Signal
📡 Signal|Circle の Arc は許可制で動く。ブロックを作るのは 11 の既存金融機関
Circle が公開メインネットを稼働させる L1 ブロックチェーン Arc は、許可制のバリデータ集合で運用される。名簿には BlackRock・DTCC・ICE・Visa など 11 社が並ぶ。
Circle が 9 月 8 日、自社の L1 ブロックチェーン Arc について、公開メインネットを 9 月 16 日に稼働させると改めて告知した。日付そのものは 8 月 5 日の発表で示されていたもので、新しいのは日付ではない。同時に明かされた創設バリデータ (ブロックを作る検証者) の名簿が、このネットワークの性格を規定している。
BlackRock、DTCC、ICE、Visa、Mastercard、Standard Chartered、Global Payments、MoneyGram、Galaxy、SBI グループ、住友商事。11 社である。証券決済とカード決済と資産運用の既存インフラが、そのままブロック生成者として並んでいる。
暗号資産のネットワークを評価するとき、性能や手数料より先に見るべき場所がある。誰がブロックを作れるのかだ。Arc の場合、その答えは技術仕様ではなく名簿に書かれている。
許可制であることが仕様である
Circle 自身の説明によれば、Arc は「金融市場とリアルタイムの資金移動のために作られた、オープンな L1 ブロックチェーン」であり、その運用は許可制のバリデータ集合が担う。合意形成には Informal Systems が開発し現在は Circle が保守を引き継いだ Malachite が使われ、「サブ秒の決定論的な決済ファイナリティ」を掲げている。ファイナリティとは、取引がもう覆らないと確定するまでの時間を指す。
手数料はネットワーク独自トークンではなく USDC で支払う。Circle は「低く、予測可能で、ドル建ての手数料。変動する暗号資産は不要」と説明している。企業が送金コストを混雑状況ではなくドルで見積もれる、という設計思想である。
このほか、選択的に残高と取引を秘匿できる「オプトイン方式のプライバシー」と、機関投資家向けの RFQ (相対の値付け照会) を備えた為替エンジンが機能として挙げられている。
注目したいのは、公開されている Circle の説明に、バリデータを将来的に無許可へ開放する行程が書かれていないことだ。コアソフトウェアは寛容なライセンスで公開されるとされているが、これはコードを読み書きできることであって、誰でもブロックを作れることではない。ここは分けて読む必要がある。
名簿の中身
11 社のうち、ICE はニューヨーク証券取引所の親会社であり、DTCC は米国の証券決済の中枢を担う機関である。Visa と Mastercard と Global Payments と MoneyGram は既存の決済網、BlackRock は世界最大の資産運用会社、Standard Chartered と SBI グループと住友商事はそれぞれ銀行・金融グループ・総合商社にあたる。暗号資産側の事業者は Galaxy が入っている。
Circle の最高経営責任者ジェレミー・アレアーは発表で「Arc は単純な前提の上に建てられている。世界の金融システムは、信頼できるブロックチェーンネットワークに値する、という前提だ」と述べた。BlackRock のロバート・ミッチニックは「ステーブルコインとトークン化資産は、金融市場インフラの未来のなかで不可分に結びついている」とコメントしている。
無許可のネットワークでは、ブロック生成に参加できるかどうかは資本と技術の問題になる。許可制のネットワークでは、それは招待の問題になる。Arc はこの選択を隠していない。前者を後者より優れた設計だと決める根拠はないが、両者は別の物であり、同じ言葉で評価すると読み違える。
統合はいつ効くのか
発表された統合は 3 系統ある。BlackRock は同社のトークン化マネー・マーケット・ファンド BUIDL を Arc 上に展開する。DTCC はトークン化サービスを接続し、同社が保管する資産の決済に用いる。BNY と Standard Chartered は、保管・ステーブルコインへのアクセス・為替とレポ取引の基盤にまたがる連携を検討している段階にある。
日付を見ておきたい。DTCC の接続開始として示されているのは 2027 年後半である。名簿にいちばん重い機関が載っていることと、その機関の資産が実際にこのチェーンで決済されることのあいだには、1 年以上の距離がある。
現時点で公開メインネットに先行しているのは非公開メインネットで、Circle は 100 を超える機関・エコシステムの開発者が参加していると説明している。9 月 16 日に切り替わるのは、この環境の扉が開くかどうかである。
9 月 16 日に見えること
稼働当日に確かめられる事実は 3 つある。第一に、実際に稼働したバリデータ集合が発表どおり 11 社なのか。第二に、BUIDL の展開がメインネット当日に間に合うのか、それとも後日になるのか。第三に、USDC で支払う手数料が実際にどの水準に置かれるのか。
ステーブルコインの発行者が、自らの通貨を燃料とする決済網を持ち、その検証を既存の金融インフラに委ねる。この構図が機能するかどうかは、9 月 16 日ではなく、DTCC が示した 2027 年後半までのあいだに答えが出る。名簿は意思表示であって、稼働実績ではない。
🔗 一次ソース

