SNAPSHOT
BTC/USD$72,753+5.2%
ETH/USD$2,313.74+2.6%
ADA/USD$0.1965+3.8%
NIGHT/USD$0.01953+3.2%
S&P 5007,641.16-0.9%
日経平均先物65,485-0.8%
DXY98.841+0.0%
USD/JPY158.973-0.4%
Gold$4,575.50+1.9%
WTI$86.29+0.5%
米10年金利4.696%+0.9%
VIX16.01+7.5%
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ISSUE #1 · W30 / Jul 20 - Jul 26 2026

原油が先に動いた — ブレントが100ドルに触れ、金利は13.8bp乗り、暗号資産だけが動かなかった

SIPO RESEARCH12 MIN READEPOCH 6452026-07-25

LiveMakers Weekly Brief — W30 / 2026年7月20日 - 7月26日

原油が先に動いた — ブレントが100ドルに触れ、金利は13.8bp乗り、暗号資産だけが動かなかった

エグゼクティブ・サマリー

今週、値動きの起点はエネルギーだった。ブレント原油は週内に一時100ドルへ到達し、5月以来の大台回復となった。週間ではWTIが+10.64%、ブレントが+11.68%。ホルムズ海峡の通航障害に加え、紅海でサウジ籍タンカー2隻が攻撃を受けたと報じられ、供給側のリスクプレミアムが一気に価格へ乗った。

そして、この供給ショックは素直に金利へ波及した。米10年金利は4.541%から4.679%へ、週間で13.8bp上昇。ドルは強含み(DXY +0.70%)、円は163.79円まで水準を切り下げた。株式はこれを嫌気し、ナスダック総合が-2.13%と最も強く反応している。

注目すべきは、この一連の連鎖に暗号資産が加わらなかったことだ。 同じ週、BTCは+0.28%、ETHは+1.07%。ナスダックが2%超下げる地政学リスクオフの週に、暗号資産は横ばいで通過した。上場現物ビットコインETFは7月24日に7営業日続いた資金流入が途切れ、2億2,520万ドルの純流出を記録したが、週次で見れば依然として純流入圏にある。

RWAレーンでも同じ構図が観察できる。オンチェーンのRWA残高は、今週の伸びが市場全体の連動によるものではなく、個別要因によって生じていた。欧州最大級のトークン化マネー・マーケット・ファンドであるSpikoは、週次でオンチェーン残高を約93%積み増している。市場ベータではなく、配信網の拡張が数字を動かしている。

政策面では7月22日、上院共和党がCLARITY法案の改訂草案を公表した。大統領を含む連邦公職者のデジタル資産発行・報酬受領を2029年1月20日までの時限措置として禁じる倫理条項が加わったが、民主党側は現行文面では不十分との立場を崩していない。

つまり今週は、エネルギー価格が金利を動かし、金利が株を動かし、そこで連鎖が止まった週だった。そして来週水曜、7月29日にFOMCが控えている。市場は3.50〜3.75%での据え置きを見込むが、6月会合では委員のほぼ半数が年内利上げを支持しうる姿勢を示していた。そこへ供給側インフレのショックが重なった形になる。今週の最大の論点は「原油が上がったこと」ではなく、エネルギーショックが金利パスのショックへ変換されるかどうかであり、その判定は来週下される。


1. マクロレーン

1.1 今週の値動き

指標W29 (7/18)W30 (7/25)W-o-W
WTI原油$81.77$90.47+10.64%
ブレント原油$88.09$98.38+11.68%
米10年金利4.541%4.679%+13.8bp
DXY(ドル指数)100.755101.465+0.70%
USD/JPY162.353163.791+0.89%
$4,023.0$4,055.7+0.81%
S&P 5007,457.697,411.98-0.61%
ナスダック総合25,520.2424,975.82-2.13%
ダウ平均52,146.4251,947.25-0.38%
日経225先物65,10064,355-1.14%
VIX18.7718.58-1.01%

出典注記: 伝統的資産は直近の米国市場終値(2026年7月24日金曜)、暗号資産は公開日である7月25日土曜のスポット水準を参照している。原油の7月24日終値(WTI $90.47 / ブレント $98.38)は外部の市場データ提供元の値と一致することを確認済み。

1.2 供給ショックの中身

今週の原油高は、需要側の強さではなく供給側の遮断リスクによって生じている。この区別は重要だ。需要主導の原油高は景気の強さを示すため株式にとって必ずしも悪材料ではないが、供給主導の原油高は「コストだけが上がる」ため、株式と債券の両方に対して逆風になる。今週の値動きはきれいに後者の型をなぞった。

