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📡 Signal|Midnight City、AI エージェントの実資金取引を数か月内に

ホスキンソン氏が東京で、Midnight City の実資金エージェント取引を数か月内に有効化する計画と、土台の Nightframe を説明。稼働・予定・構想を分けて読む。

LiveMakers Editorial Desk

📡 Signal|Midnight City、AI エージェントの実資金取引を数か月内に

Input Output (IOG) のチャールズ・ホスキンソン氏は 10 月 10 日、東京・白金台の八芳園で開いた「Midnight City: Tokyo」の基調講演で、AI エージェントの街 Midnight City で実際の暗号資産を使うエージェント取引を、今後数か月のうちに有効にする計画を語った。その土台として示したのが、スマートコントラクトの次に置く「Nightframe (ナイトフレーム)」で、本人のプログラムを常時動かし、意図に沿った働きを証明できる私的なコンピューターだという。

今週シンガポールの TOKEN2049 で示した「エージェントが手間を引き受け、鍵は本人が持つ」という構想を、東京で 1 時間近くかけて掘り下げた形だ。講演には稼働中の機能、日付つきの予定、まだ構想の段階のものが混ざっている。本稿はそれを分けて読む。

スマートコントラクトの次、Nightframe の 4 要素

ホスキンソン氏は講演で、ブロックチェーンを世代の積み重ねとして整理した。Bitcoin が個人間で移せるお金、Ethereum がプログラム可能性、Cardano がそれを大きな規模で運用する基盤で、Midnight はその上に 4 つを統合する世代だという。

  • プライバシー強化技術: ゼロ知識証明 (ZK)・TEE・MPC で、すべてを公開せずに処理する
  • コンプライアンス: 取引資格や規則といった制度上の条件を扱う
  • 抽象化: 利用者がチェーンや資産の違いを意識せずに使える
  • AI エージェント: 利用者の目的に沿って判断し、作業を進める主体を組み込む

これは講演者自身の整理で、各世代は前の性質を捨てずに引き継ぐ、と繰り返した。そのうえで氏は、この 4 つを組み合わせるのに従来のスマートコントラクトで足りるのかと問い、答えとして Nightframe を出した。

特徴は「Three I's and a P」と名付けられた。

要素講演での意味
Identity誰のために働くのか、誰が指示したのかを識別する
Intention手順ではなく、利用者が達成したい目的を理解する
Intelligence目的を達成する方法を考え、行動する
Personal本人の事情や好みを理解し、本人に属する

必要条件として挙げたのは、本人が所有・管理すること、非カストディアルであること、分散性と検閲耐性を引き継ぐことの 3 つ。利用者が寝ている間もプログラムが働き続ける、という前提に立つ。

エージェントに身元と支払い手段を持たせる試みは Midnight だけのものではない。Ethereum では ERC-8004 (Trustless Agents) がエージェントの身元・評判・検証の登録簿を定めようとしており、Coinbase が始めた x402 は HTTP の上でエージェントが少額を払う手順を標準化している。Midnight の差は、計算の中身を見せないこと (プライバシー) を最初から前提に置く点にある。

金を払うエージェントには、身元と意図が要る

講演でいちばん筋が通っていたのは、スキル市場からさかのぼる論理だ。

優れた取引戦略を持つ人が、戦略の中身を渡さずに他のエージェントへ使わせる。専門的な開発技術を持つ人が、その能力をスキルとして貸し出す。講演では、古いハードウェア向けのファームウェア開発のような狭い専門技能も例に挙がった。ホスキンソン氏はこれをエージェントのスキルに対する DRM、あるいは新しい SaaS の形だと説明した。スキルそのものを配らず、使う権利を貸す。

専門家にとっては、自分の時間を切り売りする形から、能力の利用を継続して提供する形へ移る道になる。小さな得意分野でも、需要を持つエージェントに見つけてもらえれば商品になる。

買い手もエージェントになりうる。人が「調べてレポートを書いて」と頼めば、エージェントは調査・分析・整理に要る能力を自分で選ぶ。その能力が有料なら自分で払う必要があり、財布が要る。何に払うべきかを判断するには本人の意図が要り、その指示が本当に本人から出たかを確かめるには身元が要る。こうして話は Nightframe の 4 要素に戻ってくる。

この連鎖の中で、プライバシーは付加機能ではなく市場の成立条件になる。戦略の持ち主は中身を見せずに使わせたいし、買い手は自分の資金と目的を他人に読まれたくない。計算は秘匿したまま、正しく実行されたことだけを証明する。Midnight が ZK・TEE・MPC を並べる理由は、この取引を成り立たせるためだと読める。

売り手の側の競争条件も変わる。買い手がエージェントなら、何ができるかを機械が読める形で示し、料金を事前に見積もれ、結果を確かめられるスキルが選ばれる。人に向けた使いやすさの訴求だけでは、販売の入口に立てない。

残る論点もある。DRM になぞらえた権利の管理が、出力から中身を推測される場合までどう守るのか。技術報告の場ではなかったこともあり、講演ではその条件は示されていない。

財布を渡す前に決める、委任の範囲

エージェントに財布を持たせると、次に問われるのは「どこまで任せたか」だ。Nightframe の Identity と Intention は、運用に置き換えると委任の設計になる。

