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📡 Signal|下院民主党、SEC の役割を広げる暗号資産の市場構造法案を検討
米下院の民主党が、次の議会で独自の暗号資産の市場構造法案を出す検討に入った。ウォーターズ議員の「権利章典」を土台に、SEC の監督を広げ CFTC の役割を限る構想で、共和党は「メッセージ法案」と呼ぶ。

米下院の民主党が、2027年1月に始まる次の議会で、暗号資産の市場の規則を定める独自の「市場構造」法案を出す検討に入った。暗号資産の政策報道で知られる記者のエレノア・テレット氏が11月4日 (米国時間)、民主党の議員スタッフと話した業界関係者3人の話として伝えた。土台になるのは、下院金融サービス委員会の民主党筆頭マキシン・ウォーターズ議員が2025年に CLARITY 法の修正案として出した「暗号資産の投資家と消費者の権利章典」だ。
中間選挙で上下両院の多数を取った民主党は、共和党がまとめた CLARITY 法を直す側から、自分たちの案を出す側へ回ろうとしている。最大の焦点は、CLARITY 法が商品先物取引委員会 (CFTC) に寄せた暗号資産の市場の監督を、証券取引委員会 (SEC) の側へ引き戻すかどうかにある。
検討されている4つの柱
テレット氏の報道によると、検討の中身は次のとおりだ。
- ウォーターズ議員の「権利章典」を、市場全体を扱う法案に広げる
- 2025年に下院でウォーターズ議員が出して採用されなかった民主党の修正案と、9月の上院の審議入りの採決の前に上院の民主党が共和党と合意できていた条項を取り込む
- SEC が暗号資産の市場を監督する役割を広げ、CFTC の役割を限る
- トランプ大統領やほかの連邦の公職者の暗号資産の活動を制限する倫理の規定を、さらに加える可能性が高い
共和党の側は、これを「メッセージ法案」(成立よりも立場を示すための法案) と呼んでいるという。法案の条文や、民主党としての公式の発表はまだ出ていない。
2025年に退けられた「権利章典」
土台とされる修正案は、2025年7月、CLARITY 法を下院の本会議にかける前に、議事の進め方を決める下院議事運営委員会へ出されたものだ。ウォーターズ議員はこの時、修正案を6本出しており、31番が「権利章典」にあたる。中身は、24時間の顧客対応、保険か証券投資者保護公社 (SIPC) に近い補償、顧客に対する受託者の責任と最良執行の義務、顧客の注文の先回り取引の禁止、事業者の倒産から切り離した資産の保管と24時間以内の引き出し、監査人が確かめる毎月の準備金の証明、そして SEC と CFTC の予算の手当てだった。
この修正案を本会議で審議できるようにする動議は、委員会で4対8で否決された。賛成の4人はすべて民主党、反対の8人はすべて共和党だ。本会議での審議が認められた修正案は、別の議員の1本だけだった。
CLARITY 法はそのまま7月17日に下院を294対134で通過した。賛成には共和党の216人に加えて、民主党の78人がいた。民主党は一枚岩で反対したわけではない。新しい法案がこの78人をどこまでつなぎ留められるかは、法案を「民主党の案」にとどめるか、超党派の交渉の出発点にできるかを分ける。
上院の49対50から、民主党の議会へ
CLARITY 法は上院で止まった。9月15日の審議入りの採決は49対50で、必要な60票に届かず、民主党からの賛成はゼロだった。民主党が求めたのは、大統領とその家族を実効的に縛る倫理の規定だった。
その上院と下院の多数派は、2027年1月3日に民主党へ移る。下院金融サービス委員会の民主党のトップの座には、ウォーターズ議員にイリノイ州のショーン・キャステン議員が挑む意向を正式に示しているが、米議会紙ロールコールは、ウォーターズ議員を破るのは「厳しい道」とする見方を伝えている。ウォーターズ議員が委員長に就けば、2025年に審議の場さえ与えられなかった修正案が、委員長の法案として委員会に戻ってくることになる。
SEC と CFTC、線を引き直す意味
