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📡 Signal|Standard Chartered、香港で企業向けトークン化預金を開始
Standard Chartered が香港で法人向けトークン化預金を開始。同日 HKMA は EnsembleTX の銀行間決済を中央銀行マネーで24時間化し、参加銀行は12行に。

英銀 Standard Chartered は11月2日、銀行預金をブロックチェーン上のトークンにして動かす「トークン化預金」を、香港の法人顧客向けに始めた。同じ日に香港金融管理局 (HKMA) は、銀行どうしのトークン化預金の決済を、トークン化した中央銀行マネーで24時間行えるようにしたと発表した。初期報は2日の 速報。
銀行の預金がトークンとして動いても、銀行どうしの最終的な決済が営業時間の中に閉じていれば、24時間の送金は片側だけの話になる。今回は銀行の商品と、それを支える中央銀行側の決済が同じ日にそろった。ステーブルコインとは別の、銀行預金そのものを使うデジタルマネーの道が、香港で実際の取引の段階に入った。
Standard Chartered が出したもの
プレスリリースによると、仕組みは同行独自のブロックチェーン基盤の上に作り、HKMA の EnsembleTX という基盤を使う。開発は HKMA の分散台帳技術の監督向け支援の枠組み (Supervisory Incubator for Distributed Ledger Technology) の下で進めた。
対象は企業の財務担当、銀行、投資プラットフォーム、デジタル資産の事業者だ。条件を満たす顧客は、銀行預金をトークンの形で、グループ内の資金のやりくりや銀行をまたぐ取引に使える。参加銀行の間ではトークン化預金をリアルタイムで移すことができ、銀行間の決済は卸売り型の中央銀行デジタル通貨 (wCBDC) を含む中央銀行マネーで、24時間行う。
すでに China AMC、Finloop、PantherTrade の3社が EnsembleTX の上で、トークン化預金の実際の取引と、トークン化したマネー・マーケット・ファンド (MMF) の決済を行っている。デジタル資産の事業者とつなぐため、デジタル資産の保管技術を持つ Fireblocks と提携し、HashKey も参加した。取引額や利用できる顧客の数は公表していない。
香港はグループで最初の市場で、同行は「時間をかけて、より多くの市場へ広げる」としている。
同行は2025年12月にも、Ant International と共同で作ったトークン化預金の仕組みを、Ant の財務プラットフォーム上で始めていた。香港ドル・人民元 (オフショア)・米ドルで24時間の即時送金を行うもので、最初の利用者は Ant International だった。今回はそれを、銀行をまたいで中央銀行マネーで決済する、グループの法人向けの商品に広げた形になる。
HKMA の側で変わったこと
EnsembleTX は、HKMA がトークン化の実用化を進める Project Ensemble の試行段階として、2025年11月に始まった。ただし当初、銀行間のトークン化預金の取引は、香港ドルの即時グロス決済 (RTGS) で決済していた。11月2日の発表で、これをトークン化した中央銀行マネーによる24時間の決済に切り替えた。営業時間の外でもトークン化の取引を決済できるようになる。
参加者も増えた。トークン化預金を出す銀行は、2025年の7行 (Standard Chartered の香港法人、HSBC、中国銀行 (香港) など) に、交通銀行 (香港)・中信銀行 (国際)・中国工商銀行 (亜洲)・興業銀行 香港支店・南洋商業銀行の5行が加わって12行になった。銀行以外の参加企業は、BlackRock や Franklin Templeton、香港取引所などの13社に、Finloop・HashKey・PantherTrade・京東科技など7社が加わって20社だ。
HKMA の余偉文 (Eddie Yue) 総裁は、Project Ensemble が2年で実験と試行の段階を越え、トークン化の応用を商用にする段階に移ったと述べた。証券先物委員会 (SFC) の梁鳳儀 (Julia Leung) 行政総裁は、24時間の銀行間決済が、企業の資金管理や、認可を受けたプラットフォームでのトークン化ファンドの流通取引を支えるとした。
銀行預金のトークンは何を取りにいくか
ドル建てのステーブルコイン (USDT や USDC) は、発行体が持つ準備資産を裏付けに流通する。トークン化預金は、銀行の預金そのものをトークンにしたもので、預金としての扱いと銀行の規制がそのまま付いてくる。企業の財務担当から見れば、同じ24時間の送金でも、自分の取引銀行の預金のまま動かせる点が違う。
これまで、このやり方の弱点は銀行の外の決済の時間だった。銀行の内側で24時間動いても、別の銀行への最終的な受け渡しが RTGS の稼働時間に縛られれば、夜間や週末の取引は翌営業日の決済を待つ。HKMA の切り替えは、その最後の区間を埋めるものだ。トークン化 MMF の決済に既に使われていることを考えると、最初に効くのは企業の余剰資金の運用と、グループ会社間の資金の移しかえになる。
次に見るもの
確認先は2つある。1つは HKMA の EnsembleTX の参加者一覧 (今回の発表の別紙 A・B) で、次の更新で銀行と参加企業がどこまで増えるか。もう1つは、梁鳳儀氏が触れた、認可プラットフォームでのトークン化ファンドの流通取引について SFC が出す次の具体策だ。Standard Chartered については、香港の次にどの市場を挙げるかを、次の決算発表で確かめる。
ことば
- トークン化預金 — 銀行の預金を、ブロックチェーン上のトークンの形で記録して動かすもの。中身は銀行の預金のままで、ステーブルコインのように発行体の準備資産を裏付けにするものとは違う。
- EnsembleTX — HKMA のトークン化の実用化プロジェクト Project Ensemble の試行段階として、2025年11月に始まった基盤。実際のお金を使って、トークン化預金やトークン化資産の取引を限られた参加者の間で行う。
- wCBDC — 卸売り型の中央銀行デジタル通貨。一般の人ではなく、銀行どうしの決済に使う中央銀行マネーをデジタルの形にしたもの。今回の24時間決済は、この中央銀行マネーで銀行間の受け渡しを行う。
🔗 一次ソース
- Standard Chartered「Standard Chartered launches Tokenised Deposits in Hong Kong」(2026年11月2日・グループ最初の市場・China AMC / Finloop / PantherTrade・Fireblocks と HashKey)Standard Chartered
HKMA「HKMA advances Project Ensemble pilot phase to 24/7 settlement in tokenised Central Bank Money」(2026年11月2日・RTGS からの切り替え・12行と20社・余偉文総裁と梁鳳儀氏の発言)Hong Kong Monetary Authority- HKMA 別紙 A・B (EnsembleTX の参加銀行と参加企業の一覧・2025年と2026年の参加を区別)hkma.gov.hk
Standard Chartered「Standard Chartered launches blockchain-based tokenised deposits solution」(2025年12月18日・Ant International との共同の仕組み)Standard Chartered- Decrypt の速報 (X・2026年11月2日)