材料は複数が重なった。ホルムズ海峡の通航が断続的に阻害される状況が続くなか、サウジアラビアにとって代替輸出ルートにあたる紅海で、同国関連のタンカー2隻がイラン支援勢力の攻撃を受けたと報じられた。代替経路が同時に脅かされた点が、今回のリスクプレミアムを押し上げた実質的な理由である。米中央軍による対イラン攻撃は、報道ベースで13夜連続に達した。

ただし週末にかけて価格は反落している。パキスタンが中国の支援を受けて米国・イラン間の交渉再開を模索しているとの報道を受け、金曜のブレントは-2.29%、WTIは-1.87%下げた。外交の可能性が価格に織り込まれる速度は、供給障害が織り込まれる速度と同じくらい速い。 今回のリスクプレミアムは構造的なものではなく、ヘッドラインに対して可逆的だと市場が判断していることを示す。

1.3 金利・為替の反応

10年金利の13.8bp上昇は、今週のエネルギー価格の動きに対する反応として素直だ。注目すべきは、これがインフレ期待の再上昇という経路をたどった場合、金融政策の自由度を直接削る点にある。

ドル高(DXY +0.70%)と円安(163.79円)は同時に進んだ。円の水準は、日本にとって輸入エネルギーコストが二重に効くことを意味する。原油がドル建てで11%上がり、そのドルが対円でさらに0.89%上がった週は、円建ての実効エネルギーコストが12%以上上昇した週だということになる。

金は+0.81%と小幅高にとどまった。地政学リスクの高まりに対して金の反応が限定的だった点は、今回の動きが「有事の資金逃避」より「供給制約の価格転嫁」として受け止められたことを示唆する。


2. 暗号資産レーン

2.1 今週の値動き

資産W29 (7/18)W30 (7/25)W-o-W
BTC$63,926$64,105+0.28%
ETH$1,837.91$1,857.60+1.07%
SOL$74.87$73.78-1.46%
XRP$1.087$1.090+0.28%
ADA$0.1656$0.16354-1.23%
COIN(Coinbase株)$157.12$158.29+0.74%

2.2 「動かなかった」ことの意味

今週の暗号資産で最も情報量が多いのは、価格そのものではなく価格が動かなかったという事実である。

ナスダックが-2.13%下げた週に、BTCは+0.28%、ETHは+1.07%だった。過去数年、暗号資産は高ベータのテック株として振る舞う局面が長く続いてきた。その関係が今週は成立していない。

ただし、ここで結論を急ぐべきではない。1週間の非連動は、レジームの変化ではなく単なる分散のブレでもありうる。 実際、7月24日には地政学的緊張の再燃を受けてBTCが一時6万5,000ドルを割り込む場面があり、同日の上場現物ビットコインETFは2億2,520万ドルの純流出となって7営業日続いた流入が途切れている。連動が完全に切れていたわけではない。

それでも週間の集計では、上場現物ビットコインETFは純流入を維持した。7月24日までの週次で約2億7,400万ドルの純流入である。その前段では7月14日から20日にかけて複合体全体で7億2,700万ドルの純流入があり、うちブラックロックのIBITが5億610万ドル(69.6%)を占めていた。流入の集中度が高い状態が続いている点は、この資金が広い個人層の買いではなく、特定の配分判断によって動いていることを示す。

2.3 政策:CLARITY法案の改訂草案

7月22日、上院共和党がCLARITY法案(デジタル資産の市場構造法案)の改訂草案を公表した。

改訂の中心は倫理条項である。大統領・副大統領・連邦議員・連邦裁判官を含む対象公職者とその配偶者に対し、在職中のデジタル資産の発行・スポンサーによる報酬取得を禁じる。対象者は暗号資産関連の保有・投資を売却するか、自ら支配しないブラインド・トラストに移すかを求められる。この制限には2029年1月20日という期限が設定されており、恒久措置ではない。司法省に民事執行権限が与えられる点も新しい。草案はBlockchain Regulatory Certainty Act(BRCA)とステーブルコイン条項を維持している。

法案を主導するCynthia Lummis上院議員は、この文言を大統領との妥協と位置づけている。一方、民主党側は「現行の共和党提案文面は不十分であり、公職者の倫理、消費者保護、不正金融、利益相反、市場の健全性に関する規定は強化されなければならない」との声明を出した。

日程が実質的な制約になっている。 法案は2026年6月1日に上院の議事日程(General Orders, Calendar No. 423)に置かれ、本会議での審議自体は可能な状態にある。しかし議事妨害を打ち切るために必要な民主党側の賛成票は、現時点で確保されていない。8月の休会が迫るなか、市場の予測は法案成立の確率を大きく割り引いた水準で推移してきた。


