Signal
📡 Signal|中国、新質生産力の意見に国家ブロックチェーン網の建設を明記
中国共産党中央と国務院が10月9日に公表した新質生産力の意見に、国家ブロックチェーン網の建設が1項目として入った。運営主体も期限も示されず、暗号資産の禁止は続いている。
中国共産党中央委員会と国務院は10月9日、経済政策の上位文書「新質生産力の発展に関する意見」を公表し、デジタル経済の施策の1つとして「全国一体化の算力網と、国家ブロックチェーン網を建設する」と書き込んだ。新華社が同日に配信し、中国政府のサイトに全文が載っている。文書は7部19条で、ブロックチェーンという語が出てくるのは第3部の第9条、1か所だけだ。
一部の報道は、党と国務院が国家ブロックチェーン網の構築を「命じた」と伝えた。原文は、データ基盤とデジタル化の施策を並べた1文の中で、計算資源の全国網と並べて建設を挙げている。運営する組織も、期限も書かれていない。暗号資産についての記述は1語もなく、暗号資産の取引を違法とする中国の枠組みは今年2月の通知で引き継がれたままだ。速報は10日の 記事 で伝えた。
原文の1文と、その前後
該当するのは、第3部「科学技術の革新と産業の革新の深い融合を進める」の第9条「実体経済とデジタル経済の深い融合を促す」だ。原文は次のとおり。
健全数据产权归属认定、市场交易、权益分配、利益保护制度,实施数据要素相关试点示范工程,充分释放数据要素潜能。优化国家数据基础设施布局建设和运营,深入开展制造业数字化转型行动,实施"东数西算"、智能制造、工业互联网创新发展等工程,建设全国一体化算力网、国家区块链网络。
前半はデータの扱いで、データの所有の認定・市場での取引・権益の配分・利益の保護の制度を整えるとしている。後半がインフラで、東部のデータ処理を西部の計算資源で担う「東数西算」、製造業のデジタル化、産業用インターネットと並んで、算力網と国家ブロックチェーン網が置かれている。
文書のほかの部分でも、データは繰り返し出てくる。第5部の第14条は「全国一体化のデータ市場」の建設を、第17条は「効率的で便利で安全な、データの越境の流通の仕組み」の確立を挙げた。ブロックチェーンは、このデータの制度とインフラの束の中の1つの部品という扱いだ。
BSN との関係は書かれていない
中国には、すでに国の主導でつくられたブロックチェーンの基盤がある。2020年4月に始まったブロックチェーン・サービス・ネットワーク (BSN) で、国家発展改革委員会の傘下のシンクタンクである国家情報センターが主導する団体が運営している。今回の「国家ブロックチェーン網」がこの BSN を指すのか、新しく別に設けるのかは、本文にも、発展改革委員会の記者向けの説明にも書かれていない。
文書全体の取りまとめ役は、第7部で党の中央財経委員会の事務局と国家発展改革委員会とされた。ブロックチェーン網の設計や工程が示されるとすれば、この2つの機関か、データ行政を担う部門の個別の計画になる。
暗号資産の禁止は、2月の通知で引き継がれている
国家ブロックチェーン網は、暗号資産の解禁を意味しない。中国人民銀行など8部門は2026年2月6日、「暗号資産などの関連リスクをさらに防ぎ処理する通知」を出し、2021年9月の取引禁止の通知を廃止したうえで、その中身を引き継いだ。新しい通知は、国内での法定通貨と暗号資産の交換、暗号資産どうしの交換、トークンの発行による資金調達などを「一律に厳しく禁止」し、国外の事業者が国内に暗号資産のサービスを提供することも禁じている。対象には、現実の資産のトークン化 (RWA) にかかわる投機と、関係部門の同意のない人民元連動のステーブルコインの国外での発行も加わった。
国が台帳の技術を基盤として建設しながら、その上で民間の暗号資産が動くことは認めない。この線引きは、米国がステーブルコインの法律と市場構造の法案で、民間の発行と取引を制度の内側に取り込もうとしている方向とは逆を向いている。同じブロックチェーンという技術でも、米国は民間の資産の置き場として、中国は国のデータ基盤の部品として位置づけている。
次に見るもの
確認先は国家発展改革委員会と国家データ局の公表ページだ。意見を具体化する個別の計画や工程表が出れば、国家ブロックチェーン網の運営主体と、BSN との関係がそこで初めて分かる。もう1つは、来年3月の全国人民代表大会で示される政府活動報告で、国家ブロックチェーン網が年度の重点に入るかどうかが、この1文の重さを測る目安になる。
ことば
- 新質生産力 — 習近平国家主席が2023年に打ち出した経済政策の言葉。科学技術の革新を軸に、AI や量子、新エネルギーなどの新しい産業で生産性を高めることを指す。
- 算力網 (計算資源の全国網) — データセンターの計算資源を全国でつなぎ、必要な場所に振り分ける仕組み。電力の豊富な西部で計算し、需要の多い東部に届ける「東数西算」と組み合わせて進められている。
- BSN (ブロックチェーン・サービス・ネットワーク) — 中国の国家情報センターなどが主導して2020年に始めた、企業や自治体が共通の基盤でブロックチェーンのアプリを動かせるようにする網。国内版では暗号資産を使わない設計をとる。
🔗 一次ソース
中国政府網:中共中央 国務院「新質生産力の発展に関する意見」全文 (新華社 2026年10月9日配信・第3部第9条)gov.cn
中国政府網:新華社の解説記事 (2026年10月9日)gov.cn
中国政府網:国家発展改革委員会の記者向け説明gov.cn- 武漢市科学技術局:意見の全文の転載 (2026年10月10日)kjj.wuhan.gov.cn
- 澎湃新聞:中国人民銀行など8部門「暗号資産などの関連リスクをさらに防ぎ処理する通知」(銀発〔2026〕42号・2026年2月6日) の転載thepaper.cn
- Stanford DigiChina:Blockchain-based Service Network (BSN) の解説DigiChina
- Cointelegraph の X 投稿 (2026年10月10日)