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📡 Signal|Circle、SEC にステーブルコインの「現金」扱いを要請
GENIUS法準拠のステーブルコインを証券規則上の現金に、掛け目はゼロに。同じ週、金融庁は8か国・地域の制度調査を公表した。

米ドル建てステーブルコイン USDC の発行体 Circle は 10 月 28 日、米証券取引委員会(SEC)が提案した暗号資産の募集規則「Regulation Crypto Assets」に意見書を出したと公表した。提出は 10 月 20 日付。米国の新しいステーブルコイン法(GENIUS 法)に沿って発行された決済用ステーブルコインを、規則案の第 302 条(b) の「現金」として扱うよう求めている。
同じ週の 10 月 30 日には、日本の金融庁が米国・EU・香港など 8 か国・地域の金融制度を調べた 609 ページの報告書を公表し、各地のステーブルコイン規制も整理した。米国では、ステーブルコインを規制の対象としてだけでなく、証券市場の決済に使うお金として位置づけ直す議論が始まり、日本はその前提となる各地の制度の地図を手元に揃えた。
Circle の発表の第一報は 速報、金融庁の報告書は 速報 で伝えた。本稿は、2 つの一次資料から何が動いているかを読む。
Circle が求めた 3 つの扱い
意見書は 5 ページで、ステーブルコインについての要望は次の 3 点に集約できる。
- 現金としての扱い: 規則案の第 302 条(b)(1) は証券を「現金で」募集する場合を定めている。GENIUS 法に準拠した決済用ステーブルコインをこの「現金」に含め、ドル建てで評価し、会計と顧客資産の扱いもそれに合わせるよう求めた
- 証券会社の資本規制: SEC の取引市場部門は、証券会社が自己勘定で持つ決済用ステーブルコインに 2% の掛け目(ヘアカット)を認める FAQ を出している。Circle はこれを「建設的な暫定措置」と評価したうえで、GENIUS 法準拠のものは掛け目をゼロにするよう提案した
- ネットワークの扱い: 自社のブロックチェーン Arc のように、身元を確認した検証者(バリデーター)が運営する許可不要型のネットワークも、暗号資産の発行や決済の基盤として認めるよう求めた
掛け目をゼロにする理由として、意見書は MMF(マネー・マネジメント・ファンド)との違いを挙げる。MMF は利回りを求める投資商品で、持ち主は運用や流動性のリスクを負う。GENIUS 法準拠のステーブルコインは決済と清算のためだけに設計され、1 対 1 の準備資産、資本と流動性の基準、額面での償還、破綻時の保護を法律で負っている。だから現金に近い資産と同じ扱いにすべきだ、という組み立てだ。
「現金」になると何が変わるか
証券会社にとって、掛け目 2% とゼロの差は小さくない。2% の掛け目は、100 ドル分のステーブルコインを持つと自己資本の計算で 98 ドルとしか数えられないことを意味する。ゼロになれば、ステーブルコインを現金や国債に近い資産として抱えられ、証券の受け渡しの片側をステーブルコインで決済する使い方が現実的になる。Circle が公式 X で「ステーブルコインはトークン化された経済の現金の側になりうる」と書いたのは、この位置を取りにいく意図だ。
一方で、規則案は暗号資産の募集の枠組みを決めるためのもので、ステーブルコインの扱いは中心の論点ではない。意見書の要望が最終規則にどこまで入るかは、SEC が寄せられた意見をどう整理するかで決まる。正式な意見募集は 10 月 20 日に締め切られている。
金融庁の 609 ページが整理した各地の制度
金融庁が 10 月 30 日に公表したのは「諸外国における金融制度の概要に関する調査」の報告書だ。渥美坂井法律事務所・外国法共同事業に委託し、米国・英国・EU・ドイツ・フランス・シンガポール・中国・香港の 8 か国・地域を調べた。報告書の日付は 2026 年 3 月で、金融庁は「金融制度の企画・立案の参考とするため」としている。
ステーブルコインの部分では、米国のジーニアス法が 2025 年 7 月 18 日に成立し「初の包括的な連邦規制の枠組み」になったこと、施行日は 2027 年 1 月 18 日か、連邦の規制当局が最終規則を出してから 120 日後の早い方であることを記している。香港については、法定通貨に連動するステーブルコインの発行者に免許を求めるステーブルコイン条例が 2025 年 8 月 1 日に施行され、香港金融管理局(HKMA)が免許と監督を担うと整理した。EU の暗号資産市場規則(MiCA)は、それまで法令の外にあったステーブルコインにも規制要件を課した点が特徴だとしている。
各地の制度が誰に発行を認めるかを固めている間に、米国ではその先の、証券の世界でどう使うかの議論が SEC の意見書の束の中で始まっている。
次に見るもの
最初の確認先は、SEC のウェブサイトにある規則案の意見書の一覧(ファイル番号 S7-2026-27)だ。Circle 以外の発行体や証券会社が、ステーブルコインの「現金」扱いや掛け目について何を書いているかが、提出順に並んでいる。
その次は、GENIUS 法の施行日の 2027 年 1 月 18 日だ。それより前に連邦の規制当局の最終規則が出そろえば、施行はその 120 日後に早まる。施行の後に SEC が最終規則を決めるなら、「GENIUS 法準拠」の条件を満たすステーブルコインが実際に存在する状態で、現金の扱いを判断することになる。
ことば
- GENIUS 法 — 2025 年 7 月に成立した米国の決済用ステーブルコインの連邦法。発行者を許可制にし、1 対 1 の準備資産や額面での償還を義務づける。保有者への利息の支払いは禁じている。
- 掛け目(ヘアカット) — 資本規制で、持っている資産の価値を割り引いて数える割合。値動きや換金のしにくさに応じて決まり、掛け目がゼロの資産は現金と同じく額面どおりに数えられる。
- 許可不要型のネットワーク — 誰でも取引を送り、誰でも使えるブロックチェーン。Circle の Arc は、利用は誰でもできる一方、取引を承認する検証者を身元確認済みの主体に限る形をとる。
🔗 一次ソース
Circle「Circle submits comment letter on SEC's proposed Regulation Crypto Assets」(2026 年 10 月 28 日)circle.com- Circle の SEC 意見書(2026 年 10 月 20 日付・第 302 条(b) の現金扱い・掛け目ゼロ・Arc)sec.gov
- Circle 公式 X の投稿(2026 年 10 月 29 日)
- SEC「Regulation Crypto Assets」の意見書一覧(S7-2026-27)sec.gov
金融庁「『諸外国における金融制度の概要に関する調査』報告書の公表について」(2026 年 10 月 30 日・8 か国・地域)fsa.go.jp- 金融庁 同報告書 本体(609 ページ・ジーニアス法の施行日・香港ステーブルコイン条例)fsa.go.jp
- CoinPost の投稿(2026 年 10 月 30 日・金融庁の報告書の第一報)