3. RWAレーン

3.1 オンチェーンRWA残高

公開集計ベースで、RWAカテゴリのオンチェーン残高は約266億ドル(153プロトコル)である。上位の内訳は以下の通り。

プロトコル残高7日変化
BlackRock BUIDL$3.44B+0.12%
Circle USYC$3.00B+1.55%
Tether Gold$2.89B+0.93%
Ondo Yield Assets$2.57B+0.15%
Spiko$2.26B+92.65%
Paxos Gold$1.80B-0.02%
Centrifuge Protocol$1.63B-0.02%
Ondo Global Markets$0.94B-0.17%
Invesco USTB$0.73B+9.62%

出典注記: 上表はオンチェーン残高の公開集計(RWAカテゴリ、RWAレンディングを除く)を7月25日に取得したもの。トークン化国債に特化した別系統の集計では、7月10日に352億ドルのピークを付けた後346.7億ドルへ後退したと報じられており、対象範囲と計上方法が異なるため水準は一致しない。両者は別々の物差しとして扱う必要がある。

3.2 今週の伸びは市場ベータではない

RWAレーンで今週最も大きく動いたのはSpikoである。フランスの金融当局の監督下にある欧州のトークン化マネー・マーケット・ファンドで、オンチェーン残高を1週間で約93%積み増した。

この伸びは価格変動によるものではない。同社は運用資産を2026年1月に10億ドル、年央までに約20億ドルへ倍増させており、その過程でSolanaへのファンド展開と、EU規制下ファンドとして初となるステーブルコインによる購入受付(Coinbase Paymentsとの統合)を進めてきた。つまり残高の増加は、市場全体の資金流入ではなく、配信チャネルの追加によって生じている。

Invesco USTBの+9.62%も同じ性格を持つ。一方、BUIDL(+0.12%)、Ondo Yield Assets(+0.15%)、Centrifuge(-0.02%)といった既存の大口は、ほぼ横ばいで週を終えた。

この対比は重要だ。RWAの残高成長は、いま「市場が資金を配分している」というより「発行体が新しい経路を開いた分だけ増える」段階にある。RWA残高を市場センチメントの指標として読むと誤読する。読むべきは、どの発行体がどのチェーン・どの決済手段に接続したかという配線の変化である。

3.3 プライベート市場上場銘柄

オルタナティブ運用会社の株価は、今週明確に分かれた。

銘柄7/177/24W-o-W
Blackstone (BX)$126.91$130.00+2.43%
Apollo (APO)$120.47$122.61+1.78%
Ares (ARES)$125.68$126.51+0.66%
KKR$100.94$99.36-1.57%
StepStone (STEP)$43.55$42.61-2.16%
Hamilton Lane (HLNE)$85.85$83.16-3.13%

ナスダックが-2.13%だった週に、BXが+2.43%、APOが+1.78%と上昇した点は目を引く。一方でHLNE(-3.13%)、STEP(-2.16%)といった、より私募セカンダリー・投資家向けソリューション寄りの銘柄は下げた。大型の資金調達・与信プラットフォームと、配分仲介モデルとの間で評価が分かれた週と読める。金利が上がる局面でプライベート・クレジット側の収益期待が相対的に評価されやすいことと整合的だが、1週間の値動きから構造を断定するには早い。

3.4 制度側の進捗

DTCCが50社超の主要金融機関とトークン化証券取引のパイロットを進めており、参加にはBlackRock、Goldman Sachs、JPMorgan、Ripple Primeが含まれる。商用ローンチは2026年10月の可能性が報じられている。ここは今後、RWAを測る主要な物差しが「発行残高」から「決済インフラの稼働」へ移る分岐点になりうる。継続監視項目として置く。


4. レーン間シグナル

ここが今週の本題である。3つのレーンを別々に見ると「原油高・株安・暗号資産横ばい・RWA個別要因」という散らかった週に見える。しかし、レーンをまたいで並べると1本の線が通る。

4.1 連鎖はどこで止まったか

今週の因果は次の順に進んだ。

供給ショック(エネルギー) → インフレ期待 → 金利(+13.8bp) → 株式(ナスダック -2.13%)

そしてこの連鎖は、暗号資産の手前で止まった。BTC +0.28%。

一般に、金利上昇は無利回り資産にとって逆風とされる。今週その逆風は株式には効いたが、暗号資産には効いていない。理由の候補は2つある。ひとつは、暗号資産が既に十分に売られた水準にあり、マクロ変数に対する感応度が一時的に落ちている可能性。もうひとつは、今週の暗号資産の買い手が、マクロ配分とは別の判断軸で動いていた可能性である。

ETFの流入構造は後者を支持する。7月14日から20日の7億2,700万ドルの純流入のうち、69.6%が単一の商品に集中していた。これはマクロ環境に反応する分散した資金の形ではない。 特定の配分主体が、マクロとは独立した時間軸で執行している形に近い。

