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SNAPSHOT 2026-08-21 07:30 JST

Weekly Brief

LMK Weekly Brief #1|雇用が減って失業率が下がった週に、値段がついたのは金だった

7月の米雇用は2万3千人減り、5月と6月も合計10万3千人下方修正された。それでも失業率は4.1%へ下がっている。職が増えたのではなく、労働参加率が61.4%まで落ちて分母が縮んだからだ。数字が弱かった週に大きく動いたのは金の7.39%高と原油の11.20%安だけで、ドルはほとんど動かなかった。マクロ・暗号資産・RWAの3レーンとも、付け替えられたのは金利の水準ではなく政策のたどる経路であり、それを吸収したのは金だった。

LMK Weekly Brief #1|雇用が減って失業率が下がった週に、値段がついたのは金だった

Executive Summary

今週、米国の雇用は減った。7月の非農業部門雇用者数は2万3千人の減少で、5月と6月の数字も合計10万3千人下方修正された。それでも失業率は4.2%から4.1%へ下がっている。職が増えたから下がったのではない。労働参加率が61.4%と1月から0.7ポイント低下し、失業率の分母のほうが縮んだからである。

数字が弱かった週に、株は上がり、変動性指数は下がり、ドルはほとんど動かなかった。前週末比でS&P500は3.58%高の7,757.64、変動性指数は6.82%低下の14.90、ドル指数は0.20%安の99.604である。米10年債利回りは8.5ベーシスポイント低下して4.660%になった。

大きく動いたのは2つだけだ。金が7.39%上昇して1トロイオンス4,401.30ドル、原油は11.20%下落して1バレル77.08ドルになった。金の上げ幅は、ドルの0.2%安と長期金利の8.5ベーシスポイント低下だけでは説明がつかない。

そしてこの金は、3つのレーンすべてに顔を出した。マクロでは今週最大の上昇であり、RWAではトークン化実物資産の週間上昇率上位を金連動トークンが占め、暗号資産ではビットコインに8億6,530万ドルの新規資金が入りながら、それでも金に4ポイント以上負けた。今週の主題は雇用の数字そのものではなく、その数字を受けて市場が何の値段を付け替えたか、である。付け替えられたのは金利の水準でも期間に対する上乗せでもなく、政策がこれからたどる経路だった。

Macro Lane

失業率が下がった理由を、雇用が増えたことと取り違えてはいけない。 7月の非農業部門雇用者数は2万3千人減で、過去12か月の月平均は3万4千人増だった。5月は12万9千人増から6万3千人増へ、6月は5万7千人増から2万人増へ下方修正され、2か月合計で10万3千人少ない。失業率は4.1%へ下がったが、同じ月に労働参加率は61.4%となり、1月から0.7ポイント低下した。就業率も58.9%で1月から0.5ポイント低い。一時解雇の状態にある人は15万3千人増えて92万1千人になった。分子と分母の両方が縮んでいるとき、失業率の低下は労働市場の改善を意味しない。

業種の内訳は、景気循環の弱さではなく別の形をしている。 減ったのは地方政府の教育が5万人、小売が1万9千人である。金融関連は1万4千人減で、2025年5月の直近ピークから12万1千人減っている。増え続けているのは医療の2万2千人だが、過去12か月の月平均3万6千人より鈍い。平均時給は37.62ドルで前月比2セント、前年比3.2%の上昇にとどまった。週平均労働時間は34.3時間で変わっていない。人を減らす動きが賃金の伸びに現れていないという点では、まだ静かな崩れ方である。

発行の側は動かなかった。 米財務省は8月5日の四半期定例リファンディングで、8月15日に満期を迎える民間保有963億ドルを1,250億ドルで借り換え、新規資金287億ドルを調達すると発表した。内訳は3年債580億ドル、10年債420億ドル、30年債250億ドルである。そのうえで「Treasury anticipates maintaining nominal coupon and FRN auction sizes for at least the next several quarters」と明記した。少なくとも今後数四半期はクーポン債の入札規模を維持する、という言い方である。物価連動債も現状維持で、季節的な調整は短期債の発行量とキャッシュマネジメント債で吸収する。年限の長い側の発行を増やす選択は、今回は取られなかった。

日本の超長期は、入札を2本通過して下がった。 財務省の日次データで7月31日から8月6日を見ると、10年は2.801%から2.773%へ2.8ベーシスポイント、30年は3.982%から3.919%へ6.3ベーシスポイント、40年は3.967%から3.912%へ5.5ベーシスポイントそれぞれ低下した。8月4日に10年債、8月6日に30年債の入札があり、その両方を挟んで、10年より超長期のほうが大きく下がっている。30年と40年の差は1.5ベーシスポイントから0.7ベーシスポイントへ縮んだ。年限を10年延ばしても上乗せがほとんど得られない形は続いているが、超長期を売る動きそのものは止まっている。日米の10年金利差は1.944ポイントから1.887ポイントへ5.7ベーシスポイント縮小した。掲載は8月6日分が最新で、8月7日はまだ載っていない。

