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SNAPSHOT 2026-11-06 18:03 JST

Deep Dive

🔬 Deep Dive|機内 Wi-Fi の Viasat、航空売上は2028年度に減少の見通し

Viasat が航空売上の2028年度の減少を見通した。United は便の半分、American は全幹線機へ Starlink。競争は回線の上へ移り始めた。

LiveMakers Editorial Desk

🔬 Deep Dive|機内 Wi-Fi の Viasat、航空売上は2028年度に減少の見通し

Viasat の最高財務責任者 (CFO) Garrett Chase 氏は11月5日の決算説明会で、航空向けの売上が2028会計年度に減るとの見通しを示した。同社の会計年度は3月末締めなので、2027年4月から2028年3月までの1年を指す。足元の航空売上は前年同期比8%増えており、伸びている事業の減少を会社が先に口にした形だ。

買い手の側では、United が Starlink を1日の便の約半分に載せ、American が10月に幹線機すべてへ広げると決めた。飛行機の Wi-Fi は、おまけの設備から航空会社の競争の軸へ移り、回線を売る会社の決算にまで届き始めた。単なる機内サービスの話で終わらないのは、United の幹部自身がこの優位を「a moment in time」(いまこの時期だけのもの) と認めているからだ。売り手、買い手、客の順に数字を確かめ、回線の次に来る競争までを追う。

売り手の決算に出た変化

Viasat の株主への手紙によると、7〜9月期の総売上は11億8,000万ドルで前年同期比3%増だった。商用航空の稼働機は約4,490機で前年同期比6%増、航空の売上は8%増。通期についても、部門の売上は横ばい圏で、航空サービスの成長が下支えすると書いている。手紙に2028年度の話は出てこない。

変化は説明会のほうにあった。Chase 氏は、航空の売上が2028年度に2027年度の水準から減ると述べ、減少の軌道を見極めながらコスト面の対応の検討を始めたと説明した。根拠に挙げたのは「最近の顧客の発表」で、これらが最終的に航空売上の15〜20%に影響するという。あわせて、急激な影響は見込んでいないとも述べた。

足元の数字にも小さな兆しがある。稼働機は前年同期より増えているが、前四半期と比べると微減で、Chase 氏はこの緩やかな減少が続くとの見方を示した。機内接続の受注残は約660機で、最近の顧客の発表にもとづき受注残から外した分があるという。

ただし、いま売上が落ちているわけではない。減るのは先の年度の見通しで、Viasat はそこで受け身に回っていない。会長兼 CEO の Mark Dankberg 氏は、商用市場の多くで競争が強まっていると認めたうえで、長い目で見れば十分に競争できると述べた。手紙では複数の軌道を組み合わせる機内サービス AMARA を魅力的な成長機会と位置づけ、説明会では複数の航空会社が導入を検討中で、航空の市場はまだ3分の1ほどしか開拓されていないと語っている。

買い手が決めたこと

Viasat は説明会で、どの顧客のどの発表かを名指ししていない。読める書き起こしの範囲では、航空の文脈で Starlink の名前も出てこない。そこで因果を決めつけず、買い手の決定を時系列で並べる。

日付航空会社決定
3月31日DeltaAmazon Leo を採用。最初の500機に2028年から搭載
5月26日AmericanStarlink を Airbus のナローボディ機500機超へ
10月8日AmericanStarlink を幹線機すべて、1,030機超へ。設置は2027年初めから
10月20日United2027年末までに全機で利用可能とする予定を決算で提示

American の広がり方は速い。5月の段階で広報は、Viasat と SES とも引き続き組むと説明していた (Via Satellite)。10月の全機発表では Airbus のナローボディ機500機超に Boeing のナローボディ機400機超とワイドボディ機130機超が加わり、名前が出る回線事業者は Starlink だけになった。ただ、この発表は Viasat と SES の扱いに触れていない。幹線機の中で Viasat がどこまで外れるかは確認できていない。

United も計画を広げた側だ。CEO の Scott Kirby 氏は10月27日のポッドキャスト Cheeky Pint で、当初は退役する機体を除いて機材の65%ほどに載せるつもりだったと語っている (番組の書き起こしによる)。決算資料の予定は、2026年末に61%、6月1日に87%、2027年末までに全機だ。

大手3社のうち Delta だけが別の衛星を選んだ。Delta の発表は Viasat、Hughes との提携が続くとしており、Amazon Leo が既存の回線をすぐに置き換える話ではない。Amazon Leo は3月の時点で商用サービス前で (Via Satellite)、Amazon は7月に、年内の初期サービスに必要な衛星の数がそろったと説明している (CNBC)。

「半分の便」の中身

11月6日時点の United 公式トラッカーの表示では、Starlink 搭載機は677機。内訳はリージョナル機352機、ナローボディ機318機、ワイドボディ機7機で、機体で見ると45%、便で見ると50%だ。決算の「640機超」(10月20日) や10月15日のリリースの「635機超」とは時点が違い、United は1日に約3機のペースで増やしている。