4.2 RWAが示す第二の証拠

同じことがRWAレーンからも言える。金利が13.8bp上がった週、トークン化国債は理屈の上では相対的に魅力を増すはずだった。しかし既存の大口ファンドの残高はほぼ動いていない(BUIDL +0.12%、Ondo Yield Assets +0.15%)。動いたのは、新しい配信経路を開いた発行体だけだった(Spiko +92.65%、Invesco USTB +9.62%)。

つまり暗号資産レーンとRWAレーンは、別の角度から同じことを示している — 今週この2つのレーンに入った資金は、マクロに対する反応ではなかった。 暗号資産側では特定主体の配分判断として、RWA側では発行体の配線拡張として現れた。どちらも「金利がこう動いたから」という理由では説明されない。

4.3 だから何を見るか

この観察が正しければ、実践的な含意は次のようになる。

第一に、今週の暗号資産の底堅さを「マクロ耐性の獲得」と読むのは早い。 マクロと無関係に動く資金が支えた週であって、マクロに耐えた週ではない。この2つは、次にマクロが本格的に動いたときに全く違う結果を生む。

第二に、RWA残高を強気のセンチメント指標として使わない。 今週の実データが示す通り、残高は発行体の接続作業に対して反応しており、市場の需要には反応していない。センチメントを読みたいなら、既存大口ファンドの残高変化のほうが素直な指標になる。そして今週それはほぼゼロだった。

第三に、この構図の検証は来週すぐに来る。7月29日のFOMCは、エネルギー由来のインフレ圧力に対して金融政策がどう身構えるかを示す最初の公式な機会になる。もし金利パスが今週の原油を織り込んで動き、そのとき暗号資産が今週と同じように無反応でいられるなら、非連動の主張は一段強くなる。逆に、そこで揃って動くなら、今週の静けさは単に材料が届いていなかっただけということになる。


5. リスク・ダイジェスト

次元状態今週の変化読み
地政学⬆ 上昇ホルムズ海峡の通航障害に紅海の代替経路への攻撃が重なった。代替経路が同時に断たれる構図が最大のリスク要因。ただし週末の交渉再開報道への価格反応が示す通り、現在のプレミアムは可逆的
市場中〜高⬆ やや上昇エネルギー主導のコストプッシュは株式・債券の同時逆風になる。VIXは18.58と落ち着いているが、これは今週の下げが秩序立っていたことを示すにすぎない
規制→ 横ばいCLARITY法案は改訂草案が出て前進したが、必要な票は未確保。8月休会までの日程が実質的な期限として機能する
技術低〜中→ 横ばい今週、主要チェーンに重大な障害の報告はない。RWA側では発行体のマルチチェーン展開が進み、その分だけブリッジ・決済経路への依存が増える構造的な論点は残る

6. 来週の注目

  1. 7月29日 FOMC(最重要) — 市場予想は3.50〜3.75%での据え置き。焦点は決定そのものではなく、今週のエネルギーショックを政策文言がどう扱うかにある。6月会合では委員のほぼ半数が年内利上げを支持しうる姿勢を示していた。Warsh議長は7月1日のシントラで「物価は高すぎる」と述べており、フォワードガイダンスを絞る方針を明言している。今週の原油が来週の金利パスへ変換されるかどうかが、この号の主題の答え合わせになる。

  2. 原油と外交の綱引き — パキスタン・中国を経由した米イラン交渉の再開が実際に動くかどうか。動けばリスクプレミアムは急速に剥落し、動かなければ紅海・ホルムズの二重の遮断リスクが価格に残る。どちらに転んでも週内で決着しない可能性が高い。

  3. CLARITY法案の上院日程 — 8月休会前に本会議へ持ち込めるか。民主党側が挙げた5論点(倫理、消費者保護、不正金融、利益相反、市場の健全性)のうち、どれが実際に修正されるかが票の行方を決める。

  4. ETF資金フローの連続性 — 7月24日に途切れた流入が単日の反応だったのか、地政学リスクを受けた継続的な引き揚げの始まりなのかは、来週の数日で判別できる。集中度(単一商品への偏り)が続くかどうかも併せて見る。

  5. RWAの配線拡張 — DTCCのパイロットと、Spikoに続く発行体のマルチチェーン展開。10月の商用ローンチ観測に向けて、残高ではなく接続先の増加を追う。

監視リスト(今週は本文で扱わなかったが追跡中): トークン化株式のデータソース整備状況 / 円安が日本の輸入コストとエネルギー政策に与える影響 / プライベート・クレジットの与信環境 / AI関連設備投資サイクルと電力需要の接点。


本レポートは情報提供・リサーチ目的のみで作成されており、投資助言ではありません。記載された数値は各出典の取得時点のものであり、市場環境の変化により変動します。

一次ソース・出典