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📡 Signal|Zcash ノードの Zakura、量子耐性署名の1月導入を目標に
Zcash のノード Zakura が、量子耐性のハッシュベース署名を1月に導入する計画を示した。発行済み ZEC の約7割を占める透明なアドレスが対象で、有効化の日付はまだ決まっていない。
Zcash のフルノードを開発するチーム Zakura は、ハッシュ関数にもとづく署名を検証する量子耐性の命令 (オペコード) を、1月に Zcash に導入する計画を公式サイトの技術記事で示した。まず守る対象は、送金の中身が公開される「透明な」アドレスだ。
Zcash には、送金額や当事者を隠すシールドの送金と、ビットコインと同じように公開される透明な送金の 2 つがある。編集部が Zcash の供給量のダッシュボードで確かめると、10月9日時点で発行済み ZEC の約70%が透明なアドレスにあった。量子計算機の脅威で真っ先に問題になるのは、この公開側の鍵だ。今週、イーサリアム財団の研究者 Justin Drake 氏が BTC と ETH の保有者に資金の退避を説く「バンカーモード」を提言したばかりで、各チェーンの量子対策の時間軸が比べられる局面に入った。
Zakura が書いたこと
記事の筆者は Zakura のエンジニア Roman Akhtariev 氏で、主題は透明なアドレスを使う財布のプライバシーだ。量子対策はその中で、次の 2 文で語られている。
- 「私たちのチームは、量子耐性の署名オペコードが1月に Zcash に入ることを計画している」
- 「1月に、ハッシュベースの署名によって、透明なプールの完全な量子耐性を実現する」
記事は、楕円曲線の公開鍵と並べてハッシュベースの署名を「非常口」として持たせる設計を示し、その例として WOTS (ウィンターニッツ・ワンタイム署名) を挙げ、「今日でも導入できる」と書く。1月に入れる命令の名前や、採用する署名方式は書かれていない。「1月」がコードの公開を指すのか、メインネットでの有効化を指すのかも記事は区別していない。報じた CoinDesk も、ネットワークでの有効化の日付は確定していないとしている。
Zakura は、Valar Group と Zcash の共同創業者 Sean Bowe 氏が率いる Project Tachyon の協業で開発されているノード実装だ。9月末には、取引所 Gemini が Zcash のノードを Zakura に移すと伝えられている (Gemini、Zcash の25秒ブロックに備えノードを Zakura に移行)。
「鍵を見せない」財布の作り方
同じ記事のもう 1 つの柱は、量子耐性の署名が入る前から使える防御だ。財布が取引ごとに同じシードから新しい透明アドレスを使い回さずに切り替えれば、公開鍵がチェーン上に出るのは、そのアドレスから送金するときだけになる。記事はこれを、公開鍵の露出とアドレスの再利用を抑える方法として示す。
量子計算機で秘密鍵を割り出すには、まず公開鍵が要る。一度も送金に使っていないアドレスでは、チェーンに残るのは公開鍵のハッシュだけだ。BTC と ETH の議論で「一度も署名していないアドレスへ移す」ことが勧められるのも同じ理屈だ。
記事はさらに、財布が自分のアドレスを照会するときに、どのアドレスを探しているかをサーバーに知られない仕組み (透明な PIR) を Zcash の財布 Vizor に今週載せるとしている。こちらは照会の履歴からの追跡を防ぐプライバシーの仕組みで、透明な送金そのものはチェーン上で公開されたままだと記事は明記している。
シールド側は別の設計、透明側は1月
シールドの送金には、別の量子対策がある。Zcash の改善提案 ZIP-2005「Ironwood の量子回復可能性」は、Ironwood プールに置かれた資金を、将来の回復手順で取り戻せる形に作り替える提案だ。状態は「提案中」。ZIP-2005 自身が、透明な送金の署名への攻撃はこの提案の対象外だと書き、プライバシーの状況はどのプールでも変わらないとしている。
供給量の内訳で見ると、2 つの設計が守る範囲の差がはっきりする。ダッシュボードの数字 (10月9日、ブロック 3,511,915 時点) は次のとおりだ。
- 総供給量: 1,697万7,000 ZEC
- 透明なアドレス: 1,195万9,135 ZEC (70.44%)
- シールドのプール合計: 494万9,330 ZEC (29.15%)、うち Ironwood が 407万3,830 ZEC
シールド側の量子対策が直接守れるのは、Ironwood にある約4分の1にとどまる。残る7割の透明な ZEC を守る手段が、Zakura が1月に入れるとしている署名だ。
比較の文脈を置くと、ビットコインでは量子対策の提案 BIP-360 が「Pay-to-Merkle-Root (P2MR)」に改名され、ソフトフォークの草案の段階にある。イーサリアムは2029年までの完全な量子耐性を計画の目標に置く。Zcash の1月は、目標としては両者より近い。ただし、オペコードが入ることと、7割の保有者が新しい形式のアドレスへ資金を移し終えることは別の話で、量子対策の実効は後者で決まる。
次に見るもの
確認できる次の一点は、Zcash の改善提案を集めた ZIP のサイト (zips.z.cash) に、量子耐性の署名オペコードの ZIP が番号付きで出るかどうかだ。ZIP-2005 は透明な送金を別の提案 (ZIP 2007) に委ねている。1月の目標が有効化の日付まで落ちてくるかは、その ZIP と、ネットワークアップグレードの日程にこのオペコードが入るかで見える。
ことば
- オペコード — ブロックチェーンの取引に書けるスクリプトの命令。新しいオペコードが入ると、ノードは新しい種類の署名を検証できるようになる。導入にはネットワークのアップグレードが要る。
- ハッシュベース署名 — ハッシュ関数の性質だけに安全性を頼る署名方式。量子計算機でも解きにくいとされる一方、署名のサイズが大きく、使える回数に制限がある方式 (WOTS など) もある。
- 透明なアドレス — Zcash で送金額や当事者がビットコインと同じように公開されるアドレス。発行済み ZEC の約7割がここにある。
🔗 一次ソース
- A Privacy Layer for Transparent Wallets(Zakura・Roman Akhtariev)zakura.com
- ZIP 2005: Ironwood Quantum Recoverability(Zcash Improvement Proposals)zips.z.cash
- Zcash の供給量ダッシュボード(プール別の残高・2026年10月9日、ブロック 3,511,915 時点で確認)zkp.baby
- Zakura について(Zakura)zakura.com
BIP-360 Pay-to-Merkle-Root(Bitcoin BIPs・GitHub)GitHub
量子耐性(ethereum.org ロードマップ)ethereum.org- Zcash developers set January target for quantum-resistant payments(CoinDesk・2026年10月9日)coindesk.com
- Justin Drake のバンカーモード提言(The Block・2026年10月7日)theblock.co