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📡 Signal|トランプ大統領、対ロ制裁法の新措置をほぼ全面免除
対ロシア制裁法の発動 2 日前、トランプ大統領が実施の大統領令で新たな制裁と 500%・100% の関税をほぼすべて免除。期限はなく、既存の制裁とイラン条項は残る。
トランプ米大統領は10月16日、議会が成立させた対ロシア制裁法「Lindsey O. Graham Sanctioning Russia and Iran Act of 2026」を実施する大統領令に署名し、同じ文書の中で、法が新たに定めた制裁と関税のほぼすべてを免除した。ロシア産品への500%の関税と、ロシア産の原油・ガスを買い続ける上位5か国への100%の関税は、法の成立から30日後の10月18日に発動するはずだった。
米ホワイトハウス「Implementing the Lindsey O. Graham Sanctioning Russia and Iran Act of 2026」(大統領令・2026年10月16日/第2節の関税設定、第4節の免除の範囲、既存の制裁に影響しない旨、期限なしを確認)The White House
免除には期限がない。大統領か国務長官が「さらなる措置が適切」と判断するまで続く。8月に上院を通過した段階で、この法案は発動を大統領の義務にする一方、免除には議会への書面の証明しか求めていなかった (8月10日の記事)。その免除の扉が、発動の2日前に使われた。
何が免除され、何が残ったか
法は9月18日に成立した (Public Law 119-111)。第1編 (Title I) がロシア向けの措置で、主な中身は次のとおりだ。
- 第102条: プーチン大統領ら政権幹部、オリガルヒ、制裁回避に使われる「影の船団」の船舶や保険会社などの資産凍結と査証停止
- 第103条: ロシア中央銀行への制裁と、ズベルバンク、VTB、ガスプロムバンクなどへの全面制裁
- 第104〜111条: 政府系企業の資産凍結、米国の取引所での上場・売買の禁止、米国人による新規投資の禁止、ロシア国債の購入禁止、エネルギー部門への投資の禁止、決済メッセージ網への制裁、ウラン関連の措置
- 第112条: ロシア産の全産品に最大500%の関税
- 第113条: 成立30日後以降にロシア産の原油・ガスを新たに買った輸入量上位5か国と、制裁回避を手助けした上位5か国に最大100%の関税
大統領令は第2節で、ロシア産品に500%、上位5か国に10月18日以降の新規購入から100%の関税を「設定」した。そのうえで第4節で、第112条と第113条の関税をすべて免除した。第102条(a)・(e)、第103〜111条も免除の対象に入り、制裁の終了に議会の審査を求める第117条も免除のリストに並ぶ。根拠は、議会に「国益にかなう」と証明すれば免除できるとする第115条で、大統領令は証明を議会に提出済みとしている。証明と報告書そのものは公開されていない。
残ったものは二つある。一つは、2026年3月24日に継続された国家緊急事態にもとづく、既存の大統領令による対ロ制裁で、大統領令は第102条(d)を免除しつつ、既存の制裁には「影響しない」と明記した。財務省外国資産管理局 (OFAC) の制裁指定は従来どおり続く。もう一つは第2編 (Title II) のイラン条項で、1996年のイラン制裁法の期限を2031年まで延ばす部分だ。第115条の免除は第1編にしか及ばない。
ウクライナとの溝、ロシアとの取引
ロイターの配信によると、トランプ氏はゼレンスキー大統領を公に批判し、ウクライナに新しい指導者が必要だと示唆している。一方でロシアとの間では、ロシア産ディーゼルの取引を進めている。トランプ氏の説明では、ロシアはまず30万トン超を即時に、11月に50万トン、その後100万トン、さらに300万トンを供給する。OFAC は10月9日、ロシア産ディーゼルの販売・輸送・輸入を認める一般許可 (General License 135) をすでに出している。
議会の側では、共和党6人を含む上院議員12人が今週、ディーゼル取引の撤回と法の発動を求める書簡を出した。ゼレンスキー氏はブリュッセルで欧州の首脳と会い、「資金がロシアに還流し始める」と述べたと英ガーディアンは伝えている。
市場から外れた二次関税のリスク
この法でいちばん影響が大きかったのは、第113条の二次関税だった。ロシア産原油の最大の買い手は中国とインドで、両国の全輸入品に最大100%の関税がかかる可能性があった。インドは二国間関係への影響を警告し、中国は「国際法上の根拠を欠く域外適用」に反対していた。米国・イスラエルとイランの戦争で原油の調達コストがすでに上がる中、買い手の側に関税をかければ、原油の流れがさらに細るおそれがあった。
大統領令は、このリスクを発動の前に外した。ただし法そのものは残る。大統領か国務長官が判断を変えれば、免除は期限を待たずに解ける設計で、関税と制裁は大統領の手元に置かれたカードになった。議会が8月に「義務」として書き込んだ関税は、10月には大統領が発動の時期を選べる手段として運用されることになった。
次に見るもの
確認できる次の一点は、連邦官報 (Federal Register) への今回の大統領令の掲載と、議会に出された第115条の証明・報告書の公開だ。報告書は非機密で出すことになっており、免除の理由がどう書かれているかで、免除を解く条件が読める。並行して、トランプ氏が11月に予定していると述べた50万トンのディーゼルの供給が、OFAC の一般許可の範囲で実際に動くかを見る。
ことば
- 二次関税 — 制裁の対象国そのものではなく、その国と取引を続ける第三国に課す関税。今回の法では、ロシア産の原油・ガスを買い続ける輸入量上位5か国の全輸入品が対象になる設計だった。
- OFAC (米財務省外国資産管理局) — 米国の経済制裁を実務で運用する部署。制裁対象の指定や、例外的に取引を認める一般許可 (General License) を出す。今回の免除の後も、既存の対ロ制裁はここが運用を続ける。
🔗 一次ソース
米ホワイトハウス「Implementing the Lindsey O. Graham Sanctioning Russia and Iran Act of 2026」(大統領令・2026年10月16日/第2節の関税設定、第4節の免除の範囲、既存の制裁に影響しない旨、期限なしを確認)The White House- 米政府印刷局 Public Law 119-111 条文 (第102〜117条・第201条)govinfo.gov
Public Law 119-111 書誌 (2026年9月18日成立)govinfo.gov- 米財務省 OFAC 一般許可 135 (ロシア産ディーゼル・2026年10月9日)ofac.treasury.gov
The Guardian (2026年10月17日)the GuardianThe Straits Times (ロイター配信・2026年10月17日)The Straits Times