次に何が動くか。 発行規模を据え置くと明記した直後に、8月11日の3年債、12日の10年債、13日の30年債が控える。据え置きの宣言は需要が続く前提の上に立っているので、同じ規模で入札が通るかどうかが最初の検証になる。日本側では8月10日8時50分に7月30日・31日会合の主な意見が公表される。実践判断としては、超長期の年限を延ばして利回りを取りに行く手はまだ割に合わない。30年と40年の差が1ベーシスポイントを切ったままである以上、10年ぶんの時間を引き受ける対価が価格に入っていない。判断材料は今週の金利低下ではなく、来週の入札で示される需要の厚みに置く。

Crypto Lane

資金は戻った。前週とは向きが逆である。 米国のビットコイン現物ETFは8月3日から7日まで、日次で1億7,010万ドル、2億1,150万ドル、2億4,440万ドル、1億3,760万ドル、1億170万ドルの純流入となり、5営業日すべてがプラスで週合計8億6,530万ドルになった。前週の7月27日から31日は週合計6,150万ドルの純流出で、7月最終日だけで2億6,540万ドルが流出していた。イーサリアム現物ETFも週合計2億4,370万ドルの純流入で、前週の1,000万ドルから桁が変わった。ビットコインETFの設定来累計純流入は522億4,300万ドルである。

それでも価格は、資金の入り方ほどには動かなかった。 ビットコインは3.09%高の64,889ドル、イーサリアムは2.84%高の1,914.41ドルである。同じ週に金は7.39%上昇した。実際に新しい資金が5営業日連続で入った資産が、資金フローの数字が存在しない資産に4ポイント以上負けている。「リスク回避で金が買われ暗号資産が売られた」という整理は、今週については当てはまらない。両方が買われ、金のほうが強かった。

個別では、値段と入口が逆方向に動いた。 カルダノのADAは19.92%高の0.201561ドルで、12指標のなかで最大の上昇となった。ビットコインの上昇率の6倍以上である。その同じ週の8月7日、グレースケールはカルダノ・トラストETFの登録届出書を規則477に基づいて取り下げた。取下げの理由として原文に記されているのは「the Sponsor does not intend to proceed with the planned distribution of the Trust's shares registered by the Registration Statement」であり、2025年8月29日に提出された届出書は効力未発生で証券は発行されていない。同日にポルカドットとヘデラのトラストも取り下げられている。価格が最も上がった原資産で、上場商品としての入口が1つ閉じた。ADAが19.92%上げた理由は一次資料からは特定できない。特定できるのは、同じ週に逆向きの事実が起きたことのほうである。

制度の入口は開いたままで、閉じたのは事業判断の側である。 米証券取引委員会は2025年9月17日に、汎用上場基準を満たす商品現物型トラスト株は個別の規則変更申請なしに上場・取引できると承認している。規則が塞いでいるから取り下げたのではない。ミッドナイトのNIGHTは6.23%高だった。カルダノとInjectiveがIBCで接続されたという発表も8月5日にあったが、稼働範囲はカルダノのPreprodとInjectiveのテストネットであり、テスト用ADAが動く段階である。本番の相互運用ではない。

外側からの圧力は続いている。 米財務省外国資産管理室は8月7日、大統領令13224に基づき、ジョージアの法人を通じてShelbit Exchangeを運営するシアバシュ・カイバンプール氏と、イラン拠点のAban Tetherを指定した。革命防衛隊のアドレスからShelbitへ100万ドル相当超、Shelbitから革命防衛隊へ200万ドル相当超の移転を確認したとしている。Aban Tetherは既に指定済みのNobitex、Wallex、Bitpin、Ramzinexとの取引を処理していた。原油市場が緊張の緩和を織り込んだ週に、資金経路への締め付けは緩んでいない。

次に何が動くか。 資金が入っているのに価格の反応が小さいという今週の形は、続けば意味が変わる。実践判断としては、ETFの流入が翌週も続くかどうかを、価格ではなく流入の連続日数で見る。5営業日連続の流入が途切れずに伸びるなら、価格の遅れは需給の消化の問題である。流入が続いているのに価格が動かないまま2週目に入るなら、現物側で同じだけの売りが出ていることになる。

RWA Lane

カテゴリ全体の規模は272億4,000万ドル、153のプロトコルにまたがる。 週次で跳ねる領域ではないという前提は、今週も変わらない。ただし今週は、その内訳の動き方に読み取るべき形があった。

