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📡 Signal|マレーシア中銀、トークン化債券・スクークの登録基盤 SSDS+ を稼働
マレーシア中銀が、トークン化した債券とスクークの発行・登録・保管を担う基盤 SSDS+ を自前で構築。代金は中銀マネーで 24 時間決済し、個人向け債券にも対応できるとする。

マレーシア中央銀行 (Bank Negara Malaysia・BNM) は 10 月 20 日、トークン化した債券とスクーク (イスラム債) の発行・登録・保管を担う新しい基盤「SSDS+」を立ち上げた。中銀が自前でクラウドと分散台帳の技術を使って作り、代金の支払いは 24 時間動く中銀の決済システム RENTAS+ で、中銀マネーのまま受け渡す。
8 月にマレーシアの民間銀行が行ったトークン化スクークの試験は、民間の銀行預金で代金を払った。今回は、国債と社債の登録を担う中銀の公的なインフラそのものを、トークン化に対応させた。民間の試験に続く、二段目の動きになる。
SSDS+ が担うもの
BNM の発表によると、SSDS+ は既存の SSDS (Scripless Securities Depository System・ペーパーレスの証券保管振替の仕組み) を土台にした次世代版だ。SSDS はマレーシアのホールセール (金融機関どうし) の市場で、国債や社債の中央保管機関の役割を担ってきた。
- 何を: トークン化した債券とスクークの発行、預託、保管
- どう作ったか: BNM が社内で開発。クラウドと分散台帳の技術を使う
- 誰向けに: ホールセールの発行に対応し、加えて国と企業が個人向けに出すトークン化債券にも対応できる状態にある
- 代金の受け渡し: SSDS+ が証券の所有と移転を記録し、RENTAS+ が債券の購入代金を中銀マネーで決済する。RENTAS+ は 24 時間の決済サービスを提供する
アブドゥル・ラシード・ガフール総裁は「SSDS+ の立ち上げは、マレーシアの金融市場インフラの近代化における大きな節目だ」と述べ、SSDS+ と RENTAS+ の組み合わせが、証券と決済の新しい使い方の土台になるとした。
最初の発行の日付、参加する金融機関や発行体の名前は、発表には書かれていない。今回立ち上がったのは器であって、取引の実績はこれから積まれる。
8 月の試験は銀行マネー、今回は中銀マネー
マレーシアでは 8 月 27 日、CIMB グループのイスラム銀行部門 CIMB Islamic が、総額 16.8 億リンギのスクークのうち 13.8 億リンギ分をトークン化して発行し、12 の機関投資家が引き受けた。代金はトークン化預金、つまりデジタルの形にした CIMB の銀行預金で決済した。BNM が運営する試験環境「デジタル資産イノベーションハブ」の中の試みだった。
今回の SSDS+ は、決済の側が違う。民間銀行の預金ではなく、金融機関が中銀に置いている当座の資金、つまり中銀マネーで代金を払う。証券の記録も、民間の台帳ではなく中銀の保管振替の仕組みに載る。
債券の決済で、証券の受け渡しと代金の支払いを同時に確実に行うことは、市場の安全の基本になる。中銀マネーで払えば、決済に使うお金の発行元が破綻する心配がない。トークン化で記録の仕組みを新しくしても、お金の側は一番安全なものを使う、という設計だ。
個人向け債券に開いた扉
もう一点、BNM が「個人向けのトークン化債券にも対応できる」と書いたことには意味がある。国債や社債は、ふだん金融機関や機関投資家の間でまとまった単位で売買され、個人が直接触れる機会は限られる。
トークン化した債券は、小さな単位に分けて記録しやすい。個人が少額で国債やスクークを持つ経路を、中銀の公的な基盤の上に作れることになる。スクークを個人に届ける器を中銀自身が持つことは、民間の暗号資産の基盤に頼らずに同じことを実現する選択肢になる。
次に見るもの
確認先は BNM のプレスリリースの一覧で、SSDS+ での最初の発行案件の公表を待つ。発行体が政府か企業か、ホールセール向けか個人向けかで、この基盤の使われ方の方向が見えてくる。あわせて、CIMB の試験で使ったトークン化預金と SSDS+ がどうつながるか (銀行マネーと中銀マネーの両方で決済できるようにするのか) も、次の発表の焦点になる。
第一報は LiveMakers の 10 月 21 日の速報 で伝えた。
ことば
- スクーク — イスラム法 (シャリーア) に沿って、利子を受け取らずに資産からの収益を投資家に配る形の債券。今回の SSDS+ は債券と並べてスクークを対象に明記している。
- 中銀マネー — 中央銀行が発行するお金。金融機関が中銀に置く当座預金がこれにあたり、民間銀行の預金 (銀行マネー) と違って、発行元が破綻する心配がない。大口の決済の最終的な受け渡しに使われる。
- トークン化預金 — 銀行の預金を分散台帳の上で動かせるようにデジタルの形にしたもの。中身は発行した銀行の預金そのもので、ステーブルコインと違い銀行の預金保護や規制の枠内にある。
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