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📡 Signal|FRB が測った「ChatGPT 後のコーダー雇用」は年 3% の減速——消えたのは雇用ではなく、伸びしろだ

ChatGPT 登場後、コーダーの雇用は減っていない。減ったのは伸び率だ。連邦準備制度理事会の推計で押し下げ幅は年およそ 3%。そして全米のコーダーの 3 割超は、シリコンバレーではなく受託開発の現場にいる。

LiveMakers Editorial Desk

📡 Signal|FRB が測った「ChatGPT 後のコーダー雇用」は年 3% の減速——消えたのは雇用ではなく、伸びしろだ

「AI がホワイトカラーの職を消している」という語り口は、もう前提のように扱われている。だが連邦準備制度理事会(FRB)理事会のエコノミスト 2 人が公開データで測った結果は、その語り口と噛み合わない。ChatGPT の登場後、コーダーの雇用は減っていない。減ったのは伸び率で、産業側の減速を差し引いたうえでの押し下げ幅は年およそ 3%。崩壊ではなく、減速だ。

AI and Coder Employment: Compiling the Evidence(Leland D. Crane / Paul E. Soto・連邦準備制度理事会・FEDS 2026-018・2026年3月20日。本文で ChatGPT 前の年平均成長率 4.8%、基準推計 -3.23、コーダー約580万人→約529万人の概算を確認)federalreserve.gov

この差は言葉の綾ではない。崩壊なら「失業した人をどこへ移すか」が問題になり、減速なら「これから入ってくる人の入り口がどれだけ細ったか」が問題になる。見るべき指標も、打つ手も変わる。

一次データが示すのは、減速であって崩壊ではない

論文は Leland D. Crane 氏と Paul E. Soto 氏(いずれも連邦準備制度理事会)による "AI and Coder Employment: Compiling the Evidence"(FEDS 2026-018、2026 年 3 月 20 日)。職業データベース O*NET でプログラミングが重要技能となる職業を特定し、労働力調査(CPS)の月次雇用を追い、2022 年 11 月の ChatGPT 公開を境にトレンドが変わったかを検分している。

数字はこうだ。ChatGPT 前、コーダー雇用の年平均成長率は約 4.8% だった。同じ期間の民間雇用全体は約 1.3%。コーダーは全体の 3 倍以上の速さで増えていた。

ChatGPT 後、その伸びが落ちた。産業レベルの変動を制御した推計で、押し下げ幅は -3% から -4% の範囲に固まり、基準となる推計値は -3.23。著者たちは「職業固有のショックが、ChatGPT 以降、コーダー雇用の成長率を(保守的に見て)年約 3% 押し下げてきた」と書く。

ただし雇用そのものは増え続けている。論文は「生データはコーダー雇用が崩壊しつつあるという見方を支持しない」と明言する。著者たち自身が脚注で置いた概算はこうだ。2022 年 11 月の非農業部門雇用は 1 億 5,800 万人、コーダーの構成比を 3.7% とすれば約 580 万人。そこから年 3% の押し下げが 3 年続けば約 529 万人が残る。差は約 50 万人。

その 50 万人が失業者として現れるわけではない、とも著者たちは書いている。「その労働者の多くは他の職業に吸収されただろう」。つまりこの数字は、失われた職の数ではなく、起こらなかった採用の規模だ。

「業界が減速しただけ」という説明を、著者たちが自分で点検している

コーダー雇用の鈍化には、AI を持ち出さなくても済む説明がある。ソフトウェア業界そのものが 2022 年以降に採用を絞った、という説明だ。

論文の中核は、この対抗説明を潰す作業にある。著者たちは「職業固有のショックが無かった場合のコーダー雇用」を反実仮想として組み立てた。産業ごとの雇用成長率を、コーダーがどの産業に何割いるかで加重して足し上げる。産業全体が伸び縮みするのに合わせてコーダーが同じ比率のまま増減したら、雇用はどうなっていたか——それが反実仮想の値になる。

