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📡 Signal|ホスキンソン氏、Cardano 向けの新言語を自ら開発
ホスキンソン氏が Cardano 向けの新しいプログラミング言語を自ら開発中と明かした。意図と証明つきデータを Groth16 で扱う、開示と秘匿を両立させる取引の構想。

Cardano の創設者チャールズ・ホスキンソン氏が10月18日、X への返信で、Cardano 向けの新しいプログラミング言語を自ら開発していると明かした。本人の説明では「この種のものとしては初めて」の言語で、取引の意図 (インテント) と、証明つきのデータ (PCD) を Groth16 という暗号の証明で扱えるようにする。開発には、Cardano のスマートコントラクト言語 Aiken を共同でつくったルーカス・ローザ氏が加わっている。
言語の名前・仕様・公開の時期は示されていない。それでも、狙いとして挙げた 3 つの語を並べると、秘密のデータを見せずに「条件を満たしている」ことだけを相手に示す取引を、言語の段階で書けるようにする構想が読み取れる。金融のアプリにとっては、開示と秘匿をどう両立させるかという、規制対応の中心にある問題に触れる話になる。
返信で明かされた、名前のない言語
発言は、Cardano の価値について問いかけた利用者への返信の中で出た。原文は「I'm actually personally developing a programming language for Cardano」で、続けて、この言語が意図と PCD を Groth16 の証明で可能にすること、ローザ氏 (@rvcas) が一緒につくっていることを書いた。
米 CoinDesk は19日にこの発言を記事にし、ホスキンソン氏は言語の名前も、公開のコードも、開発者が使えるようになる時期も明らかにしていないと伝えた。Input Output (IOG) からの説明は出ていない。
GitHub には、ホスキンソン氏が9月に作成した「Moriarty」というリポジトリがあり、意図や PCD の考え方を説明している。ただしこのリポジトリは自らを「Midnight 向けの有界な金融言語」と説明しており、Cardano での利用は試作の段階として別に扱っている。ローザ氏もここにコードを寄せているが、ホスキンソン氏は今回の言語と Moriarty が同じものだとは言っていない。同一とみなす根拠は、いまのところない。
意図・PCD・Groth16 が、それぞれ担うもの
3 つの語は、それぞれ取引の別の段を受け持つ。
- 意図 (インテント): 利用者が「この条件で交換したい」という結果だけを署名して出し、取引の組み立ては他者に任せる考え方。Ethereum では2023年ごろから、意図を軸にした設計の議論が広がった
- PCD (proof-carrying data): データ自体に、それが決められた規則に従ってつくられたことの証明を持たせる考え方。履歴をたどり直さなくても、受け取った側は証明だけを確かめればよい
- Groth16: 2016年に暗号学者イェンス・グロート氏が発表した、短く速く検証できるゼロ知識証明の方式。Cardano では2024年9月のハードフォーク (Chang) で、この種の証明の検証に必要な BLS12-381 という楕円曲線の計算がスマートコントラクトから使えるようになった
技術の材料はそろっている。CIP-0381 の文書は、Groth16 の検証が 1 回の取引の実行枠のおよそ 23% で収まると見積もっている。いまの Cardano には Plinth (旧 Plutus Tx)・Aiken・Plutarch・Helios・OpShin といった言語がある。一方、Midnight の Compact はゼロ知識の回路を出力する言語だ。ホスキンソン氏の構想は、証明を扱う発想を言語の側から Cardano に持ち込むものと読める。
開示と秘匿を、取引の中で両立させる
金融の取引では、相手や当局に示すべきことと、隠しておくべきことが同時にある。融資なら担保が足りていること、送金なら制裁の対象でないこと、投資なら適格な投資家であること。いまはそのたびに、元のデータを誰かに見せて確認してもらうのが普通だ。
意図と PCD と Groth16 を組み合わせれば、取引そのものが「条件を満たしている」という証明を持ち歩き、元のデータは見せずに済む。ホスキンソン氏は10月10日の東京での講演で、プライバシーと規制への対応を、AI エージェントとともに次の世代のブロックチェーンの条件に挙げていた (講演を読み解いた記事)。今回の言語は、その考えを開発者の道具に落とし込む試みにあたる。もっとも、本人の「初めて」という評価を確かめる材料はまだなく、実際に何ができるかは、コードと仕様が出てから判断することになる。
次に見るもの
確認先は、ホスキンソン氏 (@IOHK_Charles) とローザ氏 (@rvcas) の X と、両氏の GitHub だ。言語の名前・仕様・最初のコードが公開されるか、Moriarty との関係が本人の言葉で説明されるかを見る。Cardano の改善提案 (CIP) のリポジトリに、この言語に関わる提案が出るかも目安になる。
ことば
- インテント (意図) — 利用者が欲しい結果と条件だけを示し、取引の具体的な組み立ては他者に任せる仕組み。交換条件の最適化を専門の事業者が競う形になる。
- PCD (proof-carrying data) — データに「規則どおりにつくられた」という証明を添えて受け渡す考え方。受け取った側は、データの履歴を全部確かめ直さずに済む。
- Groth16 — 2016年に発表されたゼロ知識証明の方式。証明が短く、検証が速いため、ブロックチェーンの上で証明を確かめる用途で広く使われている。
🔗 一次ソース
- チャールズ・ホスキンソン氏の X の投稿 (10月18日・Cardano 向けの言語を自ら開発中)
CoinDesk: Cardano founder Charles Hoskinson is building a new programming language for the network (10月19日)coindesk.comGitHub: CharlesHoskinson/Moriarty (Midnight 向けの金融言語として説明されているリポジトリ)GitHub
ルーカス・ローザ氏のプロジェクト一覧 (Aiken の共同創設)rvcas.dev
CIP-0381: Plutus support for Pairings over BLS12-381 (Groth16 の検証の見積もり)GitHub
Cardano のハードフォーク一覧 (Chang・2024年9月1日)Cardano
IACR ePrint 2016/260: Jens Groth, On the Size of Pairing-based Non-interactive ArgumentsIACR Cryptology ePrint Archive
Paradigm: Intent-Based Architectures and Their Risks (2023年6月)Paradigm