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📡 Signal|BIS 論文、預金金利1bp上昇でステーブルコインの伸びが約3ポイント鈍化

BIS ワーキングペーパーが、預金金利1bp上昇で10週間のステーブルコインの伸びが約3ポイント鈍ると推計。USDC は USDT より強く反応する。

LiveMakers 編集デスク

📡 Signal|BIS 論文、預金金利1bp上昇でステーブルコインの伸びが約3ポイント鈍化

国際決済銀行 (BIS) は10月13日、銀行の預金金利とステーブルコインの関係を米国の週次データで測ったワーキングペーパー第 1382 号を公表した。預金金利が 1bp (0.01%) 上がると、その後 10 週間のステーブルコイン時価総額の伸びがおよそ 3 ポイント鈍るという推計で、論文は両者を「部分的な代替物」と結論づけた。

Are stablecoins and bank deposits substitutes? (BIS Working Paper No 1382・2026年10月13日公表/著者 Rashad Ahmed・Iñaki Aldasoro。「部分的な代替物」、預金と融資の総額への影響は示していない、の要約を確認)Bank for International Settlements

利息のつかないドル建てステーブルコインは、預金と同じ「手元のドル」を奪い合う関係にある。銀行の金利の付け方が、ステーブルコイン市場の成長の速さに効いていることを数字で示した論文になる。

論文の公表は速報で伝えた。BIS が公開した論文の本文から、数字の意味と、論文が言っていないことを整理する。

何を、どう測ったか

著者は BIS のイニャキ・アルダソロ氏と、アンダーセン金融経済研究所のラシャド・アーメド氏の 2 人。2019 年 1 月から 2025 年 6 月までの米国の週次データを使い、準備資産で裏付けられたステーブルコインの時価総額が、銀行の預金金利の変化のあとにどう動くかを推計した。

預金金利には、普通預金と MMDA (市場金利連動型預金) の全国平均を使っている。米国債の利回り、政策金利、ドルの為替、ビットコイン価格、相場の変動率などの影響は取り除いた。

預金金利と市場の両方を同時に動かす要因を切り分けるために、論文は銀行の預金金利の付け方の癖を利用した。政策金利がおよそ 3% を超えると、銀行は預金金利を急に大きく引き上げ始める。この「折れ曲がり」を手がかりにした推計 (操作変数法) でも、結果は同じ向きに出た。

「1bp で 3 ポイント」の読み方

1bp は小さな数字に見えるが、論文によると、普通預金の金利が 1 週間に 1bp 動くのは、週次の変化の 1.2 標準偏差にあたる。預金金利はもともと週単位ではほとんど動かないので、1bp の変化でも大きな動きになる。

推計の結果は次のとおりだ。

  • 通常の推計 (最小二乗法): 10 週間の時価総額の伸びが、平均の約 15% から約 12% へ鈍る
  • 折れ曲がりを使った推計: 約 15% から約 6% へ鈍る (およそ 9 ポイント)
  • 平均の伸びを打ち消すには、1 週間で約 5bp の預金金利の上昇が要る。論文はこれを「6 標準偏差の出来事」としている

論文は、2022〜2023 年の利上げ局面でステーブルコインの時価総額がおよそ 3 割減ったことも、預金金利の上昇が積み重なった結果と整合的だとしている。ビットコインなどステーブルコイン以外の暗号資産では、同じ効果は見られなかった。

USDC と USDT で効き方が違う

同じ推計を銘柄別に行うと、10 週間の伸びの鈍り方は USDC が 4.8 ポイント、USDT が 1.9 ポイントだった。論文は、USDC が米国の機関投資家や DeFi (分散型金融) の利用者に多く持たれ、USDT が主に米国外の取引や新興国で使われていることに理由を求めている。

米国の預金と比べて選ばれるドルほど、米国の金利に敏感だということになる。米国の利用者に近いステーブルコインほど、銀行の預金と正面から競う位置にいる。

論文が言っていないこと

論文は、自らの結論の範囲を明確に区切っている。

  • 示したのは資金の振り分け先の選択であって、ステーブルコインの成長が銀行の預金や融資の総額を減らすことは示していない
  • 折れ曲がりを使った推計は、統計上の強さの目安 (F 値 9.78) が慣例の基準 10 をわずかに下回り、論文自身が「操作変数の弱さ」を認めている
  • 分析の対象は利息のつかないステーブルコインで、高金利の局面は 2022〜2025 年の 1 回分しか含まれていない
  • ワーキングペーパーの見解は著者のもので、BIS や加盟中央銀行の見解ではない

そのうえで BIS の要約は、ステーブルコインがさらに広く使われるようになれば、銀行の資金調達や金融政策の効き方に影響しうると書いている。銀行がステーブルコインへの資金流出を警戒し、預金金利で応じれば成長は鈍る。逆に預金金利が上がらない局面では、ステーブルコインが伸びやすい。

次に見るもの

確認できる次の一点は、FRB が毎週金曜に公表する H.8 統計 (米国の商業銀行の資産・負債) の預金残高だ。米国が利下げに向かう局面に入れば、論文の推計どおりなら、預金金利の低下と同時にステーブルコインの残高の伸びが速まる。H.8 の預金残高と、USDC・USDT の発行残高の週次の動きを並べると、論文の結論が 2025 年 7 月以降のデータでも成り立つかが見えてくる。

ことば

  • BIS ワーキングペーパー — BIS の研究者が外部の研究者と書く研究論文のシリーズ。政策提言ではなく、見解は著者のもの。中央銀行の議論の材料として先に公開され、学術誌へ投稿されることが多い。
  • 準備資産で裏付けられたステーブルコイン — 発行額に見合う現金や短期の米国債を準備として持ち、1 ドルとの交換を約束するトークン。USDC や USDT がこれにあたり、多くは保有者に利息を払わない。

🔗 一次ソース

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