機体の45%が便の50%に化けるのは、搭載機の半分超を占めるリージョナル機が短い路線を担うからだと読める。ワイドボディ機はまだ7機しかない。座席の数で測れば、Starlink に当たる客は「半分」より少なくなる。太平洋や大西洋を渡る長距離便の客にとって、この回線はまだこれからの設備だ。

場所による差も大きい。同じ表示で、拠点空港ごとの比率はシカゴ64%、デンバー60%、ヒューストン53%、ロサンゼルス52%、ニューアーク45%、ワシントン・ダレス44%、サンフランシスコ37%。シカゴとサンフランシスコでは27ポイント開く。「半分の便」は全国に均等に広がった数字ではない。

回線は客を動かすのか

United が示す材料は3つある。9月に Starlink を体験した客は540万人を超えた。顧客サービスの評価は、Starlink 搭載機が他の Wi-Fi の機体のほぼ2倍だった。10月1日から22日まで Delta と American の会員に上級資格を与えるキャンペーンを行い、申込はキャンペーン前の水準より275%多いと発表した。

決算説明会で Kirby 氏は、航空会社を選ぶ理由として運航ダイヤが1番、Starlink がはっきりと2番になったと述べ、他社の忠実な客が Starlink を理由に移ってきていると語った。最高商務責任者の Andrew Nocella 氏は米運輸省の最新の統計を引いて、すべての拠点でシェアを伸ばしていると説明し、2027年に Starlink が全便に広がればさらに伸びるとの見方を示した。Kirby 氏はポッドキャストでも、Amazon Leo を選んだ Delta の判断を「mistake」と呼び、速さの選択肢は1つしかないと踏み込んでいる。

どれも会社側の数字と解釈だ。シェアの増加は Starlink 以外の要因でも起きるし、運輸省の統計は乗り換えの理由までは教えてくれない。乗り換えの規模を切り出した第三者のデータは、この時点で見当たらない。「客が動いている」は、いまのところ CEO の主張として読むのが正確だ。

回線の次に来る競争

United の次の手は、回線の上に載せるものに移っている。The Verge によると、United はシートバックの画面に専用の Spotify アプリを入れ、客が自分のアカウントで音楽や動画ポッドキャストを再生できるようにした。決算資料は、9月にライブのプロ・大学フットボールを席の画面で見られるようにしたことや、ライブ TV の配信も挙げている。担当幹部の Mark Muren 氏は、他の配信アプリとの提携も視野に入れていると語った。

この取材で United のデジタル担当副社長 Grant Milstead 氏が語った内容が、この話の分岐点になっている。Starlink による差別化は「a moment in time」で、速い Wi-Fi はどの航空会社にも来る。そのとき差になるのはモバイルアプリと席の画面だという。Kirby 氏も、誰もがいずれ高速の低軌道回線を持つと認めたうえで、大規模に Starlink を持つ航空会社でいられる期間は数年あると見ている。

ここが本筋だ。

買い手の側が、回線の優位に期限があることを前提に次の投資を組み始めている。全社に速い回線が行き渡れば、Wi-Fi の速さは席の広さや定刻率と同じく比較の前提に沈み、残るのは画面の上で何を届け、会員の囲い込みにどうつなげるかになる。売り手の側も同じ変化の中にいる。Viasat は開拓の余地がまだ大きいと語り、Amazon Leo は Delta との契約で後から入ってくる。携帯網へ広がる Starlink と同じく、衛星の回線は単独の商品から、他社の事業の下に敷かれる基盤へ移っている。飛行機は、その基盤の上で客を奪い合う最初の大きな市場の1つになった。

次に見るもの

確認先は4つある。

  • United の公式トラッカー: 便の比率が今の50%から、12月末に61%へ届くか
  • American のニュースルーム: 2027年初めの設置開始の告知と、機種ごとの順序
  • Viasat の次の四半期決算の株主への手紙と説明会: 減少幅の数字が出るか。Chase 氏は毎年12月に長期計画を取締役会へ出すと説明している
  • Amazon の Leo のニュースページ: 商用サービスの開始の時期

ことば

  • 低軌道衛星 — 高度の低い軌道を回る通信衛星。信号の往復が短く遅延が小さいので、機内でも動画やライブ配信が扱いやすい。Starlink と Amazon Leo がこの方式を使う。
  • 会計年度 — 企業が決算の区切りに使う1年。Viasat は3月末締めで、暦の年と1年近くずれる。2028年度の減少は、2027年春に始まる年度の話になる。
  • 幹線機 — 航空会社が自社で運航する主力の機材。短距離を担うリージョナル機と区別する。American の全機発表は幹線機が対象で、リージョナル機には触れていない。

🔗 一次ソース

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