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📡 Signal|米財務省、イラクの民間銀行 IDB をイラン制裁で指定
米財務省が10月15日、イランにドルの接続口を与えたとしてイラクの民間銀行 IDB を制裁対象に指定。FinCEN はシーア派の献金がイランへ流れる経路の報告を金融機関に求めた。
米財務省は10月15日、イラクの民間銀行「International Development Bank for Investment and Finance (IDB)」を、イランの金融・石油分野を対象とする大統領令 13902 号にもとづく制裁の対象に指定した。財務省によると、IDB はイランにドルへの接続口を与え、イラン系の民兵組織とも結びついている。同じ日に財務省の金融犯罪取締ネットワーク (FinCEN) は、宗教上の献金がイランの政権へ流れる経路を報告するよう、金融機関に警告を出した。
指定の中身は、銀行・海外の系列銀行・両替商・個人を一度に網にかける形だ。8月24日に始まった「Operation Economic Outcast (経済的追放作戦)」の一環で、財務省はイランの資金がドルの決済網に入り込む入口を、国の外側から一つずつ塞ぎにかかっている。
イラクの銀行が担っていた役割
財務省の発表によると、IDB はイランの企業が設立した銀行で、閉鎖したイランのメッリ銀行 (Bank Melli・制裁対象) の資本を引き継ぎ、利益を毎月ドル建てでイランへ送っている。イラクで行われていたドル送金の入札制度 (現在は廃止) を悪用した点も指摘された。経営陣は、イラン革命防衛隊の対外部門 (コッズ部隊) とつながるイラク系イラン人の金融業者から株式を取得しており、この人物は家族を通じて今も影響力を持つという。
同じ発表で指定されたのは、IDB だけではない。
- イランの銀行の海外系列: Jazireh International Bank Company (メッラト銀行系) と Chabahar International Bank Overseas Company (シャフル銀行系)
- 石油収入の受け皿: ドバイを拠点とする石油の仲介業者 Sayyed Ruhollah Razavi 氏と、同氏が支配する 2 社。香港・アラブ首長国連邦・トルコを経由し、ペーパーカンパニーと現金・金の運び屋で石油代金を動かしていたとされる
- 影の銀行網: シャフル銀行の系列会社の従業員 7 人と、香港の Elitesphere Trading
- 両替商: 3 つの両替会社とその所有者。うち 1 社はメッラト銀行系の機関を含め数億ドル規模の取引を扱っていた
国務省も同日、キューバの Banco Internacional de Comercio (BICSA) を別の大統領令で指定した。BICSA は少なくとも2022年から、イランのカラフアリン銀行 (Karafarin Bank) に金融サービスを提供してきたという。ベッセント財務長官は発表で「財務省は、イランの政権の金庫が空になり、戦争の機構を支える最後の資金の命綱が断たれるまで手を緩めない」と述べた。
今回の発表は、IDB に対する金額を示していない。数億ドルという規模が書かれているのは、海外系列の銀行と影の金融業者、両替商の取引についてだ。
FinCEN の警告: 宗教上の献金「フムス」
FinCEN の警告 (FIN-2026-Alert008) が対象にしたのは、シーア派の信者が払う宗教上の献金だ。フムスと呼ばれ、年間の余剰所得の 5 分の 1 を宗教機関に納める慣行を指す。警告によると、こうした献金を集める組織の一部は、イランの政権に近い高位の聖職者や最高指導者の名義で集金し、ハワラ (帳簿だけで資金を動かす非公式の送金網) や現金の運び屋でイランへ送っている。
警告は 2024 年の事件を例に挙げる。米国内で献金を含む数万ドルを集め、イランへ運んだとして 2 人が有罪を認めた。司法省によると、2 人は知人や家族に 1 万ドル未満ずつ現金を持たせて国外へ運ばせ、届け出の基準をすり抜けていた。
金融機関に求めたのは、疑わしい取引の届け出 (SAR) で「FIN-2026-IRANCHARITYABUSE」という語を使うことだ。挙げられた兆候は 4 つある。慈善活動の実体が見えない団体が寄付を募る、出所の分からない大口の寄付が短期間に集まり他の団体へ流れる、団体が届け出や記録の義務を避けている、取引関係の見えない団体から送金を受けた個人が現金で引き出すか転送する。同時に FinCEN は「正当な慈善団体は金融サービスを利用できるべきだ」とも書いた。献金そのものを疑うのではなく、集め手と送り先を見よという線引きだ。
ドルの決済網という道具
今回の指定で重いのは、銀行にとっての帰結だ。発表は、指定された相手と重要な取引を知りながら仲介した外国の金融機関は、米国のコルレス口座 (海外の銀行が米国の銀行に持つドル決済用の口座) を失うか制限されうると明記している。イラクの銀行にとって、ドルの決済網から外れることは事業の継続に直結する。
イラクは原油の輸出代金をドルで受け取り、そのドルを国内の銀行を通じて輸入代金に回す。その経路の一つにイランへの抜け道があれば、米国は国ではなく銀行単位でそこを閉じる。今回の IDB の指定は、その手法がイラクの銀行にも及んだことを示している。原油の供給そのものに触れる措置ではないが、イランの石油収入がどの経路でドルに替わるかを、財務省が一つずつ特定しているのは確かだ。
次に見るもの
最初の確認先は、米財務省外国資産管理局 (OFAC) の制裁リスト (SDN リスト) の検索ページだ。IDB の掲載内容 (別名・所在地・指定の根拠) は今週中に誰でも確かめられる。次に、イラク中央銀行の発表面で、IDB の扱い (ドル取引の停止や監督措置) が示されるかを見る。同作戦は8月24日の開始から指定を重ねており、次の発表がイラクの別の銀行に及ぶかどうかが、この線引きの広さを決める。
ことば
- 大統領令 13902 号 — 2020 年に出たイランの金融・石油・建設などの分野を対象とする制裁の根拠。今回の銀行・両替商・個人の指定はほぼすべてがこの命令による。
- フムス — シーア派の信者が年間の余剰所得の 5 分の 1 を宗教機関に納める献金。共同体の福祉や宗教活動を支える一方、集め手によってはイランの政権に流れうると FinCEN は警告した。
- コルレス口座 — 海外の銀行が米国の銀行に開く、ドルを決済するための口座。これを失うとドル建ての送金ができなくなり、制裁の効き目の要になる。
🔗 一次ソース
- 米財務省の発表 (2026年10月15日・IDB など銀行・両替商・個人の指定、ベッセント長官の発言)home.treasury.gov
- 米財務省の発表 (2026年10月15日・宗教慈善網の悪用に関する FinCEN の警告)home.treasury.gov
- FinCEN の警告 FIN-2026-Alert008 (フムスの定義、2024年の事件、届け出の語と 4 つの兆候)fincen.gov
- 米財務省公式 X の発表 https://x.com/USTreasury/status/2110805296662614448
- 米財務省公式 X の FinCEN の警告の告知 https://x.com/USTreasury/status/2110789567075024923
- OFAC の制裁リスト検索sanctionssearch.ofac.treas.gov