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Deep Dive

🔬 Deep Dive|CLARITY 否決から10日、確定した規則はまだゼロ

CLARITY 法の否決から10日で SEC・CFTC・FRB が出した文書は7本、確定した規則はゼロ。命令・規則案・Prerule・職員の FAQ を重さの順に並べ、書き手が SEC 2人と CFTC 1人に絞られる構図を一次資料で読む。

LiveMakers Editorial Desk

🔬 Deep Dive|CLARITY 否決から10日、確定した規則はまだゼロ

米上院が9月15日に CLARITY 法の審議入りを49対50で退けてから10日間で、証券取引委員会 (SEC)、商品先物取引委員会 (CFTC)、連邦準備制度理事会 (FRB) の3機関は、免除命令、規則づくりの提出、職員の FAQ、規則案を相次いで出した。ただし確定した規則は一本もなく、10月2日以降にこれらを委員会として決められるのは、SEC の委員2人と CFTC の委員長1人だけになる。

SEC プレスリリース 2026-90「Innovation Exemption」(2026-09-17)U.S. Securities and Exchange Commission

議会が止まった後を行政が埋める、という見立ては当たっている。問うべきは埋め方の材質のほうだ。法律、規則、期限つきの命令、職員の見解、講演。重さのまったく違う文書が同じ「ルール」の一語で束ねられると、何が決まり、何がまだ決まっていないのかが見えなくなる。この記事は10日間の文書を重さの順に並べ直し、誰がそれを書いているのかを数える。

10日間の文書を、重さの順に並べる

9月17日から25日までに3機関が出した文書は7本ある。法的な重さの順に並べるとこうなる。

  • 委員会の命令 (期限つき) — SEC の「イノベーション免除」(9月17日)。トークン化された米国株を自動マーケットメーカーで売買させる場に、取引所としての登録を免除する。有効期限は2031年9月17日。大型株は1つの場で75銘柄まで、銘柄ごとに前月の平均日次出来高の0.25%まで
  • 規則案 — FRB が GENIUS 法の実施規則案2本 (整理番号 R-1899 と R-1900) を公表 (9月24日)。意見募集は連邦官報への掲載から60日
  • 規則づくりの入口 — CFTC の「Regulation Crypto Asset Transactions and Regulation Crypto Asset Markets」を、ホワイトハウスの情報規制問題室 (OIRA) が受理 (9月17日)。段階は Prerule で、条文は公開されていない
  • 職員の文書 — CFTC 市場参加者部のノーアクション (9月17日)、CFTC の3部門による暗号資産 FAQ の改訂 (9月24日)、SEC 企業金融局の暗号資産 FAQ (9月25日)

この7本の外側に、講演と報道がある。CFTC のセリグ委員長 (9月22日)、財務省のブルック副長官 (9月22日)、SEC のピアース委員 (9月23日) の講演と、米政権がドル建てステーブルコインの海外普及を検討しているというブルームバーグの報道 (9月24日) だ。

一番上の段に来るはずの確定した規則 (final rule) は、10日間で1本も出ていない。SEC が8月に提案した暗号資産の包括規則案 Regulation Crypto Assets も、まだ意見募集の途中にある。

重さの違いは、消し方の違いとして現れる。法律は、次の議会が別の法律を通さないかぎり残る。確定した規則を撤回するには、告示と意見募集の手続きをもう一度踏む必要がある。期限つきの命令は、期限が来れば延長の判断が要る。職員の文書はさらに軽い。SEC の FAQ は冒頭で、これは企業金融局の職員の見解であって、規則でも委員会の声明でもなく、法的な効力を持たないと自ら断っている。CFTC のノーアクションも、職員が執行を勧告しないという表明にとどまる。

10日間で積み上がったのは、下の段ほど厚い山だった。

4つの項目を一次資料で分ける

時系列の要約では、7本の文書と3本の講演が「新しいルール」として一括りにされやすい。一次資料に当たると、少なくとも4つの項目で、見出しの語感と中身の間に距離がある。

第一に、CFTC が9月17日に出したノーアクション (Release 9300-26) の対象は、紹介ブローカーとしての登録だ。利用者と、登録済みの先物業者・紹介ブローカー・指定契約市場をつなぐソフトウェアの提供者について、紹介ブローカーまたはその関係者として登録していないことを理由に、執行を勧告しないとしている。発表文は暗号資産に触れていない。暗号資産の開発者全般に登録を不要にした文書ではない。