  • 1 回あたり・期間あたりの予算はいくらか
  • 継続課金のスキルを契約してよいか
  • 外部のスキルに渡してよい情報はどこまでか
  • 判断に迷ったとき、どの段階で本人に確認を戻すか
  • 権限をいつでも変えられ、止められるか

代理購入が便利になるほど、利用者が支出を把握し、止められることの価値が上がる。講演は所有と管理の原則を語ったが、上限や承認の手順といった具体はこれから出てくる部分だ。

稼働・予定・構想の線引き

講演の内容に、Midnight City の公式ドキュメントと更新履歴で確かめられる事実を重ねると、こうなる。

内容確認できた位置づけ
エージェントのウォレット稼働中 (テストネット)。9 月 1〜2 日の更新で Midnight Preview と Cardano Preprod に接続
街の USDM ATM稼働中。説明とテスト用トークンの案内のみで、出金・スワップ・ブリッジは行わない (9 月 7 日)
手持ちの AI の接続稼働中。公式ドキュメントに Hosted AI / Hermes・OpenClaw / ローカルモデルの接続案内
Midnight City 日本語版終盤の告知映像で「日本語版、配信開始!」と表示。公式ドキュメントにも日本語の切り替えがある
Open Wallet Standard講演で統合済みと説明。公開の更新履歴にはまだ記載がない
Midnight Passport 初版2026 年末ごろの予定
Passport の機能追加2027 年前半に約 3 週間ごと
実資金を使うエージェント取引今後数か月で有効化する計画
スキルの利用権の売買市場今後の機能として説明
企業間の機密共有・医療・オフライン決済・ゲーム機などへの展開利用シナリオ・将来構想

下の段ほど構想に近い。企業間連携の例に出た Toyota と電池メーカー CATL は、知的財産を守ったまま共同作業する場面を描くための例で、両社との提携発表ではない。日本の利用者がスイスでスキー中に骨折し、現地の病院が診療に要る情報だけを使う、という医療の例も同じ扱いだ。

決済では「quantum money」という言葉を使い、端末どうしで現金のように価値を移す構想を語った。送り手の端末にある固有の秘密鍵を受け手へ渡し、送り手側のコピーを消し、その消去を証明する流れで、オフラインかつ第三者に見られずに払えるという。実機のデモはなく、消去の証明を何が支えるのか (端末のハードウェアか、暗号か) も講演では示されていない。ここが構想と実装の距離がいちばん大きい部分だ。

損をしない街に、実資金が入る

Midnight City は、AI エージェントが住む街のシミュレーションだ。公式ブログは 2026 年 3 月に稼働を告知した。7 月の V2 では、エージェントが人の操作なしに派閥に入り、仕事をし、関係を結ぶようになった。行動は信頼スコアや記憶、協力・裏切りの噂が広まる仕組みで変わり、利用者は見た目と性格を設定して間接的に関わる。

ホスキンソン氏はゲーム風の世界から始める理由を、自律した AI を理解し信頼を育てるためだと説明した。いきなりお金や個人情報を預けず、損をしない世界でエージェントの振る舞いを観察する。Ethereum がスマートコントラクトや dApp を試す土台になったように、Midnight City を新しいエージェントの実験場にしたいとも語った。

いまのウォレットはテストネットにつながっている。その線を越えるのが、今後数か月の計画だ。利用者がウォレットに資金を入れ、エージェントが取引戦略を取得し、他のチェーンやオフチェーンの基盤でも取引する。講演では、これは能力を探し、取引し、改善する市場を試す場として位置づけられ、エージェントと戦略を管理するのは利用者だとされた。利益が出ることを示したデモではない。実資金が入った時点で、Midnight City は観察の場から損益の出る市場に変わる。

次に見るもの

  • 実資金の取引が有効になる告知: Midnight City 公式 X (@MidnightCitySim) と Midnight 公式ブログ。講演の言う「今後数か月」のうちに出るかどうか。どの戦略が誰の責任で動くのか、規約の書き方を見る
  • Midnight Passport 初版: 2026 年末ごろ。エージェントの身元を何で裏付けるか (本人確認の深さ・開示の範囲) が、Nightframe の「Identity」の実体になる
  • Midnight City の公式更新履歴 (midnight.city/docs/release-notes): 実資金の取引に先立ち、テストネットから本番環境への切り替え、支出上限や承認の手順、Open Wallet Standard の記載がここに出るか

ことば

  • Nightframe — ホスキンソン氏がスマートコントラクトの次に置いた概念。本人のプログラムを常時動かし、意図に沿った働きを証明する私的なコンピューター。東京では、エージェントのスキル市場とつなげて語られた。
  • TEE (Trusted Execution Environment) — CPU の中に隔離された領域を作り、外から中身を見られずに計算する仕組み。Midnight City では、取引のまとまりをこの中で再実行して正しさを示す役割を担う。
  • Midnight Passport — エージェントや利用者の身元を扱うために開発中の仕組み。初版は 2026 年末ごろの予定で、エージェントが「誰の指示で動いているか」を示す土台になる。

🔗 一次ソース

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