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📡 Signal|ECB、トークン化資産を中央銀行マネーで決済する「Pontes」を稼働
ECB が 9 月 21 日、トークン化資産の卸売取引を中央銀行マネーで決済する Pontes を初期稼働。13 金融機関と 4 つの DLT 基盤が初日から参加した。
欧州中央銀行 (ECB) は 9 月 21 日、トークン化された資産の卸売取引を中央銀行マネーで決済する仕組み「Pontes」の初期稼働を始めた。初日から Deutsche Bank・Santander・Société Générale を含む 13 の金融機関と、Clearstream など 4 つの分散型台帳 (DLT) 基盤が参加している。
ECB プレスリリース「Eurosystem brings central bank money to tokenised finance」(2026-09-21・参加 13 行 + 4 基盤)European Central Bank
トークン化証券の代金を何で払うか。米国が民間のステーブルコインに法的な枠を与える道を選んだのに対し、ユーロ圏は中央銀行マネーという公的な決済手段を DLT の世界へ直接つないだ。個人向けのデジタルユーロとは別の、銀行と市場インフラのための線路である。
何がつながったのか
ECB の公式ページによると、Pontes は民間の DLT 基盤と、ユーロシステムの決済基盤 TARGET Services を結ぶ橋渡し役だ。証券側は民間の台帳に残したまま、代金側だけを中央銀行マネーで決済できる。
決済の方式は 2 つある。ユーロシステムの DLT 上で現金トークンを使う方式と、即時グロス決済システムの T2 で決済する方式だ。どちらを使っても、決済が最終的に確定するのは T2 で取引が完了した時点になる。証券の受け渡しと代金の支払いは Hash-Link というプロトコルで同期させる。片方だけが動いてもう片方が止まる事態を防ぐ「全部か、ゼロか」の決済 (DvP) を、台帳をまたいで成立させる設計だ。
初日の参加者は ECB のプレスリリースに名前が並んでいる。
- 金融機関: ABANCA、BayernLB、Caisse des Dépôts et Consignations、Cecabank、Deutsche Bank、Deka Bank、DZ Bank、欧州投資銀行 (EIB)、KfW、Memo Bank、NRW.BANK、Santander、Société Générale (ドイツ連邦銀行も市場参加者の立場で参加)
- DLT 基盤の運営者: Axiology、Cashlink、Clearstream、SWIAT
独仏西の大手行に加え、KfW・EIB・CDC といった公的金融機関が初日から並んでいる。公的機関の債券発行は、トークン化の最初の本格的な用途になりやすい。
2024 年の実験から、予定どおりの着地
ユーロシステムは 2024 年 5 月から 11 月に、64 の参加者と 50 件を超える試験・実験を行い、200 件超・総額 15 億 9000 万ユーロの取引を処理した。この結果を受けて ECB 理事会は 2025 年 7 月 1 日、短期の Pontes と長期の Appia という二本立ての方針を決め、「2026 年第 3 四半期末までに Pontes のパイロットを始める」と公表していた。
9 月 21 日の稼働は、この約束の期限の 9 日前にあたる。今回動いたのは中核機能だけで、機能と運用時間は段階的に広げ、完全な実装は 2028 年を見込む。長期側の Appia は、欧州全体で統合されたトークン化金融の設計図を 2028 年に示す予定だ。
ECB 理事の Piero Cipollone は「Pontes は、中央銀行マネーの安定と信頼を欧州のトークン化金融にもたらす」と述べた。
民間の決済手段に任せないという選択
トークン化証券の決済で最も厄介なのは、証券ではなく代金の側だ。代金を民間のステーブルコインや銀行の預金トークンで払うと、その発行体の信用リスクが決済に入り込む。発行体が揺らげば、証券は渡ったのに受け取った代金の価値が揺らぐ。
米国は 2025 年 7 月に GENIUS 法を成立させ、民間のドル建てステーブルコインに法的な枠を与えた。決済手段を民間に委ねつつ、発行体を規制で縛る設計である。ユーロ圏の Pontes は反対側から入った。卸売の決済には中央銀行マネーを使えるようにし、民間の台帳はその上で競争させる。
どちらが正しいかは、まだ決着していない。ただ、ユーロ建てステーブルコインの流通量がドル建てに比べて小さい現状では、欧州にとって民間任せはドル建て決済への依存を深める選択肢でもあった。Pontes はその穴を公的なレールで先に埋めにいった一手と読める。参加者の顔ぶれが示すとおり、欧州のトークン化は当面、この公的な線路の上で進むことになる。
次に見るもの
- 参加者リストの伸び: ECB の Pontes 公式ページとプレスリリースで、13 行・4 基盤からどこまで増えるか。初日にいない仏大手 (BNP Paribas など) や他国の CSD が加わるかが最初の目安になる
- 運用時間と機能の拡張: 段階的な拡張の最初の告知が、Pontes 公式ページの更新として出る。運用時間がどこまで延び、どの機能から加わるか
- Appia の設計図 (2028 年): Appia の資料が示す長期の姿が、Pontes の拡張にどう反映されるか
ことば
- TARGET Services — ユーロシステムが運営する決済インフラ群の総称。大口資金決済の T2 と証券決済の T2S などを含む。Pontes はこの既存の中央銀行インフラと民間の台帳をつなぐ接続口にあたる。
- DvP (Delivery versus Payment) — 証券の受け渡しと代金の支払いを同時に行い、片方だけが実行されるのを防ぐ決済の原則。台帳が別々になるトークン化の世界では、これを台帳をまたいで保証することが課題になる。
- Appia — Pontes と並ぶ ECB のもう一つの取り組み。欧州で統合されたトークン化金融の長期的な姿を検討し、2028 年に設計図を示す予定。Pontes が今すぐ使える接続、Appia が将来の全体設計という役割分担だ。
🔗 一次ソース
ECB プレスリリース「Eurosystem brings central bank money to tokenised finance」(2026-09-21・参加 13 行 + 4 基盤)European Central Bank
ECB「Pontes」公式ページ (初期稼働 2026-09-21・決済方式・参加資格)European Central Bank
ECB プレスリリース (2025-07-01・Pontes/Appia の二本立て方針と 2026 年第 3 四半期末のパイロット目標)European Central Bank
ECB「Exploratory work on new technologies for wholesale central bank money settlement」(2024 年の試験・64 参加者)European Central Bank
ECB「Appia」(2028 年の設計図)European Central Bank