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📡 Signal|CFTC、レバレッジを扱う取引所の現物残高も規制対象とする解釈
CFTC の暗号資産 ANPRM は、レバレッジを提供する取引所では帳簿上の現物残高も引き渡し前として先物並みの規制下に置く解釈を示した。受け皿は DCM の新区分「暗号資産市場 (CAM)」。
米商品先物取引委員会 (CFTC) は10月5日、暗号資産の個人向け取引と、それを扱う取引所の規則づくりについて、規則案の一つ手前にあたる事前通知 (ANPRM) を公表した。柱は二つある。レバレッジを提供する取引所では、帳簿の上で預かっているだけの暗号資産にも先物並みの規制がかかるという解釈と、暗号資産だけを扱う取引所のために、指定契約市場 (DCM) の下位区分「暗号資産市場 (CAM)」を設ける構想だ。
議会の CLARITY 法案が止まっている間に、CFTC は既にある商品取引所法 (CEA) の条文だけを使い、米国の暗号資産取引所を州ごとの免許から連邦の一つの枠へ移す道を描いた。100ページを超える文書の要は、条文のなかの「申し出」と「実際の引き渡し」という二つの言葉の読み方にある。
公表の事実は5日の速報で伝えた。本稿では、委員会が承認した文書の中身を読む。
起点はレバレッジ付きの小売取引の条文
根拠は CEA 2条(c)(2)(D) だ。個人を相手に、レバレッジや証拠金、売り手側の融資を使って行う商品の取引は、28日以内に実際の引き渡し (actual delivery) が起きない限り先物と同じ扱いになり、取引所の上で行わなければならない。2010年のドッド・フランク法で入った条文で、CFTC はこの条文の申し出 (offer) がどこまでの取引に及ぶのかを、これまで明確にしてこなかったと文書のなかで書いている。
ANPRM が示した予備的な解釈は二段になっている。
一段目は申し出の範囲だ。条文は、実際にレバレッジを使わなくても、レバレッジ付きで申し出られた取引を対象に含める。CFTC は、口座開設の書類や取引所の利用規約、信用取引の書類で融資の条件を示した時点で申し出が成り立ち、その申し出は取引所で扱う全ての取引や、口座で扱う全ての取引にかかりうると読んだ。顧客が代金を全額払って買った取引も、それだけでは外れない。
二段目は、実際の引き渡しの中身だ。全額を払った取引でも、買った暗号資産が取引所の内部の帳簿に記録されているだけの間は、引き渡し前として先物並みの規制が続く。引き渡しが成り立つには、ウォレットの秘密鍵などの認証情報を買い手が持つことが要りうるとした。ステーキングできる資産なら、仲介者の手数料を取られずにステーキングに参加できること、ガバナンスに直接参加できることまで例に挙げている。
帳簿の上の残高が CFTC の枠に入る
二つの解釈を重ねると、レバレッジを一部でも提供する暗号資産取引所では、顧客の現物の残高のうち、まだ引き渡していない分が CFTC の枠に入る。
米国の暗号資産取引所はこれまで、多くが州ごとの送金業の免許で営業してきた。ANPRM も議会調査局の報告を引き、米国の取引所の多くが送金業者としての規制を選び、主に州の監督下にあると書く。そのうえで、送金業者の定義からして州ごとに違い、どの州のどの規制がかかるのか市場参加者にも分かりにくいと、いまの状態を評している。CFTC が掲げる全国一律の枠は、この州ごとの免許の積み重ねを、連邦の一つの登録に置き換える構想だ。
受け皿は、DCM の一区分「暗号資産市場」
CAM は、暗号資産の個人向け取引だけを上場する取引所のための、DCM の下位区分として描かれた。DCM には法律で23の基本原則 (コア・プリンシプル) が課されており、それを暗号資産の取引に合わせて組み替えた規則に従えば登録できる。既存の DCM が、暗号資産の取引を他の商品と並べて扱う道も残している。
目を引くのは、取引・清算・保管を一つの企業グループでまとめる暗号資産取引所の形を、そのまま受け入れる前提に立っている点だ。CAM が先物取引業者 (FCM) や清算機関 (DCO) を兼ねること、あるいはそれらと同じグループに置くことを想定し、その根拠の一つとして Coinbase が CFTC に出した書簡を引いている。伝統的な先物市場では取引所・仲介・清算を別の会社が担うのが通例で、それとは違う形を規則の側で認める構えだ。CFTC は9月末、Coinbase の清算機関を全額担保の取引に限って登録したばかりでもある。
レバレッジの出し手は、FCM か、FCM が後ろ盾になる銀行を「適格レバレッジ提供者」とする案を置き、それ以外にも広げるべきかを問うた。証拠金は、従来どおり清算機関が水準を決める方式と、CFTC がより細かく定める方式の二つを並べ、どちらにするかはまだ決めていない。
法律が止まっている間の行政ルート
セリグ委員長は発表文で、トランプ大統領の指示に沿い「CFTC の既存の法的権限を使って」連邦の暗号資産の市場構造を提案すると述べた。FTX のような不正を、起きた後に訴追するのではなく、起きる前に防ぐ規則にするとも語っている。
CLARITY 法案は9月の否決のあと膠着が続く。市場構造の法律ができれば、CFTC と SEC の線引きは法律が決める。法律がない今、CFTC は既にある条文の解釈で、現物の取引所に入る入口を作った。
ただし ANPRM に拘束力はない。このあと規則案、最終規則の順に進み、それぞれの段階で意見の募集を経る。条文の解釈で管轄を広げる手法は、州の規制当局がどう応じるかで速さが変わる。
分岐と確認先
- 基本線: 取引所と業界団体は CAM の区分を歓迎しつつ、申し出が全取引に及ぶという読み方を狭めるよう求める。規則案は、レバレッジ提供の範囲を絞った形で出てくる
- リスク: 州の規制当局が、連邦の一律の枠が州の監督を外すことに反対し、規則案の段階で手続きが長引く
- 別線: CLARITY 法案が再び動き、法律の定義が ANPRM の解釈を上書きする
最初の確認先は官報 (Federal Register) への掲載だ。CFTC が公表した文書は委員会の承認版で、意見の締切日の欄はまだ空いている。RIN 3038-AF80 の番号で掲載された日から60日が締切になり、Regulations.gov の受付窓口に取引所や州の当局の意見書が並び始める。
ことば
- ANPRM (規則制定の事前通知) — 規則案 (NPRM) の前に出す文書。当局が考え方と質問を示して意見を集める段階で、拘束力はない。今回は解釈の方向を先に見せ、規則案の設計に業界の意見を取り込む使い方をしている。
- 実際の引き渡し (actual delivery) — レバレッジ付きの個人向け取引を先物扱いから外す条件。基準は2019年の Monex 判決で、買い手が意味のある占有・支配を得ること。CFTC は暗号資産では秘密鍵の保持を目安に挙げた。
- DCM (指定契約市場) — CFTC に登録した先物取引所。CME や Kalshi、Coinbase の先物部門がこの登録を持つ。CAM はその下位区分として、暗号資産の取引だけを扱う取引所の受け皿になる。
🔗 一次ソース