金決済と契約した能力の引き渡しの両方に通用する基準を作ること。白書はこれらを「重要だが最終的には解ける設計上の検討事項」と位置づけるが、解いた状態を示してはいない。末尾には、この資料が予測・調査・投資助言として依拠されることを意図しておらず、記載した企業は BlackRock の保有銘柄を示すものではないという注記が付いている。

確認できる先は三つある。1.1兆ドルという2030年の数字が乗っている土台は、10月下旬から始まる Amazon・Microsoft・Alphabet の四半期決算である。x402 の中身は Coinbase が公開した仕様書で読める。Stripe と OpenRouter の取引は、Stripe のニュースルームに完了の告知が出るかどうかで進捗が分かる。

ことば

  • x402 — HTTP の 402「支払いが必要」という応答コードを使い、機械が起こす支払いをその場で処理する決済手順。ブロックチェーンの種類を問わず動くよう設計され、白書は USDC を初期の主な用途に挙げている。
  • 推論 (インファレンス) — 学習済みの AI モデルを実際に動かして答えを出す工程。モデルを作る学習と違い、使われるたびに電力と計算を消費するため、利用者が増えるほど費用が積み上がる。
  • KYA (know-your-agent) — 取引の相手が信頼できるエージェントかを確かめる手続き。人に対する本人確認 (KYC) にあたるものを、機械の代理人に用意するという考え方である。

もう一歩: 白書の対応づけを逆から読むと、機械が読める形に整えられた資産ほどエージェントの取引対象になりやすい、という含意が出てくる。計算資源を何の1単位で数えるかがまだ決まっていないのは、技術の優劣ではなく、権利の記述がどこまで標準化されているかの問題である。

🔗 一次ソース

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