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📡 Signal|米財務省、イランの影の船団を支えた法律事務所に制裁
米財務省が10月21日、イランの影の船団の船主会社を登記してきたパナマとギリシャの法律事務所 Karnakis and Karnakis を制裁対象に指定。海運代理店 2 社と船 9 隻も網に入り、FinCEN はギリシャの銀行に初の行政召喚状を出した。

米財務省は10月21日、パナマとギリシャに拠点を置く法律事務所 Karnakis and Karnakis を、イランの石油・石油化学分野を対象とする大統領令 13902 号にもとづく制裁の対象に指定した。同じ発表で、同事務所の所有者と従業員の計 5 人、ギリシャ系の船舶管理会社、シンガポールとドバイの海運代理店 2 社、貨物船など 9 隻も制裁の網に入った。
今回の標的は、船を持つ会社を作る側だ。8月24日に始まった「Operation Economic Outcast (経済的追放作戦)」で、財務省はイランの原油や石油化学製品を運ぶ影の船団 (シャドーフリート) の、法務と港の裏方まで指定を広げた。
10月15日にイラクの民間銀行 IDB を指定した措置 (10月16日の記事) は、イランの資金がドルの決済網に入る入口を塞ぐものだった。今回、財務省が手を入れたのは、貨物を運ぶ会社の登記簿のほうだ。
法律事務所が作っていた「船主の会社」
財務省の発表によると、Karnakis and Karnakis は長年、法律業務を使って影の船団の船を所有する海運会社を登記してきた。それらの船は、数億ドル規模のイラン産の鉄鋼・石油・石油化学製品を運んだとされる。同事務所が過去に設立した Skyros Maritime、Corfu Maritime、Elias Shipping などの会社は、すでにイラン産石油の取引に関わったとして制裁対象に指定されている。
Elias Shipping は、イラン産原油を数百万バレル売ってイラン革命防衛隊の対外部門 (コッズ部隊) とフーシ派に収益をもたらしたシリアの Al-Qatirji 社の隠れ蓑だったという。財務省は、同事務所がイランの液化石油ガス (LPG) の大物とされる Seyed Asadoollah Emamjomeh 氏の海運事業でも、多くの会社の登記代理人を務めたと指摘した。
手口として発表が挙げたのは、事務所の従業員を登記した会社の取締役や役員に据え、本当の所有者 (実質的支配者) を見えなくすることだ。制裁対象になった 5 人は、事務所を創業・所有するパナマとギリシャの二重国籍の 2 人と、従業員 3 人である。財務省は発表で、制裁逃れに欠かせないサービスとして、ペーパーカンパニーやフロント企業を作る法律事務所と会社設立の代行業者を作戦の対象にしていると明記した。
船の管理会社と、港の代理店
船の側では、Karnakis and Karnakis が登記代理人を務める Roxette Maritime Shipping and Trading が指定された。同社はパナマ船籍の貨物船 7 隻 (ANEMOS・GLORIS・PRIDE・DESTINY・FLAMINGO 1・HARMONY・PRINCE) を運航・管理しており、うち 3 隻はこの 1 年でイラン産の石油化学製品や鉄鋼製品を運んだという。7 隻はすべて凍結資産に指定された。
港の側では、海運代理店 2 社が対象になった。
- Amigoz Singapore (シンガポール): イランの軍事組織に数十億ドル相当の商品を割り当てるフロント企業網を束ねる Sepehr Energy が管理した軽質原油の積み荷で、代理店を務めた。影の船団の船 ZIXUAN への燃料補給も手がけたとされる
- Whales Shipping Line (ドバイ): イラン産石油化学製品の購入を手配した制裁対象のフロント企業 Sparrow Trading FZE の代理店を務めた。同社が所有するアラブ首長国連邦船籍の小型支援船 2 隻も凍結資産になった
ベッセント財務長官は発表で「海上で違法に石油を積み替えていようと、法律事務所の角部屋に座っていようと、イランの政権を支えるなら見つけ出して制裁する」と述べた。
ギリシャの銀行に向けた初の行政召喚状
同じ発表には、銀行に関わる一文もある。財務省の金融犯罪取締ネットワーク (FinCEN) は、ギリシャを含む欧州の当局と連携し、ギリシャのある銀行とイランやその代理勢力とのつながりを調べている。その調査で、銀行秘密法の条項 (合衆国法典 31 編 5318 条 (k)) にもとづく行政召喚状を初めて発出した。銀行名は明かされていない。FinCEN は、制裁対象のイランの金融機関との取引関係について、複数の銀行に情報提供も求めた。
指定の帰結は IDB のときと同じ構図をとる。指定された相手と重要な取引を知りながら仲介した外国の金融機関は、米国のコルレス口座 (海外の銀行が米国の銀行に持つドル決済用の口座) を失うか、厳しい条件を付けられうる。今回は法律事務所と海運会社が指定されたことで、その取引先である船主・用船者・港湾業者と、彼らに口座を持たせる銀行までが点検の対象に入る。
11月20日までの猶予と、次に見るもの
外国資産管理局 (OFAC) は同日、二つの一般許可を出した。GG は Karnakis and Karnakis との取引の手じまいを、HH は指定された会社と船について、取引の手じまい、イランとロシア以外の港での停泊と出港、乗組員の安全、緊急修理、積み荷の陸揚げを認める。どちらも期限は米東部標準時11月20日午前 0 時 1 分だ。
最初の確認先は、この期限の11月20日である。延長の一般許可が出るか、そのまま失効するかで、指定された船の行き先が決まる。次に、FinCEN の調査の続報として、ギリシャの銀行の名前や措置が財務省の発表面に出るかを見る。ギリシャは世界有数の船主国で、そこの銀行が影の船団の決済に関わっていたかどうかは、欧州の海運金融全体に関わる問いになる。
ことば
- 影の船団 (シャドーフリート) — 制裁対象国の原油や石油製品を運ぶため、所有者を分かりにくくした船の集まり。船籍や船名を頻繁に変え、ペーパーカンパニーを重ねて所有するのが典型で、今回の指定はその登記を担う側を狙った。
- 一般許可 (ジェネラル・ライセンス) — OFAC が制裁の例外を条件付きで一括して認める許可。指定直後に出る手じまい用の許可は、取引先が契約を整理する猶予期間で、期限が延びるかどうかが制裁の実効性を左右する。
- 実質的支配者 — 会社を実際に所有・支配している人。登記上の名義人とは一致しないことがある。今回の法律事務所は、従業員を名義上の役員に据えて実質的支配者を隠したとされる。
🔗 一次ソース
- 米財務省の発表 (2026年10月21日) — Karnakis and Karnakis と関係者 5 人、Roxette、Amigoz、Whales の指定と船 9 隻の凍結、FinCEN の行政召喚状を確認home.treasury.gov
- OFAC の Recent Actions (2026年10月21日) — SDN リストへの追加内容と一般許可 GG・HH の発出を確認ofac.treasury.gov
- OFAC 一般許可 GG — 手じまいの期限 11月20日を確認ofac.treasury.gov
- OFAC 一般許可 HH — 停泊・乗組員の安全・積み荷の陸揚げの許可と期限を確認ofac.treasury.gov
- 米財務省公式 X の告知
- ベッセント財務長官の X 投稿