Signal
📡 Signal|Alpha Modus、3,170 BTC を抱えたまま 1 株 1.15 ドルで増資
3,170 BTC を受け取った Alpha Modus が、BTC を含む 1 株 4.58 ドルの正味有形資産に対し 1.15 ドルで新株を出し、借入返済にあてる。

米ナスダック上場の Alpha Modus Holdings (AMOD) は10月21日、1 株 1.15 ドルで 630 万 4348 株を機関投資家 1 社に売り、約 725 万ドルを調達する契約を結んだ。同社のシンガポール子会社は 9 月 30 日に 3,170 BTC を受け取っており、会社自身の開示では、その BTC を含めた 1 株あたりの正味有形資産は 4.58 ドルある。
2 億 5000 万ドルを超える BTC を持つ会社が、帳簿上の価値の 4 分の 1 ほどの値段で新しい株を出し、借入の返済にあてる。BTC を財務に積む上場企業で、株価が保有資産を下回ったときに何が起きるかを示す例になる。
3,170 BTC の保有は速報で報道をもとに伝えた。ここでは SEC (米証券取引委員会) への提出書類で中身を確かめる。
3,170 BTC は株と引き換えに入ってきた
Alpha Modus は BTC を市場で買ったのではない。10月1日の 8-K (臨時報告書) によると、同社は 8 月 26 日に米国外の投資家との間で契約を結び、Class A 普通株 5162 万 1560 株と、同数の株を 1 株 4.36 ドルで買えるワラントを発行する代わりに、投資家から 3,170 BTC を受け取ることにした。
取引は 9 月 30 日に完了した。BTC は新しく設けた全額出資子会社 AMOD Tech Pte. Ltd. (シンガポール) の保管・管理に移り、同社は 9 月 30 日の参照価格 1 BTC = 約 8 万 3612 ドルで「2 億 5000 万ドル超」と評価している。
この取引で発行済み株式は大きく変わった。6 月 30 日時点の発行済み株式は 493 万 3091 株で、10 月 21 日時点は 5751 万 5785 株。BTC と引き換えに出した株が、いまの発行済み株式の約 9 割を占める (編集部の計算)。
取引のもう 1 つの目的は上場の維持だった。同社は 4 月 6 日、ナスダックから株主資本などの上場基準を満たしていないとの通知を受けていた。10 月 1 日、ナスダックは 9 月 30 日の取引完了を受けて基準 (Listing Rule 5550(b)(1)) を満たしたと判断したが、次の定期報告で基準の充足を示せなければ上場廃止の対象になりうるとも付け加えている。
1.15 ドルの新株と、4.58 ドルの正味有形資産
10月22日に提出された目論見書補完書 (424B5) は、この差を会社自身の数字で示している。
- 6 月 30 日時点の正味有形資産: マイナス約 612 万ドル (1 株あたりマイナス 1.24 ドル)
- BTC の取引を反映した試算: 約 2 億 5874 万ドル (1 株あたり 4.58 ドル)
- 今回の増資を反映した試算: 約 2 億 6539 万ドル (1 株あたり 4.22 ドル)
- 新株の価格: 1 株 1.15 ドル (10 月 20 日の終値は 1.29 ドル)
目論見書は、今回の買い手は 1 株あたり 3.07 ドル得をし、既存株主は 1 株あたり 0.36 ドルの正味有形資産を失うと書いている。手取りは約 665 万ドルで、使い道は借入の返済と運転資金などだ。仲介の H.C. Wainwright には調達額の 7% の手数料と、44 万 1304 株分のワラント (行使価格 1.4375 ドル) を払う。
10 月 21 日時点の発行済み株式に 10 月 20 日の終値を掛けると、時価総額は約 7,400 万ドルになる。3,170 BTC は、Hyperliquid の BTC 先物の 10 月 24 日の価格 (約 8 万 661 ドル) で約 2 億 5600 万ドル。株式市場は、この会社の価値を保有 BTC の 3 割弱でしか見ていない (いずれも編集部の計算)。
BTC を持つ会社が株を出すときの算数
BTC を財務に積む上場企業では、時価総額が保有 BTC の価値を上回っている間は、新株を出して BTC を買い足すほど 1 株あたりの BTC が増える。Strategy をはじめ、保有を大きく積み上げてきた企業はこの仕組みを使ってきた。
時価総額が保有 BTC を下回ると、算数は逆になる。新株を出すたびに、既存株主の持ち分に入っていた BTC の価値が新しい株主へ移る。Alpha Modus の今回の増資は、その下回る側で行われた。提出書類は、BTC を売らずに株を出して借入を返す理由を書いていない。
経営陣も入れ替わりつつある。10 月 5 日の 8-K によると、取締役会は Atlas Arman 氏を共同会長に、Wenlong Tong 氏を共同 CEO に選んだ。もともとの事業は小売店での買い物客向けの AI で、BTC の取引の前の正味有形資産はマイナスだった。
次に見るもの
確認先は SEC の EDGAR にある同社の提出書類だ。まず、7〜9 月期の四半期報告書 (10-Q)。小規模な報告会社は四半期末から 45 日以内に出すため、11 月中旬が目安になる。ナスダックが求めた株主資本の基準を書類で示せるか、3,170 BTC を期末にいくらで計上したか、BTC を担保に入れたり売ったりしていないかがそこで分かる。
もう 1 つは、今回の契約にある新株発行の制限だ。増資の完了から 30 日間は新たな株の発行を原則として控える取り決めで、10 月 22 日の完了から数えると 11 月下旬に明ける。その後に次の資金調達が出るかどうかで、BTC を持ったまま株で資金を回す形が続くのかが見える。
ことば
- PIPE — 上場企業が特定の投資家に直接、株やワラントを割り当てる資金調達。今回は現金ではなく 3,170 BTC が払い込まれ、その BTC と引き換えに発行済み株式の約 9 割にあたる株が出た。
- 正味有形資産 — 会社の資産から、のれんなど形のない資産と負債を差し引いた額。BTC の取引で 1 株あたりマイナス 1.24 ドルから 4.58 ドルへ、試算の上で大きく変わった。
- ワラント — 決まった価格で株を買える権利。BTC の投資家が受け取った分の行使価格は 4.36 ドルで、10 月 20 日の終値 1.29 ドルを大きく上回っている。
🔗 一次ソース
- Alpha Modus 8-K (10月1日・9月30日に取引完了・子会社 AMOD Tech Pte. Ltd. が 3,170 BTC を保有・参照価格 8 万 3612.20 ドルで 2 億 5000 万ドル超)sec.gov
- Alpha Modus 目論見書補完書 424B5 (10月22日・1 株 1.15 ドルで 630 万 4348 株・正味有形資産の試算 1 株 4.58 ドル→4.22 ドル・10 月 21 日の発行済み株式 5751 万 5785 株)sec.gov
- Alpha Modus プレスリリース (10月21日・725 万ドルの登録直接募集・使途は借入返済と一般目的)sec.gov
- Alpha Modus 8-K (10月2日・ナスダックが上場基準 5550(b)(1) の充足を通知)sec.gov
- Alpha Modus 8-K (10月5日・共同会長と共同 CEO の選任)sec.gov
- Cointelegraph の報道 (10月22日)
- Hyperliquid の BTC 先物 (10月24日の価格の取得元)app.hyperliquid.xyz