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📡 Signal|スウェーデン中銀、デジタルクローナの法整備へ公的調査を提案
スウェーデンのリクスバンクが国会に書簡を送り、デジタルクローナの法整備の準備を今から始めるよう求めた。発行の是非は保留のまま。実装に 5 年、デジタルユーロの 2029 年、ステーブルコインという 3 つの理由を本文で確かめる。

スウェーデンの中央銀行リクスバンクは 10 月 15 日、国会の財政委員会に宛てた 10 月 7 日付の書簡を公表し、中銀デジタル通貨「デジタルクローナ」の導入に必要な法整備の準備を、いま始めるべきだと伝えた。準備は政府の公的調査 (インクワイアリー) の設置から始まるとしている。
リクスバンク: デジタルクローナの問題を再び焦点にする動きについての公式書簡の告知 (10 月 15 日)riksbank.se
リクスバンクは発行するかどうかについて立場を取っていない。それでも準備を急ぐ理由として、導入には実装だけで少なくとも 5 年かかること、ユーロ圏のデジタルユーロが 2029 年の一般公開を予定していること、外貨建てのステーブルコインの広がりを挙げた。決めるのは後でも、選べる状態を先に作っておくという判断だ。
LiveMakers は 10 月 16 日の速報で報道を伝えた。本稿では書簡の本文で、何を求め、何を求めていないかを確かめる。
発行の判断は保留、法整備の準備は今から
書簡は冒頭で、リクスバンク法 (2022:1568) の第 4 章 9 条により、リクスバンクは国会の同意があればデジタルの決済手段を発行できると確認したうえで、「デジタルクローナを発行すべきかどうかについて、リクスバンクは立場を取っていない」と明記した。書簡の目的は、最近の動き、導入までの時間軸、法改正の必要を国会に伝えることだとしている。
書簡の核は時間の計算にある。リクスバンクは、中銀と市場の実装作業に少なくとも 5 年かかると見積もり、そこに法改正の時間が加わると書く。そのうえで、最終的に導入を見送る、あるいはさらに先送りすると決める場合でも、必要な法的枠組みの準備をいま始めることは正当化される、と結論づけた。国会がこの作業を始めると判断すれば支援する用意があり、財政委員会が望めば、デジタルユーロの規則が固まった後に調査の付託事項の詳しい案を出すとも述べている。
書簡の付属書には、新しい法律で検討すべき論点として、利用の上限、配布の方法、官民の役割分担、オフラインでの利用、秘密の保護、相続や破産の扱い、マネーロンダリング対策と制裁が並ぶ。
背景にある 3 つの動き
書簡が準備を急ぐ根拠として挙げるのは次の動きだ。
- 安全保障。 地政学の緊張が高まるなか、決済の仕組みは国の総合防衛の一部だと位置づけ、電力網や通信網が止まったときにもオフラインで払える手段が、決済全体の耐性を高めるとした
- デジタルユーロ。 EU の規則をめぐる三者協議は 2026 年中にまとまる見込みで、欧州中央銀行 (ECB) は 2027 年後半に試験運用、2029 年に一般公開を予定している。デジタルユーロが魅力的な決済手段になれば、スウェーデン・クローナの競争力に響きうるとした
- ステーブルコイン。 発行されているステーブルコインの大半は米ドルに連動する。外貨に連動するステーブルコインが決済手段として好まれれば、国内でもクローナの利用が圧迫されうるとし、その恐れは「少なくとも短期では大きなリスクではない」が「長い目で見れば無視できない」と書いた
監視に使えない設計にすべきだという点も、書簡は明記した。
現金離れの国の中銀が、先に時計を合わせる
スウェーデンはスマートフォンの即時送金 Swish などで決済の電子化が早く進んだ国だ。その中銀が、発行の判断を保留したまま準備の開始だけを求めたことには意味がある。中銀デジタル通貨の議論は、賛否の対立として語られることが多い。リクスバンクは問いの立て方を変え、「いつ決めても間に合うか」を先に問題にした。
ユーロ圏の外にある EU 加盟国にとって、デジタルユーロの日程は自国の日程を縛る。ドル建てのステーブルコインが国境を越えて使われる時代に、自国通貨の決済手段を持つ準備をどこまで進めておくかは、スウェーデンに限らず、独自通貨を持つ中規模の国に共通の課題になる。
次に見るもの
確かめる先は、スウェーデン国会 (リクスダーグ) の財政委員会と政府の対応だ。書簡を受けて政府が公的調査の付託事項を決め、調査を設置するかどうかが最初の節目になる。もう一つは EU のデジタルユーロ規則の三者協議で、2026 年中の妥結が見込まれている。規則が確定すれば、リクスバンクは調査の詳しい案を出すと書いており、その提出が次の動きになる。
ことば
- デジタルクローナ — スウェーデンのリクスバンクが検討している中銀デジタル通貨。現金と同じく中銀が直接発行する電子的なお金で、発行には国会の同意が要る。今回、導入の判断とは別に法整備の準備を求めた。
- 公的調査 (インクワイアリー) — スウェーデンで、政府が法改正の前に設ける調査委員会。論点を整理して報告書を出し、それをもとに法案が作られる。今回の書簡は、その設置から準備を始めるべきだとした。
- デジタルユーロ — ECB が準備している中銀デジタル通貨。EU の規則を整えたうえで、2027 年後半に試験運用、2029 年の一般公開を予定している。ユーロ圏外の EU 加盟国の決済にも影響が及ぶ。
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