第二に、CFTC がホワイトハウスへ送った規則づくりは条文を持たない。reginfo.gov の審査記録では、規制識別番号 (RIN) 3038-AF80、受理日9月17日、段階 Prerule、法定期限なし、経済的に重大な規則ではない、とある。報道が出たのは翌18日だが、受理は17日付だ。編集部が9月27日に同じ記録を開いた時点でも、状態は Pending review のままだった。何を規則にするかを外に問う手前の段階で、どの取引にどんな義務がかかるかは、まだ誰も読めない。

第三に、24時間365日のオンチェーン市場という話も、新しい計画ではない。セリグ委員長は9月22日、米国債市場カンファレンスの講演で、市場参加者が「オンチェーン金融と24時間市場の世界」に備えることを求めた。同時に、CFTC は24時間取引に一律の方式を取らないと明言し、24時間取引にいま向くのは暗号資産や貴金属など一部の資産クラスだとした。講演が触れた職員の助言文書は5月29日付 (Release 9239-26) で、この10日間に出たものではない。

第四に、SEC 職員の FAQ は、3月17日に委員会が出した解釈 (Release 33-11412) を個別の論点に当てはめたものだ。暗号資産を5つに分け、ステーキングの4類型を証券の募集に当たらないとした線は、3月の時点ですでに引かれていた。今回新しく書かれたのは、リキッドステーキングで受け取る預かり証トークンの分類と、預かり証と呼べる条件だ。発行者が預かった資産に一切手を付けられないことが、その条件になる。

動いたこと自体は事実だ。ただ、その大半は既に引いた線の延長か、条文を持たない入口にある。

書き手は SEC の2人と CFTC の1人

文書の重さの次は、書き手の数だ。CFTC の公式サイトの委員一覧に載っているのは、2025年12月22日に宣誓したマイケル・セリグ委員長ただ一人だ。定員は5人。9月17日に OIRA へ届いた規則づくりも、9月24日の FAQ に添えられた委員長のコメントも、合議の相手がいない機関から出ている。

SEC は、9月25日にピアース委員が辞表を X で公表し、10月2日に退任する。CoinDesk によれば、残るのはアトキンス委員長と、共和党側の指名で就いたウエダ委員の2人だ。SEC の規則 (17 CFR 200.41) は定足数を3人としつつ、在任の委員が3人未満のときは在任者の数を定足数とする。2人でも委員会として決められる。同じ記事は、ホワイトハウスが民主党側の委員候補を指名していないと伝えている。

委員が少ないことは、決める速さに効く。委員会の中で票を持ち寄る相手が少なく、合議の調整にかかる時間も短い。9月17日の免除命令と規則づくりの提出は、上院の否決から2日で並んだ。

そして同じ事情が、巻き戻す速さにも効く。いまの委員構成で書かれた文書は、委員の顔ぶれが変われば同じ速さで書き直せる。命令には期限があり、職員の文書は職員の判断で改められ、Prerule の段階なら案件を取り下げれば済む。

去るピアース委員は、2025年に発足した SEC の暗号資産タスクフォースを率いてきた。9月23日、SIFMA のデジタル資産会議で行った講演は、本人が「最後から2週目」と呼んだ週のものだった。本人確認 (KYC) の要件で金融機関が個人データを積み上げ続けることを「ますます大きなデータの干し草の山」と呼び、山が大きくなるほど針は見つけにくくなると述べた。そのうえで、名前も収入も住所も明かさずに「この人は要件を満たす」とだけ示せるゼロ知識証明への置き換えを提案している。講演の冒頭で、これは委員個人の見解であって SEC や同僚委員の見解ではないと断っており、現行の本人確認や資金洗浄対策の規則を変えるものではない。提案した本人が、提案を形にする側から去る。

法律があるレーンと、ないレーン

10日間の文書を並べると、もう一本の線が見える。法律の授権があるレーンは規則案の条文まで進み、ないレーンは職員の文書と期限つきの命令で進んでいる。

ステーブルコインには GENIUS 法がある。2025年7月18日に制定された法律で、細目を各規制当局の規則に委ねている。9月24日の FRB の規則案は、その委任に応えたものだ。条文は具体的で、発行者が系列会社や関係する第三者を経由して保有者に利回りを渡す取り決めを、禁止された利回りの支払いと推定する規定 (§ 247.10(c)(4)(i)) まで書き込んでいる。