前提はこうだ。産業レベルのショック(製品需要や生産性の変化)は、その産業の雇用を職種構成を変えずに丸ごと拡大・縮小させる。一方で職業固有のショックは、産業の中の職種の比率そのものを動かす。だから両者は分離できる。

結果は、都合よく片方に寄ってはいない。情報通信部門の中で反実仮想と実績を比べると、鈍化の一部は確かに産業レベルの動きで説明がつく。ただし「相当な部分」は職業固有の要因に帰属したまま残る、と論文は書く。

頑健性の確認も並んでいる。コロナ期を落としても、2022 年と 2023 年を落としても、後述の 1 業種を丸ごと除いても、産業分類の改定を跨いでも、結論は質的に変わらない。プラセボ群での検証も置かれている。

典型的なコーダーは、シリコンバレーにいない

この論文には、AI とは別の理由で見る価値のある事実がある。コーダーがどこで働いているか、という分布だ。

コーダーは幅広い産業に散らばっている。にもかかわらず、「計算機システム設計および関連サービス」(NAICS 5415)という 1 業種だけで、全米のコーダー雇用の 3 割超を占める。しかもこの業種は、従業員の 4 割超がコーダーだ。論文の言葉を借りれば、典型的なコーダーはシリコンバレーのテック企業の社員でも、スタートアップの一員でも、他業種の社内開発者でもなく、受託ソフトウェア開発をしている人である。

そしてこの業種は、テック業界の代理指標としてよく使われる「情報通信部門」(NAICS 51)には含まれない。テック株の値動きやテック大手の人員削減報道を見ているだけでは、コーダー雇用の多数派が視野に入らないということだ。

セントルイス連銀の FRED Blog が 2026 年 8 月 20 日にこの論文を取り上げたときも、グラフの主役はこの業種だった。1991 年から 2025 年までの労働統計局の年次雇用データで、非農業部門全体の前年比とこの業種の前年比を重ねると、業種側が全体を下回った局面は 2 つしかない。ひとつは 2002〜2003 年——1990 年代末のドットコム期の積み上がりの反動と 2001 年の景気後退。もうひとつが 2022 年以降だ。

著者たち自身が置いた留保

論文は結論を大きく見せていない。むしろ留保を先に並べている。

理論的な向きが定まっていない。コーディング支援ツールは、生産において補完財に見える——コーダーの限界生産物を引き上げ、同じ仕事を速く終わらせる。もしコーディング需要が非弾力的なら、少ない人数で需要を満たせてしまい雇用は減る。逆に弾力的なら、安くなったコーディングがより広い市場に届き雇用は増えうる。「事前にどちらの世界にいるのかは明らかでない」と論文は書く。後者は短期より長期に効きやすい、とも。

推計の外側も広い。AI が労働需要全体や価格に及ぼす影響は制御されていない。職業ごとの業務構成が変わっていれば、コーダーという括りへの影響を過大に見積もる可能性がある。生産性上昇が全労働者の需要を押し上げる一般均衡の経路も扱えていない。

測定尺度そのものも揺れている。研究界が使う AI 露出度指標は主に 2 系統あるが、両者を突き合わせると無視できない不一致が出る——ただしどちらも、コーダーが最も露出度の高い職業群に入る点では一致する。

隣接研究も一枚岩ではない。ある研究は生成 AI 利用が賃金・雇用にほとんど痕跡を残していないとし、別の研究は最も露出した職業の中で若年層の雇用が年長層に比べて落ちていると報告する。今回の論文は、職業全体の雇用が増えているか減っているかという、そのひとつ手前の問いを扱っている。

次に見るもの

・押し下げ幅がさらに深まるか、-3% 前後で下げ止まるか(労働力調査の更新ごとに更新される)
・鈍化が「計算機システム設計および関連サービス」の外側、つまり受託開発以外の現場へ広がるか
・吸収先が観測できるか——起こらなかった採用の分だけ、人はどの職業へ流れたのか
・露出度指標どうしの不一致が縮むか。縮まないなら、どの指標を使うかで結論が変わり続ける

崩壊と減速は、同じ向きを指していても、必要な手当てが違う。今のところ一次データが言っているのは、後者だ。

🔗 一次ソース

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