下院を通った CLARITY 法は、デジタル商品を扱う取引所やブローカーの登録と監督を CFTC に任せる設計だった。トークンの多くを証券として扱ってきた SEC の外に、新しい監督の枠を作る法案でもあった。民主党の構想は、この線を SEC の側へ引き戻す。
法律を待たずに、両方の当局はすでに動いている。SEC は8月に暗号資産の包括的な規則案を出し、CFTC は10月に、CLARITY 法を待たずに暗号資産の取引所の連邦の枠組みを作る考えを示した (CFTC の Signal)。ただし CFTC は10月2日から、委員長1人だけで決める体制にある (CLARITY 否決から10日の Deep Dive)。どちらの当局が暗号資産の市場の主な監督者になるのかという問いは、法案が止まった後も答えが出ていない。民主党の法案は、その答えを SEC の側で書こうとしている。
「メッセージ法案」でも動くもの
共和党が「メッセージ法案」と呼ぶのには理由がある。民主党が両院の多数を取っても、上院で議論を打ち切るには60票が要り、法律になるには大統領の署名が要る。民主党の案は、共和党の協力と大統領の同意なしには成立しない。
それでも、この法案には成立とは別の働きがある。2027年の交渉の出発点を、共和党の CLARITY 法から民主党の案へ移すことだ。これまで業界は、自分たちが推す法案に民主党の賛成を集める側にいた。次の議会では、SEC の監督と倫理の規定を前提にした民主党の案に対して、どこまで譲れるかを示す側に回る。法案が通らなくても、交渉の土台が入れ替わるだけで、2027年の暗号資産の制度づくりの順番は変わる。
次に見るもの
- 下院民主党の運営政策委員会が決める、次の議会の金融サービス委員会の民主党トップ。ウォーターズ議員かキャステン議員かで、この法案を委員会がどう扱うかが変わる
- 法案の条文の公表。下院金融サービス委員会の民主党のサイト (democrats-financialservices.house.gov) の発表欄が最初の確認先になる。新しい議会が始まる2027年1月3日より前に出るかどうかが、民主党がこの案をどれだけ急いでいるかを示す
ことば
- 市場構造法案 — 暗号資産をどの当局が監督し、取引所や発行者にどんな登録と開示を求めるかを決める法律。CLARITY 法がその代表で、ステーブルコインを扱う GENIUS 法とは別の枠組みになる。
- SIPC (証券投資者保護公社) — 米国の証券会社が破綻したとき、顧客の資産を一定額まで補償する機関。ウォーターズ議員の修正案は、暗号資産の顧客にもこれに近い補償を求めた。
- 下院議事運営委員会 — 法案を本会議にかける際、どの修正案を審議するかを決める委員会。多数党が議席の多くを持つため、少数党の修正案はここで退けられることが多い。
🔗 一次ソース
- エレノア・テレット氏の X 投稿 (2026年11月4日) — 下院民主党が検討する市場構造法案の中身・業界関係者3人・共和党の「メッセージ法案」の評
米下院議事運営委員会 — H.R. 3633 (CLARITY 法) の修正案の一覧。31番 (ウォーターズ議員) の「権利章典」の内容と、審議を認める動議の4対8の否決 (Record Vote No. 151)House of Representatives Committee on Rules- 米下院書記官 — Roll Call 199 (2025年7月17日)。CLARITY 法の下院通過 294対134・共和党216人と民主党78人が賛成clerk.house.gov
- The Defiant — 上院が CLARITY 法の審議入りを49対50で退け、民主党の賛成はゼロ (2026年9月)thedefiant.io
ロールコール (2026年10月20日) — 下院金融サービス委員会の民主党トップをめぐるウォーターズ議員とキャステン議員Roll Call
ガーディアン (2026年11月4日) — 中間選挙で民主党が下院の多数を奪還the Guardian