財務省の側も、この法律を前提に話している。ブルック副長官は9月22日の講演で、ステーブルコイン発行体が財務省短期証券などを「すでに2000億ドル近く」保有していると述べ、GENIUS 法の実施規則が固まるにつれて保有は増えると見込んだ。ドル建てステーブルコインの海外普及を官民で後押しする案は、ブルームバーグが関係者の話として伝えた段階で、どの機関も発表していない。

市場構造には法律がない。CLARITY 法が担うはずだったのは、どの暗号資産を SEC が扱い、どれを CFTC が扱うかという管轄の線引きだった。この線は、一つの機関の規則では引けない。CFTC が既存の権限で書けるのは商品取引所法が与えた領域の中だけで、SEC の領域の境目を CFTC の規則で決めることはできない。逆も同じだ。

アトキンス委員長自身、9月17日の声明の題を「持続する規則づくりへの橋」とし、本文で「この暫定措置の後には、持続する規則づくりが続かなければならない」と書いた。免除命令を出した当人が、それを橋と呼んでいる。橋の先に置けるのは規則までで、管轄の線引きは法律でしか固まらない。

米国は行政文書を先に積み、日本は法律を先に置いた

同じ年に、日本は逆の順番を選んでいる。暗号資産を資金決済法から金融商品取引法へ移す改正法は7月15日に成立し、7月23日に公布された (令和8年法律第64号)。暗号資産の部分は公布から1年以内、つまり2027年7月下旬までに施行され、取り扱える暗号資産の基準などの細目は内閣府令に委ねられる。法律で枠を先に作り、細目をその後で埋める順番だ。

米国は法律の枠がないまま行政文書を積んでいる。速さでは米国が先を行く。トークン化株の売買の場は、最短で10月半ばに開きうる。一方で、その持続性は、委員の構成と、枠を作る議会の日程に連動する。11月には中間選挙があり、委員の指名も上院の承認も、その結果の影響を受ける。

この順番の違いは、事業者と投資家にとって、どの文書の上に何年分の計画を載せられるかの違いになる。5年の期限がある免除の上に取引の場を作る事業者は、5年以内に規則か法律が追いつくことに賭けている。職員の FAQ を根拠にリキッドステーキングの設計を組み直す事業者は、その FAQ が次の職員にも引き継がれることに賭けている。米国の暗号資産市場は、法律の上に規則を積む形から、期限と撤回可能性を持つ行政文書を重ねる形へ移った。9月15日からの10日間は、その移行が文書の形で最初に見えた期間だった。

次に見る5つの日付

  • 10月1日 — reginfo.gov の RIN 3038-AF80 の記録。大統領令12866号は、規則案の手前の行動について OIRA が提出から10営業日以内に審査を終えるか審査の放棄を通知するよう定めており、9月17日受理の10営業日目にあたる。状態欄が Pending review から動くかどうかを見る
  • 10月2日 — ピアース委員の退任日。SEC の委員一覧ページの顔ぶれと、後任の指名がホワイトハウスから出るかどうか
  • 10月半ば — イノベーション免除による最初の取引の場。取引の場は稼働の30日以上前に告知を掲げ、1営業日以内に SEC へ書面で通知する。命令の掲載ページ (File No. 4-927) と、名乗り出る事業者の顔ぶれ
  • 10月20日 — SEC の Regulation Crypto Assets (整理番号 S7-2026-27) の意見募集の締切。規則案ページに集まる意見書が、職員 FAQ の分類をどこまで規則本文へ持ち込むかの綱引きを示す
  • FRB 規則案の官報掲載日 — R-1899 (RIN 7100-AH29) と R-1900 (RIN 7100-AH30) が連邦官報に載った日から60日が意見募集の期間になる。FRB の規則案受付ページで掲載日を確かめる

ことば

  • Prerule (プレルール) — 規則案の公告より手前の段階区分。何を規則にするかを外に問う準備行動で、条文は公開されない。CFTC の暗号資産の規則づくりはこの段階で、OIRA の審査期限は提出から10営業日と短い。
  • ノーアクション — 当局の職員が「この条件なら執行を勧告しない」と示す文書。規則でも委員会の命令でもないため委員会や裁判所を縛らず、職員の判断で改められる。立法が止まった局面で使われる機会が増えている。
  • 定足数 — 合議制の委員会が決定を下すのに必要な最少人数。SEC は原則3人だが、在任者が3人未満なら在任者の数になる。ピアース委員の退任後は2人で委員会の決定を出せる。

🔗 一次ソース

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