伸びたのは国債ではなく金だった。 米国債に連動する主要なトークンは、BlackRock BUIDLが35億1,400万ドルで週0.6%増、Circle USYCが30億500万ドルでほぼ変わらず、Ondo Yield Assetsが25億1,600万ドルで0.3%減、WisdomTreeが7億7,600万ドルで0.1%減と、いずれも横ばいである。一方で週間上昇率の上位はInvesco USTBの7.6%、Tether Goldの7.1%、Paxos Goldの5.9%、Ondo Global Marketsの5.3%、Spikoの4.4%だった。

この7.1%の中身を確かめておく価値がある。 Tether Goldのオンチェーン残高は8月1日の28億7,970万ドルから8月8日の30億8,450万ドルへ増えた。同じ週に金価格は7.39%上昇している。つまり残高の増加分は、ほぼ全額が担保の値上がりで説明がつく。新しく金がトークン化されたから増えたのではない。RWAの残高を「採用が進んだ量」として読むと、今週のような週は誤読になる。担保が値上がりしただけの週と、実際に資産が持ち込まれた週は、同じ数字の上がり方をする。区別するには、残高の変化率を原資産の価格変化率と並べるしかない。

私募クレジットは、集める側ではなく畳む側の数字が出た。 8月5日に提出されたブルー・オウル・キャピタル・コーポレーションの第2四半期開示は、1株あたり純資産が3月末の14.41ドルから14.26ドルへ低下したことを示した。前年同期は15.03ドルである。会計基準上の投資純利益は1株0.36ドル、調整後は0.34ドルで前四半期の0.31ドルから改善した。しかし基本配当は前四半期の0.37ドルから0.31ドルへ、16%減額されている。四半期の新規投資コミットメントは3億1,900万ドルに対し、売却と返済は7億4,700万ドルだった。出ていく額が入る額の2.3倍である。ポートフォリオ時価は149億5,500万ドルで、3月末の153億4,400万ドルから2.5%、前年同期の168億6,900万ドルから11.3%縮んだ。純負債資本倍率は1.11倍まで下がっている。

非計上債権の比率の動き方が、今週の要点である。 非計上は取得原価ベースで2.0%から2.8%へ上がり、時価ベースでは1.0%から0.8%へ下がった。同じ四半期に、同じ指標が逆方向へ動いている。これは、新たに非計上へ移した銘柄が、取得原価では大きな金額を占めるのに時価ではほとんど値が付いていない、という意味になる。悪くなった資産が「少し悪い」ではなく「かなり悪い」形で入ってきたときに、この2つの比率は逆に動く。平均値だけを見れば時価ベースの非計上は改善したように見えるが、中身は改善していない。経営側は信用の状況が想定どおりだと述べている。数字の方向と説明のどちらが正しいかは、次の四半期にこの2つの比率がどう動くかで決まる。

次に何が動くか。 実践判断は2つある。1つは、RWAの残高を見るときに必ず原資産の価格変化を横に置くこと。今週の金連動トークンは、その並べ方をしないと採用の拡大に見えてしまう。もう1つは、私募クレジットを平均値で判断しないこと。取得原価ベースと時価ベースの非計上比率が逆に動いた四半期は、平均が落ち着いていても分布が動いている。金が反落した週に金連動トークンの残高が同じ幅で戻るかどうかは、値上がりだけで増えたのか実際に持ち込まれたのかを切り分ける最も安い検証になる。

Cross-Lane Signals

3つのレーンを並べると、同じ資産が3回現れる。

第1に、マクロでは金が今週最大の上昇だった。7.39%の上昇に対し、ドル指数は0.20%安、米10年債利回りは8.5ベーシスポイントの低下しかしていない。通貨と金利の動きだけでは、この上げ幅は埋まらない。埋まらない部分に何が入っているかを、今週の値動きだけで断定することはできない。ただし、埋まらない部分があること自体は数字で確認できる。

第2に、RWAでは週間上昇率の上位を金連動トークンが占め、その増加はほぼ担保の値上がりだった。オンチェーンの数字は、金が買われたという事実を独立にもう一度記録している。ここには採用の物語はなく、価格の再評価がそのまま台帳に写っているだけである。

第3に、暗号資産では実際に新しい資金が入りながら、金に4ポイント以上負けた。ビットコインETFへの8億6,530万ドルは、資金が逃げた週の数字ではない。買われた資産のなかで、金がいちばん買われたということである。

つまり今週は、雇用の数字が崩れたときに市場が最初に手を伸ばした先が、通貨でもリスク資産でもなく金属だった週だと言える。金1オンスで買える原油の量は47.2バレルから57.1バレルへ約21%増えた。実物どうしの交換比率で見ても、金の側に付け替えが起きている。

波及の経路として見るべきものは1つに絞れる。 8月11日から13日の3本の入札である。米財務省は発行規模を据え置くと明記した。据え置きは、その規模で買い手がつくという前提の宣言でもある。前提が崩れれば、動くのは発行計画ではなく金利の側になり、それは日本の超長期にも、長い期間の資金を固定金利で調達している私募クレジットの評価にも波及する。今週、ポートフォリオが縮小し配当が減額された開示が出たばかりであることを踏まえれば、この経路は観念的なものではない。

読みを変える先行指標は、失業率ではなく労働参加率である。 今週の失業率の低下は、参加率の低下と同時に起きた。参加率が下がり続けるなら、失業率は労働市場の強さを測る道具として使えなくなる。8月28日には事業所調査の予備ベンチマーク改定が公表され、月次の増減ではなく水準そのものが引き直される。ここで直近数か月の弱さがさらに深いものとして再計算されるなら、今週の金の動きは先走りではなく先取りだったことになる。逆に水準が上方に直されるなら、今週の反応は行き過ぎとして整理される。この分岐は8月28日に判定できる。

Risk Digest

テクニカル。 日本の30年と40年の差は0.7ベーシスポイントである。年限を10年延ばして得られる上乗せがほぼ消えた状態が続いている。今週は入札2本を通過して超長期のほうが大きく低下したため、需給の崩れは確認されていない。ただしこの形は、買い手が一度引いたときの戻りが速い。掲載は8月6日分が最新で、8月7日の値はまだ確認できない。

規制。 デジタル資産の市場構造法案について、上院は夏季休会前に採決しないと報じられた。上院が戻るのは9月14日で、その後の会期は3週間である。成立が秋以降にずれれば、事業者側の設計判断も後ろにずれる。一方で、汎用上場基準そのものは2025年9月に承認済みで有効なままである。制度が塞いでいるのではなく、法律の側だけが止まっている。

市場。 私募クレジットで、売却と返済が新規コミットメントの2.3倍になり、ポートフォリオ時価は前年同期比11.3%縮んだ。基本配当は16%減額された。縮小そのものは、レバレッジを下げて選別するという説明と矛盾しない。矛盾が出るとすれば、縮小が続くなかで非計上比率の分布が広がり続けたときである。

地政学。 原油は11.20%下落した。OPECの7か国は8月2日の会合で、2023年4月に決めた追加自主調整分から日量18万8千バレルの生産調整を9月に実施すると決めている。米エネルギー情報局の統計では、7月31日時点の商業用原油在庫は250万バレル増の4億700万バレルで、5年平均比では約6%低い。日本銀行が8月3日に全文を公表した展望では、ドバイ原油1バレル80ドル程度を出発点に見通し期間の終盤へ向けて70ドル程度まで下落する前提が置かれている。ドバイ原油とWTIは別の指標であり直接は比較できないが、原油が前提より上に振れれば物価見通しと政策判断の両方が組み替えを迫られるという関係は変わらない。制裁の側は緩んでおらず、供給の緩和と圧力の継続が同時に起きている。

Next Week Preview

  1. 米国債の入札(8月11日・12日・13日・マクロ) — 3年債580億ドル、10年債420億ドル、30年債250億ドル。発行規模を据え置くと明記した直後の入札であり、今週最も影響の大きい検証になる。
  2. 日本銀行の主な意見(8月10日8時50分・マクロ) — 7月30日・31日会合の議論。1.25%への引き上げを提案した反対票の背景がどう記述されるか。
  3. 米週次石油在庫統計(8月12日・マクロ) — 前週に続いて在庫が積み上がるかどうかで、今週の原油下落が需給によるものか緊張緩和の織り込みかを切り分けられる。
  4. 上院の日程(暗号資産) — 上院は9月14日に戻る。休会明けの3週間で市場構造法案の日程が立つかどうかが、事業者の設計判断の時間軸を決める。
  5. 金連動トークンの残高(RWA) — 金が反落した週に残高が同じ幅で戻れば、今週の増加は価格だけだったことになる。戻りが小さければ、実際に資産が持ち込まれている。

注視しておくもの。 事業所調査の予備ベンチマーク改定が8月28日に公表される。月次の増減ではなく水準が引き直されるため、今週の弱さの意味そのものが変わりうる。次回の雇用統計は9月4日である。株式のトークン化にあたる領域は、Ondo Global Marketsの残高が9億6,290万ドルで週5.3%増と、国債連動が横ばいのなかでは伸びている。ただし規模はまだ小さく、発行体側の一次開示で実際の取引と保有の裏付けが取れるまでは観測線にとどめる。

投資助言ではありません。情報提供・リサーチ